2012 Fiscal Year Research-status Report
ベンザイン等の不安定化学種を活用した新規反応の開発とその応用研究
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24790032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
吉岡 英斗 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (80435685)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベンザイン / [2+2]型反応 / ベンゾオキセテン / ラジカル / 有機色素 / 光触媒 / 連続反応 / カスケード反応 |
Research Abstract |
高速かつ効率的な反応の開拓を目指してベンザインやラジカルなどの不安定な化学種に着目し、下記の研究を行った。これらの不安定な化学種は反応制御に困難が伴う一方、効果的に制御できれば、これまで困難であった素反応の開発やターゲット合成の効率化が見込める。 (1)ベンザインの歪みエネルギーを活用した連続反応の開発:本研究は、ベンザインの歪みを段階的に解消し、解消時に生じるエンタルピー項を駆動力とした温和な条件下での連続反応として設計した。まず、ベンザインの発生と求核剤の活性化の両過程にF-イオンを利用する「ダブルアクティベーション法」を検討した。期待通り活性化を行えた結果、目的の生成物は得られたものの改善の余地があり、継続した検討を行っている。並行して、ベンザインを介したベンゾフランおよびジヒドロベンゾフランの新規ワンポット合成法を検討した。その結果、ホルムアミド類およびα-クロロエステル類共存下、適切な添加剤を加えることで[2+2]型反応~[4+1]型反応が効率的に進行し、目的のワンポット合成法開発に成功した。 (2)触媒的なラジカル連続反応の開発:本研究は、光感応性色素などが光照射下一電子酸化あるいは還元される性質に着目し、ラジカル反応を触媒的な連続反応に転換すべく設計した。最初に、一電子酸化を利用したラジカル反応として活性メチレン化合物などを基質として反応を検討したものの、期待した結果は得られなかった。そこで、基質の反応性を検証する目的で、安価で環境毒性の少ない鉄を酸化剤として用いた新たな反応を検討し、成果を得つつある。一方、一電子還元を利用した反応として、ハロゲン化アルカンから触媒的にアルキルラジカルを生成することを検討した。その結果、水中でいくつかの光感応性色素が有効に働くことを見出しており、新たな触媒的ラジカル反応系の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
並行して研究を進めており、解決に時間を要する際も柔軟にリソースの振り分けをできたことにより、おおよそ予定した範囲内での成果が得られたと考えている。ベンザインの歪みエネルギーを活用した連続反応の開発では、ダブルアクティベーション法は継続的な検討が必要である。そのための新しいベンザイン前駆体や試薬の合成が必要だが、合わせて計画していた別の連続反応の検討を進め、[4+1]型反応を経由した新規ジヒドロベンゾフランのワンポット合成法開発に成功した。 触媒的なラジカル連続反応の開発では、光感応性色素の一電子酸化能を活用した反応を検討した。現在のところ期待した結果は得られていないが、基質の反応性を検証する目的で安価で環境毒性の少ない鉄を酸化剤として用いた反応を行い、フォークした研究であるが、基質設計の妥当性を確認する意味で成果を得つつある。一方、光感応性色素の一電子還元能を活用した反応として、種々のハロゲン化アルカンからラジカル種を生成し触媒的なラジカル連続反応の開発に成功した。種々の色素を検討した結果、これまで有効性の知られていなかった有機色素を用いた反応にも成功している。 以上のように、おおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンザインを活用した連続反応について、新たなベンザインおよびピリダインの前駆体を合成し、置換基効果と反応性について検討する。置換基による反応性の制御を図り、ダブルアクティベーション法へも応用する。合わせて、[2+2]型反応により生成するベンゾオキセテンやo-キノンメチドを活用した連続反応について検討を進め、応用範囲の拡大を図る。例えば、ジエノファイルを共存させたDiels-Alder反応や、ナイトレン等価体を利用したイソキサゾール合成、酸素または硫黄求核種を用いた多成分連結反応を検討していく。また、新たにC=N結合との[2+2]型反応を検討する。初期検討に溶媒としても利用可能なピリミジンやイソキサゾールを用いたが、反応は全く進行しなかった。そこで、これまでのホルムアミドの結果を基に隣接するアミノ基からの電子供与が期待されるアミジン類や高い求核性を有するヒドロキシルアミンから誘導できるオキシムエーテル類をそれぞれ合成し活用する。 触媒的ラジカル反応では、還元的なアルキルラジカル生成過程を前提とした基質を合成し、本連続反応の一般化を図る。合わせて、鉄を用いた酸化的ラジカル反応の結果を元に、鉄と有機色素を共存させた触媒反応系を新たに検討する。さらに、触媒が有する一電子酸化・還元能を循環的に利用した連続反応への足掛かりとして、同一分子内に酸化部位と還元部位の両方を有する基質を合成しその反応を検討する。例えば、ハロゲン化アルカンの還元的ラジカル開裂を起点とした分子内ラジカル環化反応により生成する中間体を酸化的に目的物へと変換する系や活性メチレン化合物の酸化的ラジカル環化反応から生成する中間体ラジカルを還元的に捕捉する系を検討する。光触媒は、均一系触媒から検討し、分離容易な不均一系触媒へと展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子軌道計算ソフトを初年度に導入したことで、大型機器に関する支出は必要ないと考えており、主要な研究経費としては消耗品類と研究成果の発信に関係する支出を計画している。消耗品の多くは、日々の研究や機器分析に使用するガラス器具や試薬で、新たなベンザイン前駆体の合成やラジカルカスケード反応の基質合成を優先して進めていく。研究成果の発信に関係する支出は、学会での発表や情報収集に関わるものとともに、論文の作成や投稿に掛かる費用を合わせて想定している。
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