2012 Fiscal Year Research-status Report
プロスタグランジンD合成酵素の分子内SS結合形成による睡眠誘発物質放出機構の解明
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24790055
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
島本 茂 近畿大学, 理工学部, 助教 (00610487)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素 / プロスタグランジンD / NMR / ITC |
Research Abstract |
リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)は、他に類を見ない“輸送体型酵素”である。これまで、L-PGDSは睡眠調節薬開発のターゲットとして多くの研究が為されてきたが、この酵素の律速となっているPGD2放出(受容体との受け渡し)過程のメカニズムは全く明らかになっていない。本研究では、L-PGDSのPGD2認識機構と放出機構を熱力学的および構造生物学的に明らかにしていくことを目的としている。平成24年度では、物理化学的実験には、大量かつ高純度の蛋白質試料が必要になる為、野生型(WT)L-PGDSの大量発現および精製法の検討を行った(研究実施計画-(1))。従来の精製法に改良を加え、大腸菌1 L培養当たりにして約10倍(20 mg protein/1 L培養液)の高収量でWT L-PGDSを獲得する方法を確立できた。そこで、さらに等温適定型熱測定法(ITC)にて、L-PGDSとプロスタノイドの相互作用解析を行った(研究実施計画-(2))。すでに、WT L-PGDSと基質誘導体U-46619(PGH2 analog)、生成物PGD2、および、他2化合物との相互作用解析を完了した。また、さらにL-PGDSの変異体とプロスタノイドの相互作用解析も行うことができた。その結果、従来考えられていたL-PGDSと基質/生成物の1:1相互作用モデルとは異なる、1:2結合モデルで相互作用することが明らかになった。また、活性中心のCys65が、生成物PGD2との相互作用にも非常に重要な役割を果たしていることが示された。これらの結果から、従来の酵素反応モデルとは異なった、新たなL-PGDS酵素反応および生成物放出機構のモデルが構築できる可能性が出てきた。 さらに、平成25年度に行う予定だったL-PGDSと基質誘導体の複合体のNMR測定を行い、NMRシグナルの帰属まで完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画していた実験に関しては、ほぼ全て完了できた。(1)物理化学的相互作用解析に必要量の蛋白質サンプルの発現精製系の構築、(2)等温適定型熱測定による相互作用解析、さらに、(3)変異体を用いた詳細な相互作用解析を遂行し、本研究の目的である基質相互作用や生成物の相互作用に関する新たな知見を多く得ることができた。また、従来予想していたこと以上に重要な知見が得られた為、平成25年度にさらなる研究の発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、L-PGDSと生成物PGD2との複合体構造解析を行っていく。また、平成24年度の結果から、基質/生成物は、L-PGDSの2つの領域に2分子結合することが明らかになった。結合サイトの一つは活性中心Cys65付近であることも明らかになった。しかし、もう一つの結合サイトは精査されていない。そこで、L-PGDSの活性中心変異体(C65A)を用いれば、生成物とのもう一つの結合サイトが明らかにできる。C65A L-PGDSとPGD2複合体の立体構造解析も進めていく。また、構造情報が得られた場合、それを基に結合部位変異体を遺伝子操作によって作製し、ITCによるプロスタノイドとの相互作用解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、複数の変異体によるITC相互作用解析およびNMR構造解析を進めていく予定である。その為に、培養後の大腸菌を破砕して蛋白質サンプルを迅速に回収する為に、小型の超音波破砕機(30万円程度)を計上する。 また、平成25年度のNMR構造解析の準備実験の為、平成24年度にNMR用蛋白質選択ラベル化試薬(0.5 gで40万円程度)を研究費に計上していたが、国内外の在庫が枯渇していた為、購入できなかった。本年度では、入手しやすい試薬を用いた同位体ラベル化を行う。さらに、遺伝子操作や大腸菌培養および蛋白質の精製に必要な試薬・器具類の購入の為、最低70万円程度必要である。 平成24年度で得られた研究成果を学会等で報告したり、研究打合せに行ったりする為の旅費等として30万円を計上する。
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Research Products
(1 results)