2012 Fiscal Year Research-status Report
不溶性高分子担持型ロジウム(II)錯体の創製と触媒的不斉合成プロセスの開発
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24790001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪和 幸司(竹田幸司) 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00572497)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 不斉触媒反応 / ロジウム(II)錯体 / 固相触媒 |
Research Abstract |
市販のテトラフルオロフタル酸から11工程で四つの配位子のうち一つにスチリル基を組込んだ単量体Rh2(S-TFPTTL)4誘導体を合成し、共重合反応に付すことで、不溶性高分子担持型Rh (II)錯体を調製した。今回の担持法は、従来法では困難であった高分子樹脂内部に触媒部位を均一に分散させることが可能であった(走査型電子顕微鏡による断層写真により確認)。本錯体は、-20 °Cでのシリルエノールエーテルの不斉アミノ化反応において、反応時間が延長したものの母型錯体Rh2(S-TFPTTL)4と同等のエナンチオ選択性 (92% ee) を示し、収率、不斉収率を損なうことなく20回の繰り返し使用が可能であった。また、誘導結合プラズマ質量分析 (ICP-MS)による1回目の反応残渣へのロジウムの漏洩はごくわずか(10 ppm)であることが判明した。これら結果は、今回の担持法がRh(II)錯体の不斉反応場にほとんど影響を与えていないこと、および本高分子担持錯体が繰り返し使用に十分耐えうる物理的強度を持つことを示している。 単量体Rh2(S-TFPTTL)4誘導体の合成を踏襲し、単量体Rh2(S-TCPTTL)4誘導体の合成を検討したが、全てのフタルイミド基の水素原子を塩素原子で置換した単量体Rh (II)錯体を調製することはできなかった。そこで,四つの架橋配位子のうち三つの配位子のフタルイミド基を塩素原子で置換した単量体Rh(II)錯体を調製し,2-(トリフルオロメチル)スチレンおよび架橋剤との共重合反応を行い,不溶性高分子担持型Rh (II)錯体を合成した。本錯体存在下,α-ジアゾ-β-ケトエステルとスチレンとの付加環化反応を行うと,収率は低下したものの完璧なexo選択性かつRh2(S-TCPTTL)4と同等のエナンチオ選択性 (99% ee)で付加環化生成物が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つ以上の不斉配位子を組み込んだ金属錯体の固相への担持は、今なお発展途上の研究課題であり、母型錯体の不斉空間を保持した担持法の開発が強く望まれている。 我々が開発した四つの架橋配位子のうち一つの配位子のみを修飾した単量体Rh(II)錯体の共重合による不溶性高分子担持型Rh(II)錯体の調製法は、母型錯体の不斉空間にほとんど影響を与えないことが判明した。ところで、固相触媒をフローリアクターへと適応する場合、連続使用に耐える触媒の強度および厳密な金属の侵出の回避が必須となる。今回開発した不溶性高分子担持型Rh(II)錯体は20回の繰り返し使用に耐え、生成物へのロジウム金属の侵出がほとんど検出されなかったことから上記の条件を十分に満たしている。以上の結果は、固相Rh(II)錯体を基盤とする不斉合成プロセス開発への展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基にして、単量体Rh(II)錯体と様々なスチレン誘導体および架橋剤との共重合反応を行い、各種反応系や合成プロセスに最適な物理化学的性質を示す固相Rh(II)錯体の合成に基づく実践的不斉合成プロセスの開発を目指し、以下の検討を行う。また、得られた結果を取りまとめ、国内外の学会及び学術雑誌での発表を行う。 1. 不溶性高分子担持型Rh2(S-TBPTTL)4を創出し、α-アルキル-α-ジアゾエステルの分子間不斉シクロプロペン化反応に適用する。本反応において、1,2-ヒドリドシフトを経るα,β-不飽和エステルの副生を抑制するため、低温でも使用することができる不溶性高分子担持型Rh(II)錯体を開発する。 2. 固相触媒のフローリアクターやマイクロリアクターへの適用は反応時間を短縮し、連続使用により触媒量の低減を可能とする。不溶性高分子担持型Rh(II)錯体の微細な管への充填方法を確立し、固相Rh(II)錯体充填型フローリアクターおよびマイクロリアクターを開発し、合成の迅速性と環境負荷の低減を両立する次世代型不斉合成プロセスの開発を行う。また、本合成プロセスによる天然物合成を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費は研究計画に記載した実験の遂行に必要不可欠な試薬類、各種溶媒、実験用ガラス器具および参考書籍等の購入に充てる。旅費は学会発表や研究打合せへの参加費用ならびに航空運賃、参加期間中の宿泊費に充てる。謝金に関しては、約2名の大学院生に補助を依頼し、5ヶ月間の研究補助(データ収集および整理)に対して支払う予定である。その他に関しては、スペクトル依頼測定料(NMRの特殊測定・質量分析・元素分析、ICP発光分析)、英文校閲料、論文投稿料・別刷費に充てる。
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Research Products
(8 results)