2013 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変の進展に関わる鉄代謝障害の発現プロファイリングと分子病理学的機序の解明
Project/Area Number |
24780288
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (20580369)
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Keywords | 肝硬変 / 鉄代謝 / hepcidin / 炎症 |
Research Abstract |
肝硬変における鉄代謝障害の分子メカニズムを解明するために,肝硬変モデルラットを作製し,解析した.モデルラットは,当研究室で確立されたプロトコール(J Toxicol Pathol. 15: 19-29, 2002)に従い,チオアセトアミドの反復腹腔内投与(100 mg/kg体重,最大25週間)により作製した.肝硬変の進展に伴う鉄代謝関連分子の変化を調べるため,肝臓および血清を経時的に採材した.得られたサンプルを用いて,病理組織学的解析,生化学的解析(血清鉄,肝鉄含有量)および分子生物学的解析(RNA,蛋白)を実施した.本モデルでは,投与開始後5週から小葉中心性線維化が認められ,15週以降は偽小葉形成を伴う重篤な肝硬変の病態を呈していた.肝硬変の進展に伴って,15週から血清鉄および肝臓鉄の上昇が認められた.肝硬変の病巣内では,偽小葉を形成する肝細胞および線維化部位のマクロファージに鉄蓄積が観察され,肝鉄過剰症(hepatic iron overload)が生じていることが示された.各種鉄代謝関連分子の発現解析により,肝硬変の進展期である15週から,鉄代謝のcentral regulatorであるhepcidinの発現抑制が認められた.このhepcidinの発現抑制と一致して,炎症性シグナル経路の1つであるIL6-Stat3系の不活性化が観察された.以上の結果から,肝硬変の進展期に生じる鉄過剰症の背景には,hepcidinの誘導障害が関与している可能性が示唆された.
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