2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780296
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村本 裕紀子 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (70436567)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス |
Research Abstract |
A型インフルエンザウイルスのPA遺伝子は、ウイルスポリメラーゼ複合体を構成する PA蛋白質をコードする。これまでに、インフルエンザウイルス感染細胞内にPA蛋白質とは分子量が異なる未同定のウイルス蛋白質が発現していること、それはPA mRNAの11番目および13番目のAUGコドンからPA蛋白質と同フレームで翻訳されたものであることを明らかにしていた。本研究では、新規ウイルス蛋白質「PA蛋白質N末端欠損体」の、ウイルス増殖における機能および重要性を解明することを目的とした。 まず、これまで使用していたA/WSN/33株だけでなく、他のインフルエンザウイルス株でもN末端欠損体が保存されているかどうかを調べたところ、シークエンスデータベースではほとんどのA型インフルエンザウイルスで保存されており、また解析した全てのウイルス株でウイルス感染細胞内にN末端欠損体の発現が確認されたことから、これらのN末端欠損体がA型インフルエンザウイルスで広く保存されていることが示唆された。 11番目または13番目のAUGコドンに変異を挿入して作製した、N末端欠損体を発現しないミュータントウイルスの培養細胞における増殖性を調べたところ、野生型ウイルスと比べて10分の1以下に低下した。また、インフルエンザウイルス感染の動物モデルであるマウスに、N末端欠損体を発現しないミュータントウイルスを感染させ、野生型ウイルスと比較したところ、ウイルス量が10分の1以下に低下し、病原性も弱くなった。つまり、N末端欠損体の発現がウイルス増殖・病原性の発現に効果的に働くことが明らかになった。 これまでの結果から、PAのN末端欠損体は、インフルエンザウイルスの増殖、病原性の発現に重要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、研究実施計画どおりに、インフルエンザウイルス感染細胞で発現するPAのN末端欠損体のウイルス増殖における重要性を明らかにすることができた。おおむね順調に研究は進んだといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究実施計画どおりに、PAのN末端欠損体の性質および機能を解析する予定である。 具体的には、N末端欠損体および他のウイルス蛋白質の発現カイネティクスを解析し、N末端欠損体の細胞内局在を明らかにし、N末端欠損体のポリメラーゼ機能の解析、また、ウイルスポリメラーゼ蛋白質によるポリメラーゼ機能におけるN末端欠損体の重要性の解析を行う計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養およびPAのN末端欠損体の検出に使用する試薬類などの消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)