2012 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーを伴う非アポトーシス型細胞死の分子制御機構と病態生理的意義
Project/Area Number |
24790099
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
中瀬 朋夏(高谷朋夏) 武庫川女子大学, 薬学部, 講師 (40434807)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 乳がん細胞 / オートファジー / 細胞死 / 糖尿病 |
Research Abstract |
オートファジーは、がん細胞に対する従来の抗がん剤や放射線治療に対しての抵抗性との関連が注目されている。がんの病態は、がん細胞自体の持つ特性だけでなく、がん細胞の周囲の環境とも深く関わっていることから、がんの治療は、がんの環境も考慮に入れ、新たな治療戦略を構築する必要がある。本研究では、糖尿病併発時の乳がん治療法の確立を目指し、乳がん薬物治療効果に関与する感受性に焦点を当て、高濃度グルコース環境が乳がんホルモン療法剤タモキシフェンの薬効に及ぼす影響を検討した。ヒト乳がん細胞MCF-7にタモキシフェン(17 μM)を24時間処置した結果、細胞生存率は約20%であった。タモキシフェン誘導細胞死は、オートファジー阻害剤3-methyl adenineの前処置により、著しく抑制されたが、caspase阻害剤では抑制されず、細胞内にGFP-LC3の局在がドット状に観察されたことから、オートファジー性細胞死であることが明らかとなった。タモキシフェン誘導オートファジー性細胞死に対する高濃度グルコース環境の影響を検討した結果、高グルコース7日間培養群では、コントロール群と比較して、タモキシフェンの効果に著しい差は見られなかったが、高グルコース28日間培養群では、コントロール群よりも細胞生存率が有意に増加し、タモキシフェンの効果が減弱した。さらに、高グルコース28日間培養条件においては、細胞死抑制機能を持つタンパク質bcl-2の発現レベルが増加した。以上のことから、高濃度グルコース環境における培養時間に伴って、タモキシフェンの感受性が低下し、その機構にbcl-2が関与している可能性が示唆された。現在、高濃度グルコース環境がオートファジー性細胞死に与える影響を明らかにするため、オートファジー関連分子の細胞内動態の解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、乳がん細胞におけるオートファジー性細胞死が、がん細胞自体の持つ特性だけでなく、がん周囲の環境によって、大きく性質が変わることを見出した。この見解は、未だに大部分が解明されていない複雑な機構を持つオートファジー性細胞死の機序解明に重要な知見である。さらに、現在検討中であるオートファジー関連分子の細胞内動態の解析により、細胞死ネットワークを明らかにすることで、新規乳がん治療への応用に展開できる可能性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、乳がん細胞におけるオートファジー性細胞死について、細胞死シグナル伝達とリンクした新規の膜動態によるオートファジー制御機構について検証し、担がん動物モデルを用いて抗がん剤治療におけるオートファジー性細胞死の役割を解明する。 1.細胞死シグナル伝達経路とオートファジー制御機構 昨年度に引き続き、高濃度グルコース環境がタモキシフェン誘導オートファジー性細胞死に与える影響を明らかにするため、タモキシフェン誘導乳がん細胞死において、蛍光タンパク質融合オートファゴソームマーカーLC3ベクター、蛍光タンパク質融合隔離膜伸長必須分子ATG5ベクターを導入し、共焦点顕微鏡によるリアルタイム観察によりオートファゴソ-ム形成を追跡することにより、細胞外環境とオートファジー関連分子との関連性を評価する。オートファジー関連分子をノックダウンすることにより、タモキシフェン感受性に重要な細胞死におけるオートファジーの関与を検証する。さらに、Beclin1依存性オートファジーに対するBcl-2の寄与について、Beclin1/Bcl-2複合体免疫沈降法等により評価し、細胞死におけるアポトーシスとオートファジーによる制御システムを検証する。 2.in vivoにおけるオートファジーの役割 担がん動物モデルを作成し、オートファジーの制御と生存率の関係を検討する。がん以外の病態においても、がんと同様のオートファジーシステムが働くか否か、当研究室で見出したオートファジーを伴う虚血誘発心筋細胞死モデルと冠動脈絞やく虚血性心疾患モデルマウスの梗塞巣において、オートファジーを伴う細胞死の寄与と疾患マーカーとの関連性を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(17 results)