2012 Fiscal Year Research-status Report
心臓リモデリングにおけるmatricryptinsの作用に関する基礎的検討
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24780289
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
岡田 宗善 北里大学, 獣医学部, 講師 (30453509)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Matricryptins / Endostatin / 心線維芽細胞 / 遊走 / 増殖 / 心筋収縮 / 心筋イオンチャネル |
Research Abstract |
本研究は細胞外マトリックス(ECM)分解産物matricryptinsが心臓に及ぼす影響について細胞の形態や機能変化に着目して検討を行っている。現在までにmatricryptinsの1つendostatinについて以下のような研究成果が得られた。1.心線維芽細胞機能に及ぼすendostatinの影響:ラット単離心線維芽細胞に及ぼすendostatinの影響について検討したところ、血管内皮細胞などで認められる細胞障害性は示さなかった。一方でendostatinは細胞の遊走能(wound induced migration法)や増殖能(細胞数計測法)を増加することが明らかとなった。この結果からendostatinが心線維芽細胞機能亢進作用を有することが明らかとなった。2.心筋収縮に及ぼすendostatinの影響:マウス左心房筋及びラット左心室乳頭筋標本を用いてマグヌス法により心筋収縮に及ぼすendostatinの影響について検討した。Endostatin単独処置ではそれぞれの心筋収縮力に影響を及ぼさなかったが、マウス左心房筋標本において、bradykinin誘発陽性変力作用をendostatin前処置が抑制する結果が得られた。この結果から、endostatinが心筋収縮機構にも影響を及ぼすことが明らかとなった。3.心筋細胞のイオンチャネルへのendostatinの影響:パッチクランプ法を用いてモルモット心室筋の電位依存性カルシウムチャネル活性化について検討を行ったところ、endostatin単独処置はそれに影響を及ぼさなかった。 以上の結果より、matricryptinsの1つendostatinが心臓の様々な機能や形態変化に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Matricryptinsのうちendostatinはヒト由来のリコンビナント蛋白では作用が見られなったため、マウス由来のリコンビナント蛋白を購入し、各種検討に用いた。Arresten及びcanstatinのリコンビナント蛋白作成は確立できていないために未だ作用検討には至っていない。心線維芽細胞機能へのmatricryptinsの影響という点では、初代培養ラット心線維芽細胞においてendostatinが遊走と増殖を亢進するという作用を明らかにした。しかしマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)分泌、ECM産生、そしてサイトカインや成長因子の産生に及ぼすendostatinの影響については未だ検討段階である。心筋細胞の初代培養法については確立できていないので、心筋細胞形態変化へのmatricryptinsの影響については検討出来ていない。しかし心筋細胞機能へのmatricryptinsの影響(心筋収縮力及び心筋イオンチャネル電流)についての検討を行った結果、マウス左心房筋標本におけるbradykinin誘発性の陽性変力反応にendostatinが影響を及ぼすことを明らかにした。心内膜内皮細胞の収縮関連因子産生に及ぼすmatricryptinsの影響という点では、マウス左心房筋及びラット左心室乳頭筋の内皮保持標本における心筋収縮力、そしてマウス左心房筋標本における内皮依存性のプロスタグランジン産生を介したカルバコール誘発陽性変力作用に対してendostatinが影響を及ぼさなかったため、その作用は未だ明らかに出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
リコンビナント蛋白作成が確立できておらず未だ作用検討が出来ていないarresten及びcanstatinに関しては、それぞれ市販のリコンビナント蛋白を購入して各種検討に用いることで対応策とする。心線維芽細胞に対するmatricryptinsの影響については、endostatinで認められた増殖及び遊走促進作用機序を明らかにするために、その受容体の検索と細胞内シグナルの解析を行う。また心線維芽細胞のMMPs分泌、ECM産生、そしてサイトカインや成長因子の産生に及ぼすendostatinの影響についても併せて検討を行う。初代培養法が確立されていない心筋細胞の細胞形態変化へのmatricryptinsの影響については、ラット心筋由来株化細胞(H9c2細胞)を用いて検討することで対応策とする。心筋収縮に及ぼすmatricryptinsの影響については、endostatinによるbradykinin誘発陽性変力作用の抑制機構について検討を進める。心筋細胞のイオンチャネル活性に対するmatricryptinsの影響については、bradykininが活性化するモルモット心筋細胞の電位依存性カルシウムチャネルに及ぼすendostatinの影響についてパッチクランプ法で検討を行う。またマウス左心房筋の内皮剥離標本と保持標本を用いて、bradykinin誘発陽性変力作用に及ぼすendostatinの影響をマグヌス法により比較検討し、bradykininに対する心内膜内皮細胞の収縮関連因子産生に及ぼすmatricryptinsの影響を明らかにする。またこの詳細な作用検討のためにマウスもしくはラットからの心内膜内皮細胞の初代培養法を確立し、検討に用いる。 なおこれまでに得られた成果は積極的に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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