2012 Fiscal Year Research-status Report
定量的プロテオミクスで解き明かすミトコンドリア膜の透過性遷移の分子機構
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24790076
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山本 武範 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 助教 (80457324)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / プロテオミクス / 透過性遷移 |
Research Abstract |
本研究は酵母ミトコンドリアを用いた定量的プロテオミクス解析によりアポトーシス誘導のマシナリーであるミトコンドリア膜の「透過性遷移」の分子機構を解明することを目的とする。この目的に向け、初年度はまず、①種々の酸化剤を用いて酵母ミトコンドリアに透過性遷移を誘起させるための実験条件の検討、②透過性遷移を誘起したミトコンドリアにおいて酸化されたタンパク質を精製するための基礎的検討を行った。 まず、酵母ミトコンドリアに効率的に透過性遷移を誘起できる酸化剤を探索するため、代表的な酸化剤である過酸化水素、メナジオン、アセト酢酸、パラコートを酵母から単離したミトコンドリアに添加した。その結果、メナジオンとパラコートを添加した場合に、酵母ミトコンドリアの顕著な膨潤およびそれに伴うシトクロムcの放出が認められた。これらのことから、メナジオンとパラコートを用いて酵母ミトコンドリアに透過性遷移を誘起できることが明らかになった。 続いて、酵母ミトコンドリアにおいて酸化修飾を受けているタンパク質種を同定するための予備検討を行った。酸化修飾タンパク質を同定するためには、ミトコンドリアタンパク質の中から酸化タンパク質を精製する必要がある。本研究では酸化修飾の中でも特にカルボニル修飾に注目した。カルボニル化を受けているタンパク質を精製するため、タンパク質内のカルボニル基をビオチン化し、これをモノアビジンカラムで選択的に回収する精製系を検討した。検討の結果、ミトコンドリアタンパク質からカルボニル化を受けているタンパク質を効率的に精製するための諸条件を決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、透過性遷移を誘起したミトコンドリアにおいて酸化修飾を受けているタンパク質を同定するための実験において重要な基盤となる、「透過性遷移の誘導に使用する酸化剤の選択」、「ミトコンドリアからの酸化タンパク質の精製」、という二つの問題を解決することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度に決定した二つの酸化剤メナジオンとパラコートによって透過性遷移を誘導した酵母ミトコンドリアにおいて酸化(カルボニル化)されているタンパク質を定量的プロテオミクス解析によって同定する。定量的プロテオミクス解析は安定同位体標識アミノ酸培養法(SILAC法)を用いて行う。これにより、透過性遷移を誘起したミトコンドリアで選択的に酸化されるタンパク質を同定できた場合には、そのタンパク質が透過性遷移のレギュレーターである可能性が考えられる。このことを検証するため、このタンパク質をコードする遺伝子の欠損株を構築し、この株から単離したミトコンドリアにおいて透過性遷移の誘導能を調べる。透過性遷移が誘起されないミトコンドリアを有した遺伝子欠損株を探索することにより、透過性遷移の制御に関与する遺伝子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、初年度と同じく酵母の培養および酸化タンパク質の精製に関わる試薬類の購入に加え、SILAC法に用いる安定同位体標識用試薬や質量分析に必要な試薬類、また遺伝子欠損酵母の構築に必要なDNA実験試薬の購入を検討している。また、実験遂行のための情報収集を目的として、実験のテクニカルトレーニングや学会への参加を計画しており、相応額の旅費を積算している。
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Research Products
(15 results)