2012 Fiscal Year Research-status Report
加齢性神経原線維変化のモデル動物としてのイエネコの有用性
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24780283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
チェンバーズ ジェームズ 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00621682)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ネコ / アルツハイマー病 / 神経原線維変化 / βアミロイド / 脳老化 / 老人斑 / 高リン酸化タウ |
Research Abstract |
ネコ亜科(イエネコおよびツシマヤマネコ)の動物の脳では、βアミロイドと高リン酸化タウが加齢性に沈着することを明らかにした。平成24年度は、特にツシマヤマネコの脳について詳細に解析し、その内容を国際的な学術雑誌に報告した(Chambers JK et al. PLoS ONE. 2012)。高リン酸化タウが沈着する脳の領域、病変の広がり、細胞の種類および構成タウアイソフォームがヒトのアルツハイマー病と同じであった。タウ蛋白質の主要なリン酸化酵素であるGSK-3βが高リン酸化タウ陽性細胞で発現されていることを確認した。ガリアスブラーク染色では神経原線維変化やニューロピルスレッドが観察され、超微形態学的に線維性の凝集物であることを確認した。βアミロイドの沈着物は微細顆粒状を呈し、嗜銀性の老人斑を形成しなかった。ネコ亜科のβアミロイド沈着物は、ヒトβアミロイドのN末端に対する抗体では染色されなかった。ツシマヤマネコのβアミロイドのアミノ酸配列を解析したところ、N末端側7番目のアミノ酸がヒトを含む多くの哺乳動物と異なっていることが判明した。ツシマヤマネコは、進化の系統樹上でチーターとイエネコの間に位置しており、これらのネコ亜科の動物では共通した脳の老化病変が観察されることがわかった。すなわち、これらの動物では嗜銀性老人斑を形成しないにもかかわらず、神経原線維変化を形成する。ヒトのアルツハイマー病の病態を考える上でも意義のある成果が得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画を概ね遂行することができた。すなわち、神経原線維変化の病理組織学的解析、タウ蛋白のアイソフォームパターン、リン酸化酵素の発現、神経原線維変化による神経細胞傷害性について検討し、神経原線維変化のモデル動物としてのイエネコの有用性を示す結果が得られた。この中で、神経原線維変化による細胞傷害性については、アポトーシスマーカーを中心に検討したものの、有意な結果が得られなかったため、他の評価方法を用いて次年度に検討する。また、次年度の研究計画の一部を既に終了している。すなわち、ネコ亜科動物(ツシマヤマネコ)のβアミロイドアミノ酸配列の同定を行った。これらの研究成果は既に海外の学術誌に掲載され、新聞やインターネットなどのメディアを通して社会に公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
神経原線維変化による細胞傷害性については、海馬領域の神経細胞の数を定量的に評価することで、神経細胞脱落の有無を確認する。リン酸化されているタウのアイソフォームについては、研究協力者(高島明彦、国立長寿医療センター)のアドバイスのもと、生化学的に評価し、可能であればリン酸化酵素の活性を測定する。ネコ科動物のβアミロイドアミノ酸配列については、さらに動物種を増やして解析することを目標とし、その目的で超微量分光光度計を平成25年度設備備品費に計上した。ネコ科動物のβアミロイド凝集性評価については、共同研究者とともに既に解析を始めており、今後データを蓄積する。特にオリゴマー化したβアミロイドに着目して研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少量のサンプルから核酸や蛋白質を抽出するため、超微量分光光度計を設備備品として計上した。消耗品費は、主に核酸や蛋白質の抽出キットおよび抗体試薬の購入にあてる。
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