2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790048
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
關谷 瑞樹 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (70509033)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ATP 合成酵素 / FoF1 / ポリフェノール / 阻害剤 |
Research Abstract |
ATP 合成酵素はF1 部分で行われる ATP の合成・分解とFo 部分のプロトン輸送をサブユニットの回転により共役させる酵素である。F1 部分では、ATPの加水分解に伴い、回転軸である γ サブユニットが触媒活性を持つ β サブユニットと相互作用し、α・β に対して相対的に回転する。Piceatannol はスチルベン骨格を有する低分子化合物で、γ サブユニットと α・β サブユニットが作る空間に結合し、 γ の回転を阻害すると考えられる。そこで、piceatannol の阻害メカニズムと γ-β サブユニット間相互作用の回転に対する影響を明らかにすることを目的として一分子観察による詳細な解析を行った。 ATP の加水分解を駆動力としたサブユニットの回転は、金ビーズをプローブに用いて一分子ごとに観察した。γ サブユニットは 120度ごとにcatalytic dwell と呼ばれるミリ秒単位の停止をしながら回転する。Piceatannol は catalytic dwell を 10 倍延長し、 F1 の回転速度を低下させた。 また、熱力学的解析により、piceatannol の添加によって catalytic dwellから120度回転に移る際の活性化エネルギー、エンタルピー、エントロピーのいずれもが上昇した。したがって、piceatannol は γ と β が作る空間に結合することにより、サブユニット間相互作用を増加させ、ATP 加水分解後の回転を阻害することが示唆された。 研究成果は Journal of Biological Chemistry (2012, 287, 22771-22780) にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として初年度に予定した実験はすべて行い、成果は Journal of Biological Chemistry (2012, 287, 22771-22780) にて報告した。次年度に予定している変異F1やポリフェノール類縁体を用いた実験についても一部初年度のうちに着手している。次年度についても予定通り達成できる可能性が高いと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.結晶構造から薬剤の結合に関与すると考えられるアミノ酸残基に変異を導入した系統的変異体を作製する。ポリフェノール類はF1のα、β、γサブユニットに結合しており、αではGly281、Arg282、Glu283、βではSer263、Ala264、Val265、Gly266、γではAla270、Thr273、Gln274、Thr277、Glu278が結合に重要な候補と考えられる。これらのアミノ酸を置換したF1にポリフェノール類を添加したときの酵素活性・回転速度を評価し、薬剤の結合に重要なアミノ酸残基を明らかにする。また、変異大腸菌に対するポリフェノール類の抗菌活性の変化から、ポリフェノール類の抗菌活性におけるATP合成酵素の寄与を検討する。 2.ポリフェノール類の構造を変換し、野生型酵素や変異酵素に対する阻害機構を明らかにする。得られた結果から構造活性相関を検討し、F1 の高次構造と対応させ、ポリフェノール類の結合様式と阻害機構を明らかにする。同時に強力な阻害作用を持つ化合物を探索する。対象とする化合物は市販の化合物ライブラリーを活用するとともに、東北大学大学院薬学研究科の岩渕好治教授より合成・供給されることになっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
阻害剤のスクリーニングの実施にあたってはスクリーニング用サンプルを購入する。また、一分子観察に用いる ATP 合成酵素の調製には大規模な大腸菌の培養、担体を使った精製が必要であり、観察には金ビーズを大量に消費する。したがって、本研究経費の多くは消耗品の購入に充てる。 また、一分子観察のデータ解析には多くの労力が必要なため、研究補助員に解析を依頼し、謝金を支払う。 さらに、研究成果を学会で発表するため旅費を使用する。
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Research Products
(5 results)