2013 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素クラスターの特徴を利用した検査、診断、治療を目的とする創薬研究
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24790115
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
太田 公規 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (90347906)
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Keywords | 分子認識化学 / 超分子化学 / ホウ素クラスター / 機能性分子 / 創薬化学 / 診断薬 / 分子センサー / ホストゲスト化学 |
Research Abstract |
アニオンと結合するProdigiosinは、塩素アニオンと結合する際にプロトンとも同時に結合したのち、細胞内へ移行することで細胞内pHを上昇させアポトーシスを誘導する化合物として知られている。この種の化合物は新規メカニズムを有する抗腫瘍薬として期待されている。そこで、既に見出しているアニオン認識化合物が癌細胞の増殖効果に影響するか検討した。いずれの化合物も癌細胞の増殖には影響することはなく、プロトンとの共輸送は難しいことが明らかとなった。ただ、これらの化合物が細胞の生存に影響を与えないことは細胞毒性を示さないということであり、アニオン輸送体として副作用の少ない嚢胞性線維症の治療薬に応用できる可能性を示している。 また、既存のアニオンレセプターを構造修飾し、高選択性および高結合親和性を有する新規アニオンレセプターの構築では、化合物の溶解性や合成的難しさにより難航している。高機能性化合物を得ることは重要であるが、その取扱いや入手のし易さも優れた化合物としては重要な因子である。これについては、化合物の再デザインやアニオン認識部位以外への化学修飾などにより、これらの諸問題を解決する予定である。 フッ素イオンセンシングでは、FDBPを用いたchemodosimetory法を構築した。フッ素アニオン選択的にカルボランとFDBPの反応が進行し、FDBPの蛍光が完全に消光した。しかしながら、各種条件を変更しても蛍光の消光に要する時間は長いままであり、実用的なフッ素イオン検出薬とまではいかない。FDBPもしくはカルボランに化学修飾を行うことにより、短時間かつ高感度のフッ素イオン検出薬が構築可能と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たにデザインしたアニオン認識化合物の合成が難しく、また化合物の各種溶媒に対する溶解性が非常に悪く、予定より遅れが生じている。それ以外に、研究に使えるまとまった時間を取ることが難しく、これが研究全体に遅れを生じている主たる原因でもある。特に、化合物の合成にはまとまった時間が必要であり、化合物の物性プロファイリングは比較的計画通りに進行している。 アニオン認識化合物に対する細胞増殖試験は、当研究室が所有する化合物ライブリーへの登録とランダムスクリーニングにより容易に行うことができた。また、細胞増殖への影響以外の生物活性プロファイリングも行うことができた。 フッ素アニオンセンシングは実用的な検出薬を目指し、簡便、短時間、高感度、高選択性の達成すべく条件の検討を行った。簡便、高感度、高感度は当初予想していた以上の結果が得られたが、時間だけは短縮されなかった。FDBPとカルボランの反応速度が遅いことに起因するので、この反応が速やかに進行するようそれぞれの基質に化学修飾を施し、実用化へ向け再度条件の調整を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も研究の進行が遅れることが見込まれる。そこで、まとまった時間が必要な化合物合成による新規分子レセプターの探索を縮小し、既存の化合物の物性プロファイリングに時間を掛け、化合物の持つ性質に新たな知見を加えられるよう努める。特に、ホスト化合物のアニオンを含めた小分子に対する選択性および結合定数は、診断薬、検査薬、治療薬へ応用する上で極めて重要であり、その結合様式を明らかにすることは化合物を新たにデザインする際に大変有用である。そこで、溶液や結晶中におけるホストゲスト複合体形成の詳細と、新たな相互作用様式や分子認識機構の解明に視点を置き研究を進める。 最近、弱い分子間相互作用に注目が置かれ、様々な新たな相互作用が明らかになってきている。本来反発を起こすと考えられているハロゲンとハロゲンの接近は、接近する方向によりお互いが引き合うことが示され、創薬や超分子化学に応用されつつある(ハロゲン-ハロゲン相互作用)。このような弱い相互作用が幾つか組み合わさると、全体として水素結合のような大きなエネルギーを有する相互作用を作り上げることができる。また、穏やかな相互作用により、分子認識に速度、方向性、動きを加えることが可能である。そこで、最近明らかになってきた弱い相互作用に注目し、既に合成した化合物における分子認識能について再度解析を行う。 今年度は新たな化合物の合成よりも、今までに合成した化合物の相互作用解析を中心に研究を進め、新たな相互作用または機能の発見から高度に制御されたホスト化合物を見出すことを目的として研究を進める。
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Research Products
(16 results)