2012 Fiscal Year Research-status Report
未知の薬剤耐性予測を目的としたインシリコ薬剤耐性評価法の確立
Project/Area Number |
24790043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川下 理日人 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00423111)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / 抗ウイルス薬 / ドッキングシミュレーション / インフルエンザ / HIV / ホモロジーモデリング |
Research Abstract |
本年度はまず当研究室にて開発したドッキングシミュレーションとボルツマン分布を組み合わせた薬剤耐性評価法が種々の抗インフルエンザ薬に適用可能かどうかを検証するため、結晶構造を有する複合体ノイラミニダーゼ阻害剤に対する薬剤耐性評価を行った。オセルタミビルについては、野生型株としてN1との共結晶構造である2HU4.pdb、薬剤耐性株(His274Tyr、Asn294Ser)については3CL0.pdbおよび3CL2.pdbを用いた。また、ホモロジーモデリングを行った後の構造が薬剤耐性評価に適しているのかを評価するため、結晶構造が存在している株に関しても同様に2HU4.pdbを鋳型としてホモロジーモデリングを行い、そこからドッキングシミュレーションを行って同様の評価を行った。 一方、ザナミビルやペラミビルについては、N1に対する共結晶構造が存在しないため、これらの変異を有する株をそれぞれ3CKZ.pdb, 2HTU.pdbを鋳型としたホモロジーモデリングにより作成し、これを用いて薬剤耐性評価を行った。 その結果、結晶構造およびモデリングを行った構造いずれの場合についても、薬剤耐性株は感受性株と比較してその期待値が低くなり、定性的な薬剤耐性評価が可能であることがわかった。また、ザナミビルに関しても、同様にいくつかの耐性変異に対して薬剤耐性評価が可能であることがわかった。その一方、ペラミビルとその耐性変異(His274Tyr)に関してはいくつか検討を重ねたところ、現在のところ良い分類はできておらず、これについては再精査する予定である。 抗HIV薬に関しては、プロテアーゼ阻害剤に対する同様の検討を行った。まず、その評価基準を定める必要があるため、発生配座数を20000として考え得る配座を全て発生させてドッキングを行い、同様の存在確率を計算した。本結果については現在のところ解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に関しては、予備検討の段階で実施したオセルタミビルに対する薬剤耐性評価に加えて、ザナミビルやペラミビルに対しても評価を行った。オセルタミビルに関しては、結晶構造とホモロジーモデリングによる構造両方を用いて評価することにより、本薬剤耐性評価法が結晶構造に依存しないことを示すことができ、本耐性評価法が広い範囲のウイルス株に対して適用できることを示唆した。また、ザナミビルに対しても種々の薬剤耐性変異に対して良好な評価ができたため、本手法が他の阻害剤に対しても拡張可能であることを示すことができた。一方ペラミビルに関してはまだ検討段階であるため、さらなる精査が必要である。さらに、抗HIV薬に関しては、現在プロテアーゼ阻害剤に対してその評価基準を検討中である。逆転写酵素阻害剤やインテグラーゼ阻害剤に対しては、またその評価が進んでいないものの、ノイラミニダーゼ阻害剤において一定の成果を示すことができたため、本年度に関しては比較的順調に研究が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度未完成であった点に加えて、HIVの薬剤耐性評価に焦点を当てて検討を行っていきたい。特に、本年度の研究で明確な評価ができなかったペラミビルの評価を最優先し、必要に応じて他の耐性変異に対する薬剤耐性評価も行う。また、HIVに関しては薬剤耐性評価の基準がまだ確定していないため、逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤の薬剤耐性評価を行う過程でこれらについても検討する。また、上記研究の進捗具合に応じて、種々のドッキングソフトを用いた検証や、未知変異が起こりうるサイトの同定など、25年度以降に予定している研究課題に取り組んでいきたい。 なお、本年度については計算機資源に若干の余裕が生じたため購入を行わず、今後検討予定である種々のドッキングソフトを用いた検証を行うために必要なソフトウェア(GOLD)を予め購入した。このため、本年度の研究費残額に若干の余裕が生じた。もし計算機資源の不足が生じた場合は、次年度以降に計算機を購入すると共に、データが膨大となりつつあるため、そのデータ保存用ストレージなども購入したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き情報収集及び成果発表を行うため、今年度も引き続き国内及び国際学会の旅費および参加費を中心に充当し、必要に応じて論文投稿料、印刷料、書籍等にも充当する予定である。
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