2013 Fiscal Year Annual Research Report
加齢性神経原線維変化のモデル動物としてのイエネコの有用性
Project/Area Number |
24780283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
チェンバーズ ジェームズ 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00621682)
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Keywords | アルツハイマー病 / 神経原線維変化 / βアミロイド / 比較病理学 / 神経病理学 |
Research Abstract |
胎子から20歳までのイエネコ24頭の大脳を解析した。8歳未満の脳ではAβ沈着および高リン酸化タウ沈着は認められなかった。8歳以上の16頭のうち15頭で大脳にAβが沈着していた。また、Aβ沈着がみられた個体でのみ高リン酸化タウの沈着が観察された(15頭中9頭)。すなわち、老齢ネコの脳においてもヒトのアルツハイマー病と同じようにAβ沈着が先行し、続いてタウ蛋白質の過剰リン酸化がおこると考えられる。 Aβ沈着は、ギ酸処理標本では大脳皮質の実質に、ギ酸処理をしていない標本では海馬錐体細胞の細胞質に顆粒状に観察された。これらの沈着物は渡銀染色で染色されない。また、ウェスタンブロッティングにより、海馬にAβオリゴマーが存在することを確認した。 高リン酸化タウの沈着は、軽度の個体では嗅内野に限局し、重度の個体では海馬の錐体細胞に多数観察された。高リン酸化タウ沈着物はガリアスブラーク染色で黒色に染色され、主に神経細胞(神経原線維変化)に、一部で稀突起膠細胞の細胞質に観察された。脳凍結サンプルのサルコシル可溶分画では、胎子の脳において3リピートタウが多く発現されており、4リピートタウの発現はみられなかった。一方で、成体では3リピートタウと4リピートタウが両方発現されていた。さらに、組織学的に神経原線維変化が確認された脳ではサルコシル不溶分画にも3リピートタウと4リピートタウが検出された。 年齢をマッチさせた老齢ネコについて、神経原線維変化陽性の脳と、神経原線維変化陰性の脳を比較すると、神経原線維変化陽性の脳ではNeuN陽性の錐体細胞が有意に減少していることがわかった。 以上の結果から、イエネコは他の多くの哺乳動物とは異なり、脳に嗜銀性老人斑(Aβ凝集物)を形成しないが、低凝集性のAβ(Aβオリゴマー)が蓄積する。Aβの蓄積に伴って、ヒトのアルツハイマー病と同じ性質(分布、構成蛋白質、嗜銀性、神経細胞変性)の神経原線維変化を形成する
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