2013 Fiscal Year Research-status Report
外来遺伝子防御の定量的可視化に基づく遺伝子導入メカニズムの解明と高効率化
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24790036
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐々木 章 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 特別研究員 (30580162)
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Keywords | 画像相関分光法 / 遺伝子デリバリー / DNA分解酵素 / 蛍光イメージング |
Research Abstract |
本研究では、生細胞内における外来遺伝子の分解機構をコントロールすることによる、外来遺伝子に対する防御機構の理解と外来遺伝子発現の高効率化を目的とする。外来遺伝子が核に至ることは「侵入」であり、厳重に防御する機構が存在すると考えられる。本研究では、①生細胞内における外来遺伝子の拡散・分解などの運命を空間相関解析で定量的に可視化 ②単一細胞内における外来遺伝子発現のアウトプット(発現タンパク質の量)の定量化 ③防御に関与するヌクレアーゼの同定と制御による外来遺伝子発現の高効率化、を目指している。本年度は昨年度までに完成した画像相互相関分光法 ccRICS (Cross-correlation raster-scan image correlation spectroscopy)の測定系を利用し、HEK293細胞ならびにMEF細胞における外来遺伝子の細胞内分解を時空間的に可視化した。その結果、DNA分解酵素活性が細胞種によって異なることを直接観察することに成功した。また、単一細胞内の遺伝子発現効率の解析に関し、環状プラスミドと直鎖状DNAをそれぞれ細胞導入した際のEGFP遺伝子発現効率をフローサイトメトリーによって単一細胞レベルで解析した。これらの結果は、細胞が持つ外来遺伝子の侵入に対する防御機構とその強さを新たに定義付けする画期的な成果である。現在、外来遺伝子発現プロセスの中で発現効率に重要な影響をもたらすDNA 分解酵素活性の同定と制御に向けた準備を進めている。具体的には、次世代シーケンサーを利用し様々な細胞内における種々のヌクレアーゼの発現レベルを明らかにし、制御対象となる候補ヌクレアーゼを絞り込むための検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに新たな画像相関解析法のプログラムを完成し、実際の細胞測定に供した。その結果、想定通り細胞種の違いによるヌクレアーゼ活性の差を可視化することに成功した。また、細胞種によるヌクレアーゼ活性の発現効率への影響を単一細胞レベルで明らかにすることを試みた。当初予定していたMEMSを利用した方法から測定手法を変更し、フローサイトメトリーによって発現効率を定量化した。以上の結果をもとに論文をまとめる段階に入っており、2年度目までに想定していた研究はおおむね達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究において、細胞質のヌクレアーゼが外来遺伝子発現効率に影響すること、さらにはその酵素活性は細胞種ごとに異なることをDNA分解プローブの直接観察から時空間的に明らかにした。今後は細胞内で外来DNAの分解に関与しているヌクレアーゼを同定し、当該ヌクレアーゼの発現をノックダウンすることで分解が軽減、ならびに発現効率が向上するかどうかを明らかにする予定である。しかし、細胞内には多数のヌクレアーゼが存在するため、解析の候補となる酵素を絞り込むことが必要である。そこで次世代シーケンサーを利用し、細胞内での発現レベルが高いヌクレアーゼを探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年度目の研究経費計画では、3年度目に向けてヌクレアーゼ同定用の実験に用いるsiRNA関連の試薬、抗体等を計上していた。しかし、前年度までの研究において一報の論文として公表するだけの十分なデータが得られたため、上記の実験よりも論文出版に向けた準備を優先させるよう計画を変更した。抗体等は保存が利きにくいという事情もあり、効率的な運用のため前年度分の未使用額を次年度に繰り越すこととした。 H26年度においては、当初前年度末に購入計画があったsiRNA関連の試薬・サンプルに加え、今年度に計上していた研究発表にかかる諸費用として使用する計画である。
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