2012 Fiscal Year Research-status Report
OX40リガンドを分子標的にした難治性喘息治療法の開発
Project/Area Number |
24790093
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
大友 隆之 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (90463108)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / アレルギー / T細胞 |
Research Abstract |
喘息治療ガイドラインの普及と薬物療法の進歩により、軽度~中軽度の喘息症例に対して吸入ステロイド薬が十分にコントロール可能となってきた。しかしながら、重症・難治性喘息症例においては高容量吸入ステロイドに加えて経口ステロイド、テオフィリン、抗ロイコトリエン薬、長時間作用型β刺激薬等多種類の治療薬を併用してもなお満足な治療効果が得られていない。このことから重症・難治性喘息症例に早急な対策を講じる必要があるが、その多くはステロイド抵抗性であるため、現行の薬物治療では十分な効果が期待できない。喘息重症・難治化のメカニズムの1つに、in vivoのT細胞レベルでステロイド抵抗性が明らかになっている。T細胞活性化にはT細胞受容体(TCR)を介する抗原特異的なシグナルと共刺激分子を介する抗原非特異的シグナルが必要であるが、申請者らのin vitroの実験から、TCRシグナルのみの活性化と比較して、TCRシグナルと共刺激シグナル両方を活性化するとステロイドに対する抵抗性が高くなるという結果が得られている。そのため、共刺激シグナルの遮断はT細胞のステロイド抵抗性を改善し、重症・難治性喘息に効果を示すことが期待される。 OX40リガンド(OX40L)は抗原提示細胞上に発現している共役分子の1つで、T細胞上に発現しているOX40と結合して共刺激シグナルの活性化、活性化T細胞の生存や増殖を増強することが知られている。OX40Lトランスジェニックマウスでは、CD4陽性記憶T細胞数が増加し、その機能も著しく亢進することが分かっている。そこで本研究では、OX40/OX40Lを介した共刺激シグナルがT細胞のステロイド抵抗性に与える影響を検証する目的で、OX40LKOマウスで喘息モデルを作製して検討する。このことにより、難治性喘息治療薬開発に向けて、分子標的としてのOX40ならびにOX40Lの有用性を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. OX40L欠損マウスは、低容量ステロイドで気道過敏性亢進が抑制された。 T細胞依存性喘息モデルを作製して研究を行なった。OX40Lノックアウトマウスに鶏卵白アルブミン(OVA)反応性T細胞クローンを移入、OVAチャレンジして非アトピー型喘息反応を誘発した。気道過敏性は Buxco社の非拘束型全身プレチスモグラフィーを用い、メサコリン塩酸塩を吸入させた時の気道抵抗を測定して評価した。事前にデキサメタゾン(Dex)を投与したOX40Lノックアウトマウスでは気道過敏性亢進が減弱していた。一方、Dexを事前に投与しなかったマウスではOX40L欠損の影響は見られなかった。 2. OX40L欠損マウスは、低容量のステロイドで好酸球浸潤が抑制された。 上記1と同様に、OX40L欠損マウスに非アトピー型喘息反応を誘発した。好酸球浸潤は、マウス気管支肺胞洗浄液(BALF)中に含まれる好酸球数を測定して定量的に評価した。BALFはカニューレ用い、PBS中に回収し、好酸球の確認を容易にするため、ギムザ液でBALF中の細胞を染色してから測定した。事前にDexを投与したOX40Lノックアウトマウスではマウス気管支肺胞洗浄液(BALF)中に含まれる好酸球数が有意に低下していた。すなわち、OX40L欠損は好酸球浸潤を低下させた。一方、Dexを事前に投与しなかったマウスではOX40L欠損の影響は見られなかった。 平成24年度に予定していた「OX40L欠損マウスは低容量のステロイドでT細胞浸潤が抑制される」については現在進行中であるが、予想通りの結果が得られている。したがって全体を通して概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に計画していた「OX40L欠損マウスは低容量のステロイドでT細胞浸潤が抑制される」を評価し、さらに下記の2項目について評価する。さらに研究成果を学会ならびに論文にて発表する。 1. OX40L/OX40シグナルの欠如は、低容量ステロイドでT細胞増殖が抑制される。 OX40L欠損マウス由来の抗原提示細胞でT細胞を刺激し、T細胞の増殖速度を測定する。T細胞は上記1~3で使用したT細胞クローンを使用する。具体的には、抗原存在下にT細胞クローンと抗原提示細胞を共培養して48時間後におけるT細胞増殖を評価する。T細胞増殖は3H-チミジン取り込み法を用いて測定する。これにより、T細胞増殖抑制に関して、OX40L欠損がステロイド感受性を増加させることを証明する。 2. OX40L/OX40シグナルの欠如は、低容量ステロイドで炎症性サイトカイン産生が抑制される。OX40L欠損マウス由来の抗原提示細胞でT細胞を刺激し、炎症性サイトカインの濃度を測定する。T細胞の刺激方法は上記1と同様に行なう。刺激48時間後に、培地中のインターロインキン(IL)-4、IL-5、IL-13、IL-17などのサイトカイン濃度をELISA法で測定する。これにより、炎症性サイトカイン産生抑制に関して、OX40L欠損がステロイド感受性を増加させることを証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度計画分のうち「OX40L欠損マウスは低容量のステロイドでT細胞浸潤が抑制される」を実施中であるため、平成24年度使用予定であった研究費の一部を繰り越した。 平成25年度の研究費は、細胞培養に関する費用(培養用プラスチック器具、培地、ウシ血清(FBS))、動物購入費用などに当てる予定である。また、成果報告のため、学会参加費、旅費ならびに論文投稿費用などにも使用する予定である。
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