2012 Fiscal Year Research-status Report
核小体シャペロンNVL2が制御するrRNAプロセシング複合体のプロテオミクス解析
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24790095
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
石田 洋一 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (90510454)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 分子シャペロン |
Research Abstract |
(研究成果の具体的内容) 核小体シャペロンNVL2は、そのATPase活性を用いて、TRAMP-エキソソーム複合体から何らかの因子を脱会合することによりrRNAプロセシングを制御することが示唆されている。その脱会合因子を同定することを目指して、今年度は、NVL2の相互作用タンパク質であり、TRAMPサブユニットでもあるRNAヘリカーゼDOB1に着目し、DOB1を含む複合体を網羅的に同定するプロトコールの作成を行った。FLAGタグを付加したDOB1(FLAG-DOB1)を安定に発現するHEK293細胞から、抗FLAGビーズを用いた免疫共沈降により複合体を精製し、蛍光ディファレンシャル二次元電気泳動法(2D-DIGE)によるタンパク質の網羅的検出・定量およびMALDI型質量分析計による同定を行った。その結果、FLAG-DOB1特異的相互作用因子として、数種のエキソソームサブユニット(PM/Scl-100やRRP4など)やRNA代謝関連因子(hnRNP M、ZCCHC8、RBM7など)を同定することができた。プロトコール作成においては、銀染色MSキット(和光純薬)によりタンパク質を検出したこと、トリプシン消化にProtein LoBindチューブ(エッペンドルフ)を用いたこと、トリプシン消化液にProteaseMAX Surfactant(プロメガ)を用いたことなど、随所に工夫を施した。 (意義および重要性) エピトープタグを利用したアフィニティ精製、2D-DIGE、および質量分析計による同定は、いずれも専門性が高い技術であり、各研究室が独自に試行錯誤しているのが現状である。今回、網羅的相互作用解析を一つのプラットフォームでルーティンに行える実験系を確立することができ、他のベイトタンパク質にも適用可能である点で意義深く、複合体の機能を解明する上で非常に重要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画として、(1)TRAMP-エキソソーム複合体の相互作用解析プロトコールの作成、(2)NVL2 ATPase活性によって制御されるタンパク質の同定(平成25年度以降も進める)を挙げている。(1)の研究計画が非常に困難であると予想していたが、試行錯誤の末ほぼ100%の達成度を果たすことができたことから、全体的におおむね順調に進行しているものと思われる。以下にそれぞれの項目について具体的に記述する。 (1)TRAMP-エキソソーム複合体の相互作用解析プロトコールの作成 FLAG-DOB1安定発現細胞から、抗FLAGビーズを用いてDOB1を含む複合体を精製し、2D-DIGEを用いてタンパク質を網羅的に検出・定量した後、興味あるタンパク質スポットについては、MALDI型質量分析計を用いたペプチドマスフィンガープリント法(PMF法)により同定することを目的として、以上一連の解析をルーティンに行える実験系の確立を目指して研究を進めた。必要な細胞量、免疫沈降法(ビーズの量や溶出法など)、2D-DIGE解析法、同定のためのタンパク質の可視化(銀染色法)、PMF法(タンパク質消化条件)など様々な条件を検討した結果、目的通りの実験系を確立することができたので、本研究項目の達成度は100%である。 (2)NVL2 ATPase活性によって制御されるタンパク質の同定 作成した相互作用解析プロトコールを用いて、NVL2のATPase活性によって制御されるタンパク質を同定することが目的である。2D-DIGE解析とタンパク質の同定作業を進めており、達成度は30%程度と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)NVL2 ATPase活性によって制御されるタンパク質の同定 NVL2は、そのATPase活性を用いて、TRAMP-エキソソーム複合体から何らかの因子を脱会合することが示唆されている。従って、NVL2のATPaseドメインに変異を導入したドミナントネガティブ変異体を細胞に発現させると、複合体において脱会合因子が蓄積することが予想される。そこで、NVL2によって制御される脱会合因子を同定するため、平成24年度に確立したプロトコールを用いて、NVL2野生型あるいはATPase変異型を発現させた細胞において、TRAMP-エキソソーム複合体のタンパク質組成を比較し、変異体発現により相互作用が変化するタンパク質を同定する。具体的には、NVL2野生型あるいはATPase変異型を発現させたHEK293細胞から、FLAGタグを付加したベイト(例えばFLAG-DOB1)の相互作用タンパク質を精製し、2D-DIGEを用いて変異型発現によりベイトとの相互作用が変化するタンパク質を検出する。NVL2野生型発現と比べて、変異型発現によって増加・減少するタンパク質が見付かれば、MALDI型質量分析計を用いて同定する。ベイトタンパク質としては、TRAMP-エキソソーム複合体の構成タンパク質であるDOB1とPM/Scl-100を予定している。これらとNVL2の二重安定発現細胞の作製はすでに完了している。 (2)同定タンパク質の機能解析 同定されたタンパク質については、免疫共沈降や密度勾配遠心法を用いて複合体形成を確認する。また、リボソーム生合成への影響についてもノックダウン法やパルスチェイス法などを用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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