2013 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ古典的活性化のキーとなる小胞体アミノペプチダーゼの分泌とその制御
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24790083
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
後藤 芳邦 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (90455345)
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Keywords | アミノペプチダーゼ / マクロファージ / 貪食 / LPS / トール様受容体 / エキソソーム / 一酸化窒素 / サイトカイン |
Research Abstract |
1.ERAP1の分泌機構の解析 前年度に引き続きERAP1の分泌機構のさらなる解明を目指した。その結果、分泌型ERAP1がマクロファージから分泌されたエキソソームと結合していることを明らかにした。すなわち、ERAP1が遊離状態で分泌されるのではなく、エキソソーム構成成分として分泌されることが示唆された。次にERAP1のエキソソーム結合ドメインを明らかにするために、様々な領域の欠失変異体ERAP1を調製し、各変異体とエキソソームとの結合試験を行った。その結果、ERAP1分子中央の欠失がエキソソームとの相互作用を著しく低下させることが明らかになった。 2.ERAP1局在型エキソソームのマクロファージ活性化における効果 LPSで活性化させたマウスマクロファージ株RAW264.7細胞の培養上清からエキソソームを超遠心法により分画し、得られたエキソソーム画分を未活性化RAW64.7細胞に処理することで本エキソソームのマクロファージ活性化に対する効果を貪食活性を指標に検討した。その結果、ERAP1局在型エキソソームはLPS阻害剤存在下でもLPS刺激時と同程度のRAW264.7細胞活性化能を示した。この活性化効果は遊離型ERAP1を直接マクロファージに処理した場合の3-10倍もあり、またアミノペプチダーゼ阻害剤により1/2-1/3程度抑制された。一方でERAP1非局在型エキソソームを用いた場合、マクロファージの活性化はほとんど認められなかった。これらの結果からERAP1がエキソソームに存在する分子と協調的に作用してマクロファージを活性化させていることが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに得られた結果(ERAP1の分泌機構)については、すでにJournal of Immunology誌への掲載が決定した。 さらに今回、まったく予想外であったがERAP1がエキソソームとして分泌することを示唆する知見を得た。また上記のようにERAP1局在型エキソソームがアミノペプチダーゼ活性を介してマクロファージ活性化効果を示すことを明らかにした。 上記のように予想外の新規知見を得たことで当初の実験計画より若干食い違いが生じてきたが、これは研究が前進している結果であり、本研究の目的であるERAP1のマクロファージの古典的活性化への関与を明らかにすることに大きく近づいたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージ活性化時にいかにしてERAP1がエキソソームと合流するか、すなわち、ERAP1の小胞体局在と分泌のスイッチング機構を明らかにする。このスイッチングにはERAP1の結合タンパク質が関与すると考えている。そこで、ERAP1含有エキソソームから免疫沈降によりERAP1結合タンパク質を単離し、shotogun解析やMS/MS解析により同定する。特に前年度明らかにしたERAP1の小胞体貯留ドメインがキーになっていると考えられるので、本ドメインの欠失変異体や組み換え型小胞体貯留ドメインを用いる。 また、マクロファージへのERAP1局在型エキソソーム処理はERAP1単独処理時の効果に比べて活性化を大きく惹起すると考えられる。これまで貪食を指標に検討したが、本年度は一酸化窒素産生やサイトカイン発現量、浸潤能についても検討し、ERAP1局在型エキソソームのマクロファージ活性化の全体像を明らかにしていく。 昨年度ERAP1ノックアウトマウスを手に入れた。そこで本実験計画の総括としてERAP1ノックアウトマウスを用いてin vivoレベルで、ERAP1の分泌がマクロファージの活性化に及ぼす影響について検討する。具体的には、野生型マウスあるいはERAP1ノックアウトマウスからマクロファージを採取し、それをGFP発現大腸菌などを感染させたERAP1ノックアウトマウスに移植する。数日間の飼育を経てマウス体内に存在する大腸菌の菌体数を腸管切片や血液中の蛍光を指標に解析する。また、野生型およびERAP1ノックアウトマウス血液中のERAP1量や一酸化窒素量を解析し、ERAP1分泌量と大腸菌数、一酸化窒素濃度の相関関係を明らかにする。
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