2012 Fiscal Year Research-status Report
ERK5による新しい神経機能調節の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
24790063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小原 祐太郎 山形大学, 医学部, 准教授 (40400270)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経栄養因子 / NGF / ERK5 / MAPK |
Research Abstract |
われわれは、マイクロアレイ法により神経系でERK5選択的に発現が誘導される多数の遺伝子を同定したが、平成24年度はその中でもp36遺伝子に焦点を当てて研究活動を行った。その結果、ERK5により発現が誘導されるp36をsiRNA法でノックダウンすると、カテコールアミン生合成酵素の一つであるチロシンヒドロキシラーゼタンパク質の発現が大きく抑制されること、さらにドパミンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンの生合成も抑制されることが明らかとなった。ERK5をノックダウンしても同様の表現型が示されることから、神経細胞の分化の過程においてERK5/p36のシグナル伝達経路は、神経伝達物質の生合成といった神経機能を強化する役割を担っていることが示唆された。一方、p36遺伝子をノックダウンしても、あるいは過剰発現しても神経のモデル細胞であるPC12細胞の神経突起の伸展には影響を与えなかったことから、p36は神経細胞の形態的な分化には関与しないことが示唆された。現在、p36のカテコールアミン生合成を促進するメカニズムを詳細に検討している。 また、ERK5とERK1/2のクロストーク機構についても検討した。免疫沈降を行うとERK5とERK2は共沈し、両者が会合していることが予想された。また、MEK5によりERK5のT-E-Yモチーフのスレオニン残基とチロシン残基がリン酸化され、活性化したERK5はさらに自身のC末端に存在する複数のセリン・スレオニン残基を自己リン酸化する。その自己リン酸化部位を認識するリン酸化抗体を独自に作製して個々の部位のリン酸化レベルを検討していくと、ERK5のThr723はERK5の自己リン酸化ではなく、ERK1/2によりリン酸化されることが新たに判明した。今後は、このERK1/2によるERK5 Thr723のリン酸化の生理的な役割・意義を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は新しい研究室に異動したため、研究計画を作成した時点と研究環境が大きく異なることとなった。現在の研究室においても研究計画を十分に遂行できる研究環境ではあるが、異動のため当初の見込みより研究計画が“やや遅れている”のが実情である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き研究計画をもとに研究課題を遂行していく。計画の進行が遅れている部分があるが、今後必要な機器を購入する予定であり、遅れは取り戻せると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は新しい研究室に異動したため、研究計画を作成した時点と研究環境が大きく異なることとなり、研究計画の遂行がやや遅れることとなった。そこで、一部の計画を次年度(25年度)に行うことにしたため、次年度に使用する研究費が発生した。平成25年度は、ERK5依存的に誘導される遺伝子のmRNAレベルを定量するために必須であるリアルタイムPCR用サーマルサイクラー(ロッシュ製、ライトサイクラー・ナノ)を設備備品費として計上する(定価139万円)。また、薬理学的・生化学的・分子生物学的な実験に使用する試薬や細胞培養に必要な培養器具を購入するため、妥当と思われる物品費(消耗品額)を60万円計上した。さらに、本研究課題で得られた成果を国内外の学会で発表するために旅費(41万円)を、論文投稿前の英文校閲を行うために“その他”に10万円それぞれ計上した。
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