2012 Fiscal Year Research-status Report
多置換オキサトリシクロウンデカン-マクロライド融合天然物の全合成と構造活性相関
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24790022
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
菅原 章公 北里大学, その他の研究科, 助教 (50581683)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 全合成 / ルミナミシン / 抗嫌気性菌活性 / マクロライド / シスデカリン / 抗感染症薬 |
Research Abstract |
「背景・目的」ルミナミシンは北里研究所の大村らによって、抗嫌気性菌活性を示す新規天然物として見出された。さらに、標的となるグラム陽性の偏性嫌気性菌Clostridium difficile (クロストリジウム属)は、偽膜性大腸炎などを引き起こすため、大変危険な菌として警戒されている。ルミナミシンは、C. difficileに対して選択的な抗菌活性を示すため、ルミナミシンの有機合成を用いた全合成と構造活性相関解明は、その創薬への展開が期待できる。しかしながら、ルミナミシンの全合成の報告例はない。従って、研究代表者は、この前例のない構造の効率的かつ実用的な全合成法の構築と構造活性相関の解明を目指す。さらに、シスデカリン部分の類似天然物の活性とは全く異なる活性を示すことに対しても、その機構の解明を目指し研究する。 「計画」ルミナミシンの効率的かつ誘導化が可能になる全合成経路確立のために、2つのフラクグメントである大環状エノールエーテルマクロライド(既に合成を完了した)と三環性酸素結束シスデカリンに分割し、合成後半に収束的に中央部10員環を構築する経路を考案した。平成24年度は、三環性酸素結束シスデカリンの合成経路確立と二つの鍵フラグメントの大量合成を行う計画を立てた。 「結果」市販品であるアクロレインから9工程で鍵中間体のひとつであるシクロヘキセン体へ導いた。次いで、3工程を経て三環性化合物へ導いた後、別途調製した側鎖をStilleカップリングにより導入し、ラクトン環を開裂させた。その後、水酸基への保護を行い、鍵反応である架橋エーテル形成反応を行うことで、フラグメントの一つである三環性酸素結束シスデカリンの重要骨格の構築に成功した。基本骨格の構築に成功したので、現在は、必要な官能基の導入を検討している。同時に、各フラグメントの鍵中間体のグラム合成も達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルミナミシンの効率的かつ誘導化が可能になる全合成経路確立のために、二つのフラクグメントである大環状エノールエーテルマクロライド(既に合成を完了した)と三環性酸素結束シスデカリンに分割し、合成後半に収束的に中央部10員環を構築する経路を考案した。平成24年度は、三環性酸素結束シスデカリンの合成経路確立と二つの鍵フラグメントの大量合成を行う計画を立てた。 市販品であるアクロレインから9工程で鍵中間体のひとつであるシクロヘキセン体へ導いた。次いで、3工程を経て三環性化合物へ導いた後、別途調製した側鎖をStilleカップリングにより導入し、ラクトン環を開裂させた。その後、水酸基への保護を行い、TIPSOTfを用いて鍵反応である架橋エーテル形成反応を行うことで、フラグメントの一つである三環性酸素結束シスデカリンの重要骨格の構築に成功した。また同時に、各フラグメントの鍵中間体のグラム合成も達成した。 以上のように、計画で示した三環性酸素結束シスデカリンの合成経路確立までは到達していないが、最も困難と予想していた三環性酸素結束シスデカリンの重要骨格の構築に成功した。さらに、もう一つの計画である二つの鍵フラグメントの大量合成にも着手し、目標としていた大環状エノールエーテルマクロライドと三環性酸素結束シスデカリンの鍵中間体のグラム合成を達成した。 従って、達成度について「おおむね順調に進展している。」と自己判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に示したように、二つの鍵フラクグメントの一つである大環状エノールエーテルマクロライドに関しては、その合成を完了した。また、もう一つのフラグメントである三環性酸素結束シスデカリンに関しては、その重要骨格の構築に成功した。しかしながら、三環性酸素結束シスデカリンの全ての必要な官能基は合成できていない。 以上のことから、今後の研究の方針は以下の通りに行う。 まず、三環性酸素結束シスデカリンの全ての官能基を揃える。次いで、合成した二つの鍵フラクグメントに対してメタセシス、マクロラクトン化を行うことで10員環を構築し、天然物ルミナミシンの前駆体へと導く。その後、フラン部分を二段階の酸化で無水マレイン酸へ導き、保護基の除去を行うことで、天然物ルミナミシンの合成経路確立を行う。 加えて、3つのアプローチで活性評価を行う。1) ルミナミシンがシスデカリン部分の類似天然物の活性とは全く異なる活性を示すことに対して、その機構の解明を目指すために、各フラグメントの抗嫌気性菌活性の精査を行う。2) 天然物ルミナミシンを分解することにより全合成過程では得られないユニークな分子を構築し、その活性評価を行う。3)天然物ルミナミシンを直接誘導化し、その活性評価を行う。特に、天然物の誘導化からは天然物骨格の構造活性相関が得られると期待できる。これらの情報は全合成経路からは得られない情報であり、有用な微生物を所有する当グループの大きな特徴と云える。上記に示した3つのアプローチを巧みに利用し、ルミナミシンがシスデカリン部分の類似天然物の活性とは全く異なる活性を示すことに対して、その機構の作用解明を目指す。加えて、合成中間体に関してもNMRによる溶液中の構造解析を行うことで、三次元構造と活性がどのように影響を及ぼすかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ルミナミシンの全合成、誘導体合成には化合物の大量合成が必須であるため大型のガラス器具の補充、各種反応試薬、シリカゲル、溶媒の購入に研究費を充てる。また、試薬保管用のデシケーター、真空ポンプやロータリーエバポレーター、反応用の攪拌機も老朽化に伴い必要である。 また、本研究の成果発表の場として、日本薬学会年会、天然有機化合物討論会、有機合成シンポジウム、次世代シンポ等を計画しており、その参加費、交通費、宿泊費に充てる。さらに、国際学会(ACS meetingなど)の参加も予定しており、日本国内のみにとどまらず、世界に向けて研究成果を発信していく。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Toward the total synthesis of Luminamicin: construction of 14-membered lactone framework possessing versatile enol ether moiety2012
Author(s)
Aoi Kimishima, Tomoyasu Hirose, Akihiro Sugawara, Takanori Matsumaru, Kaoru Nakamura, Ken Katsuyama, Masaki Toda, Hirokazu Takada, Rokuro Masuma, Satoshi Omura, , Toshiaki Sunazuka
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Journal Title
Tetrahedron Letters
Volume: 53
Pages: 2813-2816
DOI
Peer Reviewed
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