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2012 Fiscal Year Research-status Report

Dーアミノ酸代謝酵素の生理機能の解明:生殖と神経伝達におけるDーアミノ酸の役割

Research Project

Project/Area Number 24790086
Research InstitutionKitasato University

Principal Investigator

片根 真澄  北里大学, 薬学部, 講師 (90383653)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
KeywordsD-アミノ酸 / D-アミノ酸オキシダーゼ / D-アスパラギン酸オキシダーゼ / 線虫 / D-アスパラギン酸 / D-セリン / D-アラニン / D-グルタミン酸
Research Abstract

ヒトを含めた生体内には、D-アミノ酸を機能分子とする新規なバイオシステムが存在する。我々は、その分子論的解析を行うため、遺伝学的・分子生物学的解析に優れたモデル生物である線虫(Caenorhabditis elegans)を用いて研究を行っている。D-アミノ酸を立体特異的に分解する生体内酸化酵素として、中性・塩基性 D-アミノ酸を基質とする D-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)と、酸性 D-アミノ酸を基質とする D-アスパラギン酸オキシダーゼ(DDO)が知られている。以前に我々は、線虫には 1 種類の DAO と 3 種類の DDO(DDO-1、-2、-3)をコードする機能的遺伝子が存在することを明らかにした。また、これらの遺伝子それぞれに欠失のある変異株では、D-アミノ酸の体内含量が上昇するとともに産卵数の低下などが認められることを明らかにした。
本年度は、DAO および DDO 欠損変異株で認められた産卵数の低下の原因を明らかにするために、まず始めに、これらの変異株および野性株を用いて、子宮内に存在する受精卵の数、交配により産まれる子孫の数、および受精率を解析した。その結果、これらの変異株では卵子の形成異常(数や質の低下)が生じていることが示唆された。線虫の産卵行動は、コリン作動性神経伝達による調節を受けることが知られている。そこで次に、産卵行動と同様にコリン作動性神経伝達による調節を受ける運動量を解析した。その結果、DDO-3 変異株では運動量が上昇していることが明らかになった。引き続き、アセチルコリン分解酵素の阻害剤やアセチルコリン受容体のアゴニストといった薬剤に対する感受性を解析した。その結果、コリン作動性の神経伝達が、DDO-3 変異株ではプレシナプスの異常により亢進しており、DDO-2 変異株では体壁筋の異常により低下していることが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

交付申請書に記載したように、本研究の目的は線虫 DAO および DDO の生理機能を解明することであり、また、それに関連する D-アミノ酸の役割を明らかにすることである。具体的には、次の 3 点に焦点を当てる。(1)DAO および DDO 欠損変異株と野性株の交配試験を行い、変異株で認められた産卵数の低下といった表現型が精子と卵子のどちらの形成異常によるのかを解析する。(2)線虫の産卵行動はアセチルコリン伝達やセロトニン伝達などにより調節されているので、これらの変異株を用いて薬剤感受性解析や主に神経伝達を解析する行動試験を行う。(3)これらの変異株と野性株を用いた DNA マイクロアレイ解析を行い、変異株で観察された表現型に至る分子経路を同定し、その経路における DAO や DDO、および D-アミノ酸の関わりを解析する。これらの項目のうち、本年度は(1)と(2)を計画して実施した。
「研究実績の概要」に記載したように、(1)に関しては、DAO および DDO 欠損変異株と野性株を用いて、子宮内に存在する受精卵の数、交配により産まれる子孫の数、および受精率を解析した。その結果、これらの変異株では卵子の形成異常(数や質の低下)が生じていることが示唆された。また、(2)に関しては、運動量試験、排泄行動試験、および機械刺激感受性試験といった行動解析のほか、アセチルコリン分解酵素の阻害剤やアセチルコリン受容体のアゴニストといった薬剤に対する感受性を解析した。その結果、線虫における D-アミノ酸の代謝がコリン作動性の神経伝達と密接に関与していることが示唆された。
以上の内容から、本年度における研究の進展はおおむね順調であると考えられた。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の主な推進方策として、(1)DAO および DDO 欠損変異株と野性株の DNA マイクロアレイ解析、および(2)同定した代謝経路における DAO と DDO、および D-アミノ酸の関与に関する研究の 2 項目を計画している。(1)では、変異株で発現変動している遺伝子群を DNA マイクロアレイ解析により同定する。(2)では、(1)で同定した遺伝子群が関わる代謝経路に注目し、代謝産物の定量やこの経路への関わりが深いと思われる表現型の解析を行う。これらの解析により、注目した代謝経路における DAO と DDO、および D-アミノ酸の新規な生理機能が詳細に判明すると考えられる。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

研究費を使用して次年度に展開させる研究として、「今後の研究の推進方策」に記載したように、DAO および DDO 欠損変異株と野性株の DNA マイクロアレイ解析を計画している。すなわち、常法に従って同調培養した変異株と野性株から全 RNA を抽出する。それに引き続く cDNA の合成、cDNA を鋳型としたビオチン化 cRNA の合成、Affymetrix 社製 GeneChip アレイへのハイブリダイゼーション、蛍光強度のスキャニング、および得られた発光量の数値化等を株式会社バイオマトリックス研究所(http://www.biomatrix.co.jp/)に委託する。これらの解析後に送付されてくるデータを用いて、変異株で発現変動している遺伝子との関与が高いと思われる代謝経路を Gene Ontology 解析により同定する。
また、DNA マイクロアレイ解析に引き続く研究として、次の研究を計画している。すなわち、DNA マイクロアレイ解析で同定した遺伝子群が関わる代謝経路に注目し、代謝産物の定量やこの経路への関わりが深いと思われる表現型の解析を行う。これらの解析により、同定した代謝経路における DAO と DDO、および D-アミノ酸の関与の詳細が明らかになると思われる。

  • Research Products

    (2 results)

All 2012 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Spatiotemporal localization of D-amino acid oxidase and D-aspartate oxidases during the development in Caenorhabditis elegans2012

    • Author(s)
      Yasuaki Saitoh, Masumi Katane et al.
    • Journal Title

      Molecular and Cellular Biology

      Volume: 32 Pages: 1967-1983

    • DOI

      10.1128/MCB.06513-11

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 線虫の生殖における D-アミノ酸分解酵素の機能解析

    • Author(s)
      齋藤 康昭、片根 真澄、関根 正恵、古地 壯光、坂本 太郎、井上 貴雄、新井 洋由、中川 靖一、本間 浩
    • Organizer
      第 8 回 D-アミノ酸研究会 学術講演会
    • Place of Presentation
      大津

URL: 

Published: 2014-07-24  

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