2013 Fiscal Year Research-status Report
未知の薬剤耐性予測を目的としたインシリコ薬剤耐性評価法の確立
Project/Area Number |
24790043
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川下 理日人 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00423111)
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Keywords | 薬剤耐性 / 抗ウイルス薬 / ドッキングシミュレーション / インフルエンザ / HIV / ホモロジーモデリング |
Research Abstract |
今年度は抗HIV薬に対する薬剤耐性評価を行うため、まずは非核酸系逆転写酵素阻害剤に対する検討を行った。薬剤耐性評価に用いる実験値としては、6種類の耐性変異が記載されているAndriesらの文献(Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 48, 4680-4687, (2004).)を用いた。また、使用した結晶構造のPDB IDは1VRT, 1JLF, 3M8Pであり、これ以外の変異体に関しては、先の結晶構造から該当部分を変異させることにより作成した。 ドッキングシミュレーションおよびホモロジーモデリングのソフトウェアにはMOE 2013を用い、配置関数をTriangle Matcher、スコア関数にLondon dGを用いて評価した後、上位10000ポーズを残し、これに対して発生配座数を10000として検討を行った。この結果、ドッキング結果として出力されたポーズ数はいずれも10000以下であったことから、出力ポーズ数に関してはこれで充分であると考えている。ここで出力された結果を用いて存在確率を計算したところ、一部の阻害剤については良好な結果が得られているものの、全体的な結果に関しては現在のところ解析中である。 その一方、前年度より行っている抗インフルエンザ薬の評価については、種々検討を行っているものの、論文としてまとめるには再現性および結果の評価が不十分であるため、現状停滞中である。これについても上記の抗HIV薬と同様の検討を行うことで、論文投稿を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当該課題を実施予定であった大学院生が進学不可能になったため、抗インフルエンザ薬の耐性評価については停滞している状態にあり、次年度に検討者を増員することによってこれを解決する予定である。当初は抗インフルエンザ薬の耐性評価を確定させてから、抗HIV薬の検討に移る予定であったが、前述のとおり検討者が不在となったため検討が進んでおらず、ひとまず抗HIV薬の評価を始めているという現状である。 その一方、逆転写酵素阻害薬の評価については順調に進んでいることから、これと抗インフルエンザ薬、ならびに検討中であるプロテアーゼ阻害剤の評価を加えることで、耐性評価予測における問題点および適用範囲などを考慮できると考えている。また、今年度は阻害剤-蛋白質複合体における水の影響を精査しており、非核酸系逆転写酵素阻害剤において結晶構造と3D-RISM法による溶媒の存在確率を計算した結果、本系については結合部位周辺に水の存在確率が多い部分はそれほど存在せず、水の影響は考慮しなくてよいという知見を得た。しかしながら、プロテアーゼ阻害剤のように、水分子の影響が確実に考えられる系も存在することから、今後耐性評価と溶媒との関わりについても引き続き検討したい。 また、今年度までの検討で、抗インフルエンザ薬や非核酸系逆転写酵素阻害剤の場合は、発生配座数を10000とすれば十分な出力数が得られた。しかし阻害剤の骨格構造が変化すると、取り得る配座数にも変化が生じる。それゆえ、今回検討した以外の骨格を有する阻害剤を用いた場合は、出力ポーズ数の設定を変更する必要があると考えられ、今後それについても検討する必要があろう。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究課題については、抗インフルエンザ薬の評価を確定させることに加え、HIVの薬剤耐性評価に焦点を当てて検討する。現在検討を行っている非核酸系逆転写酵素阻害剤に加えて、核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤など、本手法の拡張対象となる抗ウイルス薬は多岐にわたることから、時間の許す限りこれらについても検討を行う。 また、近年抗C型肝炎ウイルス(HCV)薬も臨床利用されるようになっているが、HCVもまた変異しやすいウイルスであることから、薬剤耐性変異が多く生じると予想できるため、合わせてこれらの薬剤耐性評価についても検討する。さらに、上記研究の進捗具合に応じて、種々のドッキングソフトを用いた検証や、未知変異が起こりうるサイトの同定など、これまで未検討に終わっている研究課題にも時間の許す限り取り組んでいきたい。なお、次年度の研究実施体制については、学部生が1名担当することとなったため、これまでの遅れを取り戻していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は研究メンバーが急遽減少したことにより研究が充分に進展しなかったことから、それに関連する学会発表等の回数が少なくなったため、その関連費用が計上されなかったこと、また書籍やソフトウェアに関しても同様の理由から購入が進まなかった。それゆえ、前年度に当てる予定であった費用については、今年度に一部繰り越して使用させていただく予定である。 繰り越した研究費に関しては、今年度は成果発表を行う必要があること、また情報収集も引き続き行う必要があることから、当方および学生の国内学会(構造活性相関シンポジウム、ウイルス学会など)及び国際学会(Antiviral Congressなど)にかかる旅費と参加費を中心に充当し、必要に応じて論文投稿料、印刷料、書籍等にも充当する予定である。
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