2012 Fiscal Year Research-status Report
X線結晶解析法及びX線溶液散乱法を用いた難分解性動物タンパク質分解機構の解明
Project/Area Number |
24790057
|
Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
中野 博明 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (10378789)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | X線結晶解析 / タンパク質 / X線溶液散乱 / CD / コラーゲン / 地球環境 / 基質認識 |
Research Abstract |
難分解性動物タンパク質およびその分解物は、細胞発生・接着・保護、ガン浸潤、β-アミロイド形成などに関わる生体機能分子として、生体内で重要な役割を果たしていることが明らかとなりつつある。このように、再生利用の価値が高いことが認知されているにもかかわらず、これまで分解が困難であり分解生成物の調製が難しいことなどの理由から難分解性動物タンパク質の再生利用につながる研究は行われてこなかった。今回、京都府立大学の研究グループとともに、コラーゲン等の難分解性動物タンパク質を分解する酵素をさきに単離したGeobacillus collagenovorans MO-1株から2種類、Aneurinibacillus属細菌AM-1株から1種類の計3種類発見し、これらをPzペプチダーゼA、B(PzA, PzB)、およびAM-1と命名した。 平成24年度は、これら計3種類の、難分解性動物タンパク質分解酵素について、それぞれ結晶化を行いX線回折実験に供することのできる結晶を得ることができた。これらの結晶をSPring-8及びPFの放射光ビームラインでデータ測定することにより、Pz-B及びAM-1についてはセレノメチオニン化タンパク質結晶のSeのK吸収端を用いたMAD法により、それぞれ1.8Å、2.3Å分解能で結晶構造を決定することが出来た。また、Pz-Aに関しては、類似のタンパク質の立体構造が既に報告されているので、その構造を用いた分子置換法により、1.9Å分解能での結晶構造を決定することが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PzA、PzB並びにAM-1の結晶は研究実績の概要に述べたように、得ることができた。ただし、これらの結晶が与える分解能は2Å前後であるため、アミノ酸変異の導入やリガンド・阻害剤との複合体形成によって分解能を向上させる工夫を講じているところである。ただし、結晶が既に得られている状況から鑑みて、早期に立体構造解析を完了できると考えられる。またJAXAが主宰する、「宇宙環境を利用した高品質タンパク質結晶生成と精密立体構造の解析」プロジェクトに応募した結果、これら3つのタンパク質は宇宙での高品質結晶化実験の候補タンパク質に既に採択され、第4回実験ではPzBの非常に良質なPzB結晶が複数生成した。SPring-8でX線回折実験を行ったところ予備的ではあるが1.5Å分解能を少し超える程度まで反射がみられ、その立体構造を精密化中である。また、PzA、PzB並びにAM-1の3種類のタンパク質及び、その阻害剤との複合体の計6種類のタンパク質は、第5回実験及び第6回実験での重点課題タンパク質として選定され、第5回実験では、PzBを除く計4種類のサンプルについて結晶が得られ、回折実験は未実施であるが、高分解能の精密なデータを得ることが期待できる。また、ひきつづき地上での結晶化実験と並行して、宇宙環境を利用した結晶化実験も行う。以上の状況から鑑みて、一年目の最大の課題であった、3種類のタンパク質のX線結晶構造解析による立体構造解析については概ね目処がついている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)PzA、PzB並びにAM-1の高分解能X線結晶構造解析 すでに、これら3つのタンパク質について結晶化は出来ている。そこで、解離定数がμM未満の各種基質アナログや阻害剤との複合体結晶を調製し分解能を向上させることを計画する。適切な結晶が得られたら、立体構造を決定する。基本的に構造解析(位相決定)は分子置換法を用いるので順調に進むものと期待される。 (2)立体構造に基づいた基質認識部位の同定 得られた高分解能のPzA、PzB並びにAM-1の立体構造を解析して、基質の輸送経路や基質認識に関わると予想される残基に部位特異的な変異を導入して、活性の変化を追究する(すでに並行して進行中であり、有望な変異体がいくつか見つかっている)。また、変異の導入と立体構造変化との関係を探るため、注目すべき変異型については、結晶解析を行ってアミノ酸置換が立体構造に及ぼす影響を明らかにする。 (3)国際宇宙ステーションでの高品質な結晶の生成と、高分解能構造情報の取得 これら3種類のタンパク質は宇宙航空研究開発機構が主宰する「きぼう」を用いた宇宙での無重力空間を利用した高品質タンパク質結晶化実験(第6回)の搭載候補タンパク質に選ばれている。宇宙で結晶が得られた場合には、より高分解能の回折データを収集することが期待できるので、それを基に原子レベルでの基質反応機構の構造生物学的基盤を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)PzA、PzB並びにAM-1の高分解能X線結晶構造解析:昨年度に引き続き、高分解能のX線結晶構造解析を行う。そのために必要な、培養精製試薬、結晶化試薬、複合体を形成する化合物、等の消耗品の購入を主な用途とする。また、現在使用しているPCが経年劣化で現在販売されているものと比較すると計算速度が遅くなっていることが否めないので、新規にPCを購入することを検討している。 (2)立体構造に基づいた基質認識部位の同定:立体構造が明らかになれば、基質認識部位周辺のアミノ酸残基の点変異体を作製し、それらの構造解析や、溶液散乱、CD、活性測定等のデータから基質認識部位の特定を行う。従って、変異体作製のための遺伝子操作キットや、活性測定に必要な試薬等の消耗品の購入を主な用途とする。 (3)国際宇宙ステーションでの高品質な結晶の生成と、高分解能構造情報の取得:昨年度に引き続き、宇宙での結晶化を並行して行う。結晶が得られた場合には、SPring-8等の放射光施設でデータ測定を行うので、そのための結晶をハンドリングする治具等の消耗品等の購入を主とした用途とする。
|
Research Products
(1 results)
-
[Journal Article] Crystallization and preliminary X-ray crystallographic analysis of Pz peptidase B from Geobacillus collagenovorans MO-1.2012
Author(s)
Nakano, H., Hosokawa, A., Tagawa, R., Inaka, K., Ohta, K., Nakatsu, T., Kato, H. and Watanabe, K.
-
Journal Title
Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun.
Volume: 68
Pages: 757-759
DOI
Peer Reviewed