2012 Fiscal Year Research-status Report
非天然アミノ酸を組み込んだ持続性BACE1阻害剤の設計と合成
Project/Area Number |
24790117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
柿澤 多惠子 工学院大学, 工学部, 講師 (60445963)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 |
Research Abstract |
本研究は、非天然アミノ酸を組み込んだ BACE1 阻害剤の設計と合成を目的としている。アルツハイマー病患者の脳では、アミノ酸が 40 および 42 残基からなるアミロイド β ペプチド (Aβ) などから構成されるアミロイドプラークの沈着が認められ、このことがアルツハイマー病発症の基盤と考えられるようになった。従って、Aβ の産生に関与する酵素の一つである BACE1 に対する阻害剤の開発は、アルツハイマー型認知症治療薬研究として大変重要な位置付けにあると言える。特に本研究では、血液脳関門(BBB)への透過性改善を考慮した疎水性の向上や、体内のプロテアーゼへの耐性の獲得を考慮し、非天然アミノ酸を組み込んだ BACE1 阻害剤開発を目指している。こうした試みは、薬剤の実用化に向けた重要なアプローチであるといえる。 これまでの研究で、申請者は BACE1 基質のスクリーニングを行っており、阻害剤のデザインとして用いることができる非天然アミノ酸の候補を絞る研究を行った。事業期間中、特定した非天然アミノ酸を含む配列中に、スタチン型およびノルスタチン型等の誘導体を P1 部位に含むペプチド型 BACE1 阻害剤を数種類合成した。合成は、一般的なペプチドの固相合成法に基づいて行い、HPLC により精製を行った。得られた化合物をリコンビナント BACE1 を用いた酵素アッセイした結果、阻害活性を示すことが分かった。これらの結果を2012年に開催された国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、非天然アミノ酸を組み込んだ BACE1 阻害剤の設計と合成を目的としている。申請者は、本事業期間前の研究で行った BACE1 基質のスクリーニングにより、阻害剤のデザインとして用いるための非天然アミノ酸の候補を絞っていた。事業期間中、スクリーニングで特定した非天然アミノ酸を含む配列に基づいた数種類のペプチド型 BACE1 阻害剤を合成することができた。得られた化合物はリコンビナント BACE1 に対して阻害活性を示すことが分かっており、これらの結果を国際学会で発表することができた。従って研究はおおむね順調に進んでいると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の阻害剤設計に役立てるためのアミノ酸のスクリーニングを予定している。そのため、スクリーニングに使用するペプチドライブラリーの合成とリコンビナントの酵素を用いたアッセイを計画している。特に阻害剤の P1 部位は、BACE1 の活性中心である Asp32 および Asp228 との相互作用が期待される重要なアミノ酸残基であることから、 P1 部位に適合するアミノ酸を探索するためのライブラリーの合成などを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後も、BACE1 基質ライブラリーを用いたスクリーニングデータを基に阻害剤を設計・合成し、酵素アッセイを行って、高い活性を有する阻害剤の開発を目指す。やはり 2 年間という本事業の申請期間内に、実用化レベルの阻害剤を得ることは非常に難しいことが予想される。従って、今後も当該助成金などをもとに研究活動を続けていく予定である。本研究のような地道なデータの蓄積と解析は、今後の薬剤設計の基礎として有用に働くことが予想される。得られた構造活性相関の結果を今後の更なる創薬化学への情報提供とする。
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