2012 Fiscal Year Research-status Report
キラルな対アニオンを持つルテニウム触媒を用いた不斉炭素ー炭素結合形成反応の開発
Project/Area Number |
24790002
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 望 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80349258)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 有機合成化学 / 有機金属化学 / アレン / アルキン / 不斉環化反応 / キラル対アニオン / カチオン性錯体 / 動的速度論分割 |
Research Abstract |
新しいタイプのキラル遷移金属触媒を用いた不斉合成反応の開発を目的とした研究を進めた。すなわち、従来のキ ラルな配位子を組み込んだ触媒による反応とは異なり、キラルなアニオンを対イオンに持つ光学活性遷移金属錯体を触媒とした、新しい不斉炭素-炭素結合形成反応の開発を目指した。1,3-ジ置換アレンは軸不斉を有することに着目し、速度論的分割による不斉環化反応への展開を目指し検討した。すなわち、ラセミ体の1,7-アレンインとキラルなカチオン性ルテニウム錯体を反応させれば、アレンインのエナンチオマーのうちいずれか一方のみから環化が進行し、環化体及びアレンインが光学活性体として得られると期待した。そこで、アレン及びアルキン上の置換基効果やリンカー長の効果について種々検討を行った。アレンの1位に2つの同じ置換基を持つアレンを基質とした場合、生成する炭素-炭素結合がsp2炭素同士、sp2炭 素と4置換sp3炭素間での結合なので、本質的に不斉中心を生じにくい。そこで代表者は新たにアレン-ジインを基質としたエナンチオ場選択的な環化反応システムを設計した。すなわちプロキラルなアレン-ジインを基質としてキラルなアルコキシドイオンを持つルテニウム錯体存在下で反応を行えば、キラルなルテニウム触媒がいず れか一方のアルキン及びアレンの外側の二重結合と反応し、ジアステレオメリックなルテナサイクルを形成する と考えられる。最終的にルテナサイクルからの還元的脱離によってプロパルギル位に4置換炭素原子を持つ2環式化合物が光学活性体として生成すると考え検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロキラルなアレンジインを基質としたエナンチオ場選択的環化反応について検討を行った。すなわち、7-benzyloxy-2-methyl-7-(prop-1-yn-1-yl)deca-2,3-dien-8-yneを基質とし、触媒前駆体であるCp*RuCl(cod)と、ビナフチル骨格を持つリン酸の銀塩との反応で生じる、キラルホスフェートを対アニオンとするカチオン性ルテニウム触媒による環化反応を試みた。キラルアニオンの芳香環上の置換基を種々検討したものの、エナンチオ選択性は殆ど発現せず、また環化成績体の収率も低収率に留まった。代表者は触媒前駆体であるCp*RuCl(cod)をアルコール中で反応させるとアルコキシドアニオンを対イオンとするカチオン性ルテニウム錯体が形成されることを明らかにしている。そこで、キラルなアルコールを用いれば新しいカチオン性ルテニウム錯体が形成され、エナンチオ選択的な環化反応が進行することを期待し、種々の光学活性アルコール存在下で環化反応を検討した。その結果、メントールを添加剤として用いると中程度のエナンチオ選択性ながら目的とする環化成績体が生成することが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も引き続きキラルな対アニオンを持つルテニウム触媒を利用した、不斉環化反応を検討する。平成24年度の検討において、光学活性アルコールの添加がエナンチオ選択性の発現に影響することが明らかになったことから、引き続き高いエナンチオ選択性を与えるアルコールの探索を行う。また本反応はカチオン性錯体が活性種であることから、電荷を持った反応場がエナンチオ選択性に強く影響する可能性がある。そこで、電荷を持った反応場として現在有機合成に用いられているイオン液体中での反応についても検討していく。また近年、イオン液体中での反応を触媒リサイクル反応へ展開している例が報告されている。そこで、触媒リサイクル型不斉環化反応への展開も視野に入れ、イオン液体中での環化反応の検討を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額(B-A)」の3,967円については3月に発注・納品が完了しており、4月に支払いされる。平成25年度の経費に使用計画は以下の通りである。物品費に1,500,000円を計上しているが、主に日常的な研究の推進に必要な有機合成試薬、有機溶媒、ガラス器具等の消耗品に使用する。国内の討論会に2回出席するためその旅費として150,000円を計上した。また、謝金・人件費として50,000円を計上しているが、これは学術論文誌に投稿する際の、英文校正等に使用することを目的としている。
|
Research Products
(9 results)