2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790031
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
江嵜 啓祥 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40454889)
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Keywords | 選択的還元反応 / パラジウム / 不均一系触媒 / 球状成形活性炭 |
Research Abstract |
本申請研究では、球状に成形した活性炭にパラジウムを担持させた新たな不均一系触媒(球状成形活性炭担持型パラジウム触媒(Pd/SC))を用いる新規有機合成反応の確立を目的としている。 当該年度は、前年度に引き続き同一分子内に複数の還元性官能基を有する種々の基質を用いて選択的還元を行い、Pd/SC触媒による官能基選択的還元反応の一般性を確認した。すなわち、芳香族カルボニル基、芳香族塩素、シアノ基、ベンジルエステル、ベンジルエーテル、N-Cbz保護基、フェノール性水酸基のO-TBS保護基を還元することなく、これらの官能基共存下にアセチレン、オレフィン、ニトロ基、アジド基、脂肪族アルコールのO-TBS保護基のみを還元できることを示した。また、Pd/SCによる官能基選択的還元活性発現の根拠を明らかにするため、透過型電子顕微鏡(TEM)等により、活性炭の形状や金属の分布状態などについてPd/SCのさらなる解析を行った。さらに反応後のPd/SCの走査型電子顕微鏡(SEM)解析を行い、再利用実験後に触媒活性が低下する原因が、攪拌過程における触媒の物理的破損に由来するものと推察した。 ところで、芳香族カルボニル基は通常の接触還元条件下で容易に還元を受け、ベンジルアルコールを経由して最終的に水素化分解されて対応するメチレン化合物へと変換されるが、Pd/SCを芳香族アルデヒドの還元に用いた場合、溶媒として利用したメタノールが反応して得られるアセタールが比較的効率よく得られることを見出した。そこで、これをPd/SCを利用したアセタール合成法として確立すべく種々芳香族アルデヒドを基質として検討したところ、いずれの場合でもアセタールの生成が確認された。また、メタノールに代えてエタノールを溶媒として用いた場合でも、アセタールが生成することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、Pd/SCを用いる官能基選択的還元反応の確立を目的として、基質一般性を確認するとともに触媒の詳細な解析を実施し、これらの研究成果をシンポジウム並びに専門誌にて発表した。研究実施計画で平成26年度に予定していたPd/SCの解析は、当該年度までにほぼ終了したことになる。今後はこれらの解析結果を触媒開発へとフィードバックし、本触媒の安定供給、改良へとつなげたいと考えている。一方、Pd/SCを用いる接触還元条件下、芳香族アルデヒドを基質として用いた場合にアセタール化が進行する反応については、他の基質や溶媒を用いてその一般性を確認した。現時点では、アセタール化効率の点でさらなる改善が必要であり、引き続き検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度に引き続きPd/SC触媒によるアセタール合成法の確立を目的として研究を進める。反応温度や反応時間、触媒量、水素圧、添加剤等について順次条件検討を重ね、アセタール合成の効率化を図るとともに、脂肪族アルデヒドやケトン等への適用拡大を検討する。また、本反応では、水素ガスが存在しないとアセタール化効率が極めて低いことが明らかとなっている。水素ガスの役割についてアセタール生成の反応機構の点から検討したい。一方、前年度までに明らかとした選択的還元反応の結果を受けた応用的研究として、これまでに報告されている生物活性物質等の合成過程にPd/SCを用いる官能基選択的接触還元反応を適用し、工程数の削減等、実際の応用を試みる予定である。さらに、国内外の学会に積極的に参加して研究成果を広く発信するとともに、様々な分野の研究者との討論、交流によって多くの知見を得て、本研究のさらなる応用性について模索したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度はアメリカ化学会年会(ACS National Meeting)にて研究成果発表を行う予定で旅費を計上していたが、開催時期の影響で学会参加を見送ったため実使用額が予定額を下回った。 平成26年度は、前年度に引き続きPd/SCを利用した新規有機合成法の確立を目的として研究を進める。研究費は試薬や有機溶媒、反応用ガラス器具等、消耗品の購入に充てる予定である。また、既に発表が決定している第248回ACS National Meeting(アメリカ)における研究成果発表のための旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)