2012 Fiscal Year Research-status Report
One-Potフルオラス合成法を用いた糖鎖ライブラリーの構築
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24790034
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Research Institution | The Noguchi Institute |
Principal Investigator |
後藤 浩太朗 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (30321673)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | フルオラス / One-Potグリコシル化 |
Research Abstract |
従来のフルオラスタグ法は通常の有機合成で最も時間と労力を要する精製工程を大幅に簡略化できる効率的な合成手法である。しかしながら一方で目的化合物の他に未反応のフルオラス性原料やフルオラス性副生成物を分離することができないといった問題が存在する。現時点では、この問題点の有効な解決方法は存在しない。そこでこれらのフルオラスな副生成物や未反応物を除去可能な新しいフルオラス糖鎖合成法として従来のフルオラスタグ法にOne-Potグリコシル化を組み合わせた「One-Potフルオラス合成法」の開発を行うこととした。このOne-Potフルオラス合成法の鍵となるのは、反応後の分配操作において目的物以外のフルオラス性を有する化合物(未反応の原料や副生成物など)をいかに有機層に除去(分配)し、フルオラス層に目的物のみを分配させることができるかという点に尽きる。さらに目的の糖鎖分子のサイズごとに適切な分配系を構築することも必要不可欠となる。 本年度はこのOne-Potフルオラス合成法を構築するための分配系を確立するためのフルオラスタグの大きさについての検討を行った。まず単糖と二糖を分配操作によって分離させる系の検討を行った。種々検討した結果、ペルフルオロオクチル基を2本有するフルオラスタグを糖1残基につき1つ導入することで目的の二糖類と単糖を分配操作により分離させることに成功した。次に二糖と三糖を分離させることが可能な系についての検討を行った。まず、糖1残基につきペルフルオロオクチル基を1本有するフルオラスタグを導入することで三糖と二糖とを分離させることを試みたが、この条件では分離することはできなかった。そこで、更なる検討を進めた結果、二糖と単糖の分離の時と同様にペルフルオロオクチル基が2本入ったフルオラスタグを糖1残基につき1つ導入することで三糖と二糖を分離させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はOne-Potフルオラス合成法を構築するために必要不可欠な分配系を確立するためのフルオラスタグの大きさについての検討に着手した。種々検討した結果、単糖と二糖および二糖と三糖を分離することができるフルオラスタグの大きさと分配系をそれぞれ明らかにすることができた。また、通常のOne-Pot糖鎖合成において、1回のグリコシル化によって効率的に構築できる糖鎖の大きさは四糖程度までであり、それ以上の大きさの糖鎖は1回目のOne-Potグリコシル化で得られたもの同士をさらに縮合させるという手法をとるのが通常である。つまり、あと三糖と四糖を分離することができる系を見出すことができれば実際にOne-Pot合成とフルオラス合成法を組み合わせたOne-Potフルオラス合成法を用いた糖鎖合成の検討に入ることができると考えられる。以上の点よりおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は単糖と二糖、二糖と三糖をそれぞれフルオラス溶媒と有機溶媒の分配操作により分離可能な条件を見出すことができたので、次年度はこの延長として、まず三糖と四糖を分配操作により分離することが可能な条件についての検討を行う。具体的には本年度の結果を踏まえて単糖ユニット1残基ごとにフルオラスタグが1つずつ導入された三糖および四糖をそれぞれ合成する。その後それらの分配効率をそれぞれ測定する。この操作を繰り返すことで最適な、タグの構造と分配系の確立を行い分離可能な条件を確定させる。これらの結果を元に、目的とする糖鎖の大きさに応じて適切なフルオラスタグの構造と分配条件を設定し、One-Potグリコシル化と組み合わせることで「One-Potフルオラス合成法」の確立を目指す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の残金および次年度の予算は主にOne-Potフルオラス合成法に必要不可欠なフルオラス溶媒やフルオラスタグの原料、その他糖鎖合成の消耗品、さらには国内、国際学会費などとして使用する予定である。
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