2013 Fiscal Year Research-status Report
非天然アミノ酸を組み込んだ持続性BACE1阻害剤の設計と合成
Project/Area Number |
24790117
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柿澤 多惠子 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (60445963)
|
Keywords | 創薬科学 |
Research Abstract |
本研究は、アルツハイマー病の予防・治療を目指した薬剤の設計・合成等を目的としている。アルツハイマー病患者の脳では、アミロイドβペプチド(Aβ)やタウタンパク質などから構成されるアミロイドプラークの沈着が見られ、このことがアルツハイマー病の基盤と考えられている。Aβは、前駆体タンパク質である amyloid precursor protein(APP)が 2 種類のプロテアーゼで切断されることにより生産されるが、Aβの N 末端側を切断するのがβセクレターゼ(BACE1)である。本研究ではこの BACE1 を阻害することによる疾病の治療を目的とした創薬研究を目指している。酵素阻害剤を設計するにあたり、基質特異性に基づく阻害剤は酵素の活性部位にフィットする可能性が高いため、高活性をもつ阻害剤開発につながると考えられる。 申請者はこれまでに、非天然型アミノ酸を含む BACE1 阻害剤を数種類合成し、酵素アッセイにより阻害活性があることを確かめている。また、薬剤を設計するうえで重要である、阻害剤を構成するためのアミノ酸残基を特定するためのアミノ酸の候補を選んで入手した。そして、これらを用いてアミノ酸候補のスクリーニングに使用するためのペプチドライブラリーの一部の合成に着手した。また上記阻害剤以外に、BACE1 の基質となるタンパク質(APP)の配列の一部を含み、アミノ酸以外の機能部位を組み込んだアルツハイマー病治療薬の合成研究にも参画しており、結果の一部が国内の学会で発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は平成25年度に所属機関の変更があり、それに伴う大幅な実験計画の変更があった。本研究は、プロテアーゼの基質となるアミノ酸配列に基づいた合成研究に基づいており、ペプチド固相合成に基づく研究環境を必要としていることから、新しい所属機関での研究環境の確保と改善を目指し、25年度中にある程度達成した。化学合成を行うための研究スペースを確保し、阻害剤のシークエンス部分を合成するための振とう機などの機材類を購入し、試薬類としては非天然のアミノ酸を含めた保護アミノ酸や縮合剤等の一式を調達した。また、合成した阻害剤のキャラクタリゼーションで用いる MS は所属機関内の物性計測センターラボの MALDI-MS を使用できるほか、凍結乾燥などは所属機関内の研究室の一部の装置を使うことができることが分かった。ただし、阻害剤の精製および純度確認のための HPLC を十分に使用できる環境にないことが、今後の研究環境の改善点として挙げられる。また今後、薬剤の活性評価や阻害剤に組み込むためのアミノ酸のスクリーニングを行う際、HPLC のほかに恒温槽などが必要となるため調整する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請者は所属機関の変更に伴い、当初の実験計画を大幅に変更している。新しい所属機関での研究環境の確保と改善を目指し、ある程度達成しているものの、一部の機器類が不足している状況から、それらを補う予定である。本研究はアミノ酸配列に基づいた合成研究であることから、固相上での一般的なペプチド合成に基づく研究環境を必要としている。また、合成した阻害剤の精製や、活性の評価に必要な機器類が必要となるため、補填したいと考えている。特に、現在調達を予定している機器類や試薬は、本研究のようなプロテアーゼ阻害剤の合成研究に必要なだけでなく、タンパク質をターゲットとする様々な酵素類に対する薬剤開発などの、多くの分野で使用可能な汎用品であることから、現所属機関内の既存の環境を確認しつつ今後の研究を推進させたいと考えている。本研究の今後の研究の推進内容としては、ターゲットとする酵素を用いたアッセイ系を確立することである。そして、ターゲットとする酵素の基質に相当するペプチド配列の一部をライブラリー化したものを合成し、スクリーニングをして酵素の活性部位にフィットするアミノ酸類を特定するなどした後、得られたデータを基に実際の阻害剤の合成に取り組む予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度のはじめに所属機関の変更があり、それに伴う実験計画の変更があった。また、本申請以外の競争的資金を獲得することができたことから、予算面で変更が生じたため次年度使用額が生じた。 今後の使用計画としては、新しい所属機関での研究環境の確保と改善を目指し、本申請の研究計画に必要なアミノ酸などの試薬類の購入や、薬剤の精製・解析に必要な機器類の借用・購入などに使用する予定である。
|
-
[Journal Article] Lysine-specific demethylase 1-selective inactivators: protein-targeted drug delivery mechanism2013
Author(s)
Daisuke Ogasawara, Yukihiko Itoh, Hiroshi Tsumoto, Taeko Kakizawa, Koshiki Mino, Kiyoshi Fukuhara, Hidehiko Nakagawa, Makoto Hasegawa, Ryuzo Sasaki, Tamio Mizukami, Naoki Miyata, Takayoshi Suzuki
-
Journal Title
Angewandte Chemie International Edition
Volume: 52
Pages: 8620-8624
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Presentation] Peptidic Inactivator for Histone Demethylase LSD12013
Author(s)
Taeko Kakizawa, Daisuke Ogasawara, Yukihiko Itoh, Hiroki Tsumoto, Koshiki Mino, Kiyoshi Fukuhara, Takaki Koide, Hidehiko Nakagawa, Makoto Hasegawa, Ryuzo Sasaki, Tamio Mizukami, Naoki Miyata, Takayoshi Suzuki
Organizer
APIPS (4th Asia-Pacific International Peptide symposium, 50th Japanese Peptide Symposioum)
Place of Presentation
Osaka, Japan
Year and Date
20131102-20131104
-