2012 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病末梢慢性炎症の脳内誘導の起因となる脳ペリサイトのPAR-1シグナル
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24790102
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
町田 崇 福岡大学, 薬学部, 助手 (30586144)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脳内炎症 / 糖尿病 / 脳ペリサイト / トロンビン |
Research Abstract |
糖尿病病態時には末梢だけでなく脳内でも炎症が認められ、糖尿病性認知機能障害が生じることが知られている。また、糖尿病病態時にはトロンビンの末梢血中濃度が増加することが報告されている。本研究は、糖尿病病態時の末梢炎症の脳内伝播機構に対する脳ペリサイトのトロンビン-Protease Activated Receptors(PARs)のシグナルの関与を明らかにすることを目的とし、これまでに以下の1)~3)のことを明らかにした。 1) 末梢-中枢のインターフェイスであるBlood-Brain Barrier(BBB)を構成する脳血管内皮細胞、アストロサイト、脳ペリサイトにおいて、トロンビン受容体であるPARsの4種類のサブタイプのmRNA発現量比較を行ったところ、脳ペリサイトにおいてPAR1、PAR4が高発現であった。これらPARsのmRNA発現量はHigh-Glucose処理による変化は見られなかった。 2) 末梢炎症の脳内伝播時にはBBBの破綻が伴うと仮定し、BBB障害作用を持つMMP-9の産生についてBBB構成細胞間で比較を行ったところ、トロンビン処理によって脳ペリサイトでのみ顕著なMMP-9の産生が見られた。 3) トロンビン誘発性のBBB機能障害に対する脳ペリサイトの直接的な関与を証明するために、脳血管内皮細胞のみを培養したin vitro monolayer BBBモデルと脳血管内皮細胞と脳ペリサイトを共培養したin vitro co-culutre BBBモデルを用い、トロンビン処理によるBBB透過性の変化を評価したところ、in vitro co-culture BBBモデルでのみトロンビン濃度依存的にBBBの透過性が亢進した。 以上のことは、末梢炎症の脳内伝播機構に対して、脳ペリサイトのトロンビン-PARsシグナルがその起因となる可能性を示唆する重要な結果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病時病態時の末梢炎症の伝播機構に対する、脳ペリサイトのトロンビン-PARsのシグナルの関与を明らかにすることを目的とし本研究に取り掛かった。 本年度は、in vitroによる実験に特化し、1) 脳ペリサイトでトロンビン受容体PAR1、PAR4が高発現であること、2) BBB構成細胞のうち脳ペリサイトにおいてのみトロンビンによる顕著なMMP-9産生が見られること、3) 脳ペリサイトがトロンビンによるBBB透過性の亢進に関わること、を明らかにすることができた。 糖尿病病態との関連やin vivoでの評価が十分でない点は次年度の課題として残るが、脳ペリサイトがトロンビンに高感受性であり、トロンビンによるBBB透過性亢進に直接的に関わることを明らかにすることができた点は、本研究課題で着目した脳ペリサイトのトロンビン-PARsシグナルの重要性を提示するものと考える。 以上のことから、本研究は現在まではおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、in vitroとin vivoの両方の手段を用いて、脳ペリサイトのトロンビン-PARsシグナルを起因とする末梢炎症の脳内誘導機構の解明に取り組む。以下の1)~4)について研究を実施する計画である。 1) トロンビンにより脳ペリサイトで産生されるMMP-9のBBB透過性亢進における関与を検討する。さらに、その他の炎症性サイトカイン等についても検討を行う為、トロンビン処理した脳ペリサイトの培養上清を採取し、マルチプレックスELISAキットを用いて産生増加する炎症性サイトカイン等を同定し、それらの物質のBBBに対する作用を検討する。 2) 当初はPARsのサブタイプの中のPAR1に着目して研究を行う予定であったが、脳ペリサイトにおいてPAR1、PAR4が高発現していることが明らかになった。そこで、トロンビン処理によるBBB透過性亢進に関与する脳ペリサイトのPARsのサブタイプを同定するため、PAR1およびPAR4に対する活性化ペプチドやアンタゴニストを用いてin vitro BBBモデルで評価を行う。 3) 糖尿病モデルマウスとコントロールマウスの末梢血中および脳内のトロンビン濃度を比較する。また、糖尿病モデルマウスで亢進しているBBBの透過性が、トロンビンの直接的阻害剤であるアルガトロバンの静脈内注射あるいは脳内投与により抑制されるかどうかを評価する。 4) トロンビンにより活性化された脳ペリサイトが脳内炎症を誘導する可能性を検討するために、トロンビン処理した脳ペリサイトの培養上清液をアストロサイト、ミクログリア、脳神経細胞に処理し、それらに対する活性化作用および障害作用を評価する。 以上のことを明らかにすることにより、糖尿病病態時の脳ペリサイトに起因する末梢炎症の脳内誘導機構について新たな知見を提供できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)