2012 Fiscal Year Research-status Report
MRLマウスの精巣はなぜ卵細胞を作るのか-精巣内卵細胞の産生機構解明と機能評価-
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24780278
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 沙織 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (10566152)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 性分化 / MRL/MpJマウス / 生殖細胞 / 精巣内卵細胞 |
Research Abstract |
通常、哺乳類の雌は卵巣内で卵のみを、雄は精巣内で精子のみを産生するが、生後間もないMRL/MpJ (MRL)マウスの精巣では卵細胞が観察される。これまでの研究から、精巣内卵細胞は卵巣内卵細胞と類似した形態学的特徴を有すること、本表現型の責任遺伝子は少なくとも2つ、それぞれ常染色体とY染色体にあり、特に常染色体上の責任遺伝子はMRLホモ劣性を示すことがわかっている。また、MRLマウスと精巣内卵細胞を産生しないC57BL/6(B6)マウスとの間で作出したN2マウスを用いて行ったQTL解析から、常染色体上の責任遺伝子は15番染色体にあることが推測されている。 今年度は常染色体上の責任遺伝子を同定するため、B6マウス由来のY染色体とMRLホモあるいはMRL/B6ヘテロの常染色体を有するMMBマウスを作出、精巣内卵細胞が観察された個体の割合、ならびに15番染色体の遺伝型がMRLホモ型を示すかどうか検証した。精巣内卵細胞は、335個体中の2.1%にあたる7個体で観察され、これはB6マウス由来のY染色体とMRLホモの常染色体を有するコンソミックマウス、MRL/MpJ-Chr YB6マウスの約半分の確率であった。このことから、常染色体上に存在する責任遺伝子の数は1つであることが示唆された。またこれら7個体の遺伝型を調べたところ、15番染色体がヘテロの個体も含まれていたことから、責任遺伝子は15番染色体上には存在しないことがわかった。全ての常染色体に対し、遺伝型を明らかにしたところ、7個体全てでMRLホモ型が見られたのは9番染色体の36~64cM領域のみであったことから、本領域が責任遺伝子座であることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、精巣内卵細胞産生の常染色体上の責任遺伝子は15番染色体上の11~17cM領域に存在すると推測された。このため、MMBマウスを解析して15番染色体上に責任遺伝子があることを確認すると同時に、15番染色体がMRLマウス、その他の染色体がB6マウスであるコンソミックマウス(C57BL/6-Chr 15MRL)を作出・解析し、さらに当該領域内の候補遺伝子の解析を行う予定であった。しかしながら、研究実績の概要で述べたように、15染色体上には責任遺伝子が存在しないことが明らかになり、責任遺伝子を含む遺伝子座の探索を全ての常染色体に拡大しなければいけなくなった。結果、9番染色体の36~64cMが新たな責任遺伝子座の候補として挙がってきたが、コンソミックマウスの作出など、計画が大幅に遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
精巣内卵細胞の産生機構を明らかにするため、引き続き責任遺伝子の同定に向けて研究を進める。新たな候補遺伝子座となった9番染色体の36~64cM領域には、ステロイド合成ホルモンや生殖腺体細胞の性分化に関与する遺伝子が座位している。MRLマウスとB6 マウス間でこれらの候補遺伝子の配列ならびに発現を比較、責任遺伝子を同定する。また、同定された因子の胎子精巣内における局在を免疫組織学化学的に明らかにし、精巣内卵細胞産生との関連を明らかにする。さらに、次年度以降に向け、9番染色体がMRLマウス、その他全てがB6マウスであるコンソミックマウス(C57BL/6-Chr 9MRL)の作出に着手する。 また、同時に、精巣内卵細胞の卵細胞としての機能評価に関する研究を遂行する。MRLマウスの胎子期ならびに生後の精巣内卵細胞におけるDNAメチル化状態を免疫組織化学ならびにbisulfite-sequence法を用いて卵巣内卵細胞ならびに精細胞のものと比較する。さらに、胎子期では減数分裂に移行した卵細胞のみがGFPを発現するトランスジェニックマウスとMRLマウス間で作出したF1マウスを用い、胎子期精巣内卵細胞の分離・培養法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
出席を予定していた学会直前に祖母が急逝したため、学会に出席することができなかった。このため、その間支払われる予定であった日当(4,400円)を次年度にまわすこととした。 次年度は上記のように、コンソミックマウス作出ならびに精巣内卵細胞のDNAメチル化状態の解析に力を入れる。このため、マウス購入ならびに維持費に100,000円、遺伝子解析試薬購入費ならびに、シークエンス委託解析費にそれぞれ300,000円を使用する。また、学会参加旅費として100,000円を充てる。
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