2013 Fiscal Year Research-status Report
新規糖鎖リガンドを創製した間葉系幹細胞のホーミングコントロール
Project/Area Number |
24790105
|
Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
酒井 信夫 国立医薬品食品衛生研究所, 代謝生化学部, 主任研究官 (60370938)
|
Keywords | 間葉系幹細胞 / 再生医療 / 糖鎖リガンド / ホーミング |
Research Abstract |
近年、幹細胞、前駆細胞の定着、増幅及び機能発現に関与する糖鎖-接着分子群の免疫応答の機序解明が望まれ、細胞、組織を用いた生理的な治療法である再生医療においては、幹細胞、前駆細胞をターゲットとする臓器に効率的に定着、機能させる戦略が必要になっている。 本研究課題「新規糖鎖リガンドを創製した間葉系幹細胞のホーミングコントロール」では、炎症性疾患における局所的な免疫応答に関与する細胞と接着分子との二分子間相互作用に着目し、新規糖鎖リガンド(Hematopoietic Cell E-/L-selectin Ligand; HCELL)を創製した間葉系幹細胞を用いた自己免疫疾患に対する新たな細胞移植療法の確立を目的としている。 平成25年度は、前年度に引き続きBalb/cマウス大腿骨骨髄より採取したmyeloid progenitor cellsから分化・増殖のクオリティ及びピュリティの高い間葉系幹細胞を採取し、ex vivoにおけるHCELLの効率的な創製法を確立した。これにより、HCELL発現プローブである抗Cutaneous Lymphocyte Antigen抗体(HECA-452)及びリコンビナント Mouse E-Selectin/CD62E Fc Chimera抗体の陽性率が従前約80%程度であったのに対し、95%以上の高頻度にHCELLを調製することが可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス間葉系幹細胞表面上のCD44分子の非還元末端のラクトサミンユニット(Gal beta 1-4GlcNAc, Gal beta 1-3GlcNAc)、及びシアリルラクトサミンユニット(NeuAc alpha 2-3Gal beta 1-4GlcNAc, NeuAc alpha 2-3Gal beta 1-3GlcNAc)を特異的に糖鎖修飾するシアル酸転移酵素(alpha 2-3-sialyltransferase)及びフコース転移酵素(alpha 1-3-fucosyltransferase)のパターンを種々検討した。その結果、STGal IV及びFT VIの反応条件を至適化することで、HCELLの効率的な創製法を確立した。 フローサイトメトリー及びウェスタンブロッティングより、HCELL発現プローブである抗Cutaneous Lymphocyte Antigen抗体(HECA-452)及びリコンビナント Mouse E-Selectin/CD62E Fc Chimera抗体の陽性率が従前約80%程度であったのに対し、95%以上の高頻度にHCELLを調製することが可能であることを示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
【平成26年度の研究実施計画】 本研究課題の最終年度である今年度は、これまでに確立したHCELLを創製した間葉系幹細胞を炎症性疾患モデル動物に移植し、疾患治療効果を詳細に解析することで、糖鎖に賦与される生物学的意義の解明を試みる。具体的な疾患モデルとしては5%(w/v)デキストラン硫酸ナトリウム経口投与によって発症する急性潰瘍性大腸炎を計画している。これに関しては、形質転換生物を用いることなく、廉価な野生型を用いることで、汎用性、経済性、生産性の高い動物実験の実施を試みる。3年間を通じて得られた研究成果については、国内外の関連学会における研究発表及び国際学術雑誌に投稿する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度予算より繰り越し研究費(次年度使用額)が生じた理由としては、「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号、平成17年法律第68号(一部改正))」、「実験動物の飼育及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年環境省告示第88号)」、「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月1日厚生労働省通知)」、「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(2006年6月1日日本学術会議)」を遵守し、科学的な観点に基づくとともに動物愛護の精神に立脚した適正な動物実験を実施することで使用個体数を最小限に留めたことが最も大きなファクターとなった。 平成26年度の研究費使用計画としては、費目別収支状況等に記載したとおり、次年度使用額(平成25年度未使用額)639,180円に、平成26年請求額として1,300,000円を加算した1,939,180円とした。 平成26年度の研究費の使用計画としては、研究課題最終年度としてin vivoにおける評価法を確立するため、実験動物購入費の大幅な増額が見込まれる。更に、フローサイトメトリー分析及びウェスタンブロット解析において使用する各種モノクローナル抗体のライブラリー作成に充当することで更なる効率化を図り、研究成果生産性の飛躍的向上を目指す。
|