2012 Fiscal Year Research-status Report
脳腫瘍擬似血管を標的とした新規DDS治療薬の開発と治療への応用
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24790050
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
野村 鉄也 帝京大学, 薬学部, 助教 (40582854)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / 擬似血管 / DDS |
Research Abstract |
本申請課題では、難治性のがんとして知られている脳腫瘍の中でも極めて予後不良であることが報告されているグリオーマに対する新規治療法の開発を目的としている。特に近年、腫瘍増殖や転移に関与することが明らかとなってきたがん細胞由来の擬似血管構造(Vasculogenic Mimicry; VM)に着目し、VMを標的とした免疫療法の開発を目指している。その点、本年度は脳腫瘍グリオーマ細胞である203G細胞をマトリゲル上で3次元培養を行うことで、血管様のVM管腔構造を形成することを明らかとした。またファージディスプレイ法を駆使した脳腫瘍における抗VM抗体の単離を目指した検討として、このVM様構造を抗原たんぱく質として抽出して用いる免疫抗体ライブラリの創出を検討した。VMを隔週で2回免疫したマウスより回収した血清を用いてIgGの抗体価測定を行ったところ、免疫抗原特異的な抗体価の上昇が確認できた。次年度は、免疫マウスの脾臓より抗体遺伝子ライブラリを構築し、特異的抗体の単離を目指した検討を行っていく予定である。 また免疫療法の効果を検討するためのマウスグリオーマ細胞同所移植モデルを作成するにあたり、その効果を簡便に評価するための手法として、ルシフェラーゼ遺伝子発現グリオーマ細胞の樹立を試みた。ルシフェラーゼ搭載プラスミドを203G細胞に対してリポフェクチンを用いて導入し、抗生物質によるセレクションを行った。その後、限界希釈法によりモノクローン細胞を樹立した。この細胞のルシフェラーゼアッセイの結果から203G細胞への遺伝子導入できたことが明らかとなり、安定発現株の作成に成功した。本年度は、この細胞を用いてマウス同所移植モデルを作成し、治療効果を明らかとするための評価系として用いていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画の順序とは異なっているものの、全体の実験計画としては順調に進んでいると考えている。 まず抗原としては、in vitroにおいてマトリゲル上で脳腫瘍細胞を培養することによって形成した管腔構造をVMとして用いることができることを本年度中に明らかとした。また、このVMをモデル抗原として用いた抗体の作成にも着手することができた点は特筆すべき事項である。具体的には、VM抗原をマウスに免疫することによって、VMに対する血清中の抗体価が上昇することを確認した。次年度はこれらマウス脾臓より回収した遺伝子をもとに、抗体遺伝子ライブラリを作成してファージディスプレイ法を駆使した抗体の単離・同定に向けた検討を行っていける状態にある。 また治療効果を検討するにあたっては、動物モデルによる脳腫瘍の効果を定量的に評価する必要がある。その点申請者は、その際の有用なツールになると考えられるルシフェラーゼ遺伝子導入細胞の作成に成功するなど、治療法を開発するための評価系も確立しつつあり、次年度への足がかりになると考えている。 以上のように、VMを標的とした抗体の創出・免疫療法を確立するための検討および評価系の構築に向けた検討が並行して進められていることから、研究計画全体として予定通りに進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当該年度にVMに対する抗体価の上昇が確認されたマウスより脾臓を摘出して、その中からTotal RNAの回収およびmRNAの精製を行う。さらに、抗体の可変領域であるVL, VH遺伝子のクローニングを行い、リンカーにより連結した一本鎖抗体ライブラリを創出する。一億種類以上もの種類からなる抗体ライブラリの中から、ファージ表面提示法を駆使してVMに対する特異的結合抗体の単離を目指す。本検討にあたっては、作成したファージ抗体ライブラリと標的細胞の結合性を利用したパンニングという方法を利用して高親和性抗体クローンの濃縮を行う。ただし本方法では、VM構造ではなく、203G細胞そのものへの結合性を示す抗体が得られてしまう可能性も想定される。したがって、予め203G細胞とファージ抗体を結合させて、203G細胞由来のたんぱく質を認識してしまうファージ抗体を取り除いた後に、VM構造を形成した203G細胞と結合させることで、VMを特異的に認識する抗体を濃縮するサブトラクションパンニングを行う。得られた抗体は、VMに対する特異的抗体であると予想されるため、抗原を同定することによって、VMの標的とした治療の創薬ターゲットとなる分子の探索にも繋がると期待できる。 また一方で並行して、免疫に用いたVM抗原を用いてワクチン療法を試みることで、VMの治療標的としての有用性を明らかとする予定である。具体的には、ワクチン投与による細胞性免疫の誘導能を血清抗体価や血清中サイトカイン、リンパ組織中のリンパ球ポピュレーションを解析するなどの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、キャンパスの移転に伴う準備や作業が生じたこと、また当初の動物実験計画を次年度の計画と入れ替えて遂行したため、実験動物購入費が抑えられ、支出に関して予定していた予算の一部を繰り越すこととなった。次年度には、VMを標的としたワクチン療法の開発および確立した治療法の有用性を評価するために動物モデルを用いた検討が必要となり動物の購入費として予算を計上する。また抗体ライブラリの作成およびスクリーニングのために必要な遺伝子関連試薬の購入、および単離した抗体をたんぱく質精製するための試薬購入が必要となるために予算を計上する。 またこれら成果を学会等に参加して報告するための予算としても使用予定である。
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