2012 Fiscal Year Research-status Report
摂食促進ペプチドNPYを介した仔育てに伴う栄養損失に対する自己防衛機構
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24780282
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
室井 喜景 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (80552760)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 母性行動 / 空腹 / NPY / 縫線核 / セロトニン |
Research Abstract |
仔を母マウスに提示すると、縫線核のセロトニン神経において神経活性化の指標であるc-Fosの発現が有意に増加した。この結果に基づき、縫線核にセロトニン神経に対して抑制作用を持つセロトニン1A受容体作動薬8-OHDPATを投与すると、仔育て行動が抑制された。この結果から、仔育て行動の発現には縫線核のセロトニン神経の活性化が必要であることがわかった。 縫線核において免疫染色によりNPY陽性の神経線維を多数確認したため、NPY神経の起始部を調べるために、逆行性トレーサーであるFluorogoldを縫線核に導入した結果、視床下部から縫線核に神経投射があることを確認した。 NPYを縫線核に投与したところ仔育て行動は有意に抑制された。絶食をすることで仔育て行動は抑制されるが、縫線核にNPYY1受容体阻害薬であるBIBP3226を投与すると、仔育て行動の発現は有意に回復した。この結果から、絶食に伴い分泌されるNPYは縫線核においてNPYY1受容体を介して仔育て行動の発現を抑制していることがわかった。 仔を母マウスに提示すると、縫線核においてセロトニン神経周囲に存在するGABA神経でc-Fosの発現が有意に増加した。この結果から仔育て行動が発現するにはGABA神経による制御が必要である可能性が示唆されたために、絶食した母マウスの縫線核にGABA受容体作動薬を投与したところ、仔育て行動の発現を回復することができた。特にシナプス前膜のGABAB受容体が重要な働きをしていることが示唆された。 以上の結果から、仔育て行動の発現には縫線核のセロトニン神経の活性化が必要であり、空腹時に分泌されるNPYはNPYY1受容体を介してセロトニン神経の活性を抑制している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験により得られた結果が計画時の予想と異なったため、計画を修正し新たな実験を組み込んだ。そのため平成24年度に完了予定だった実験の一部が現在進行中であるが、期待した水準の結果が得られており、進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究で、予想と異なる研究結果が得られたため、研究計画の一部を変更した。しかし平成25年度の研究計画に与える影響は少ないため、計画通りに研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予想と異なった研究結果が得られたため、当初の計画を一部変更した。また研究補助業務に対する謝金の支出を予定していたが、研究計画の変更に伴い必要がなくなった。以上の理由で、平成25年度に繰り越す研究費が生じた。繰り越した研究費は平成24年度に購入予定だった試薬類の購入に充てる。平成25年度に請求する研究費は予定通りに使用する。
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