2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内還元環境に応答して活性化するsiRNA創薬の開発
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24790121
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
中川 治 大阪薬科大学, 薬学部, 助手 (90380691)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | RNA干渉 / siRNA / プロドラッグ / 機能性核酸 / 核酸化学 |
Research Abstract |
siRNA・リボザイム等のRNAを基盤とした核酸医薬の実用化において、大量安価にRNAを供給可能な技術の確立、RNA自身の分解酵素による不安定性克服が極めて重要な鍵となる。本代表者らはプロドラッグ型RNA分子として2'-O-メチルジチオメチル(MDTM)-オリゴヌクレオチド(ON) を設計し、還元的環境下で速やかに分解され、RNA型である2'-OH-ONへ変換することを見出している。本研究では、2'-O-MDTM-ONをRNA医薬の代表であるRNA干渉法へ応用することを目的とする。そこで平成24年度は、以下の3点に重点を置き検討した。 (1) 2'-O-MDTM-ONの効率的合成法の確立:安定前駆体 2'-O-トリメトキシベンジルチオメチル(TMBTM)-ON としてオリゴへ導入した後に、2'-O-MDTM-ONへ変換する独自のオリゴ合成後修飾法の開発を試みた。MDTM基への変換試薬としてDMTSFを用い濃度を適切にコントロールすることで反応時間の短縮化が可能となった。またpHを適切に制御することで全核酸塩基種 (A, G, C, U) を含むオリゴ中においても副反応を生じることなく極めて効率よい反応を達成した。複数のMDTM基を導入した場合でも十分満足のいく結果を得た。 (2) 2'-O-MDTM-ONを細胞内還元条件下 (10 mM グルタチオン) で作用させた結果、数時間で2'-OH-ONへ変換可能であった。また3'-エキソヌクレアーゼ及び血清中での安定性を評価したところ、2'-OH-ON体と比較して優位に安定性が向上し、プロドラッグ分子としての有用性を見出した。(3) 標的とする遺伝子配列の拡張を目指し全核酸塩基種の合成を試みた結果、ピリミジン (U, C) 塩基を有するアミダイト誘導体を効率よく合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づき、本年度は重要な基礎検討である (1) 2'-O-メチルジチオメチル(MDTM)-オリゴヌクレオチド(ON) の実用的合成法の確立、(2) プロドラッグ分子としての基礎的物性評価、(3) 標的遺伝子配列拡張を目指した全核酸塩基種 (A, G, C, U) の合成、の3点について実施した。課題(1) については種々のオリゴ配列で反応を検討し、2'-O-MDTM体を複数導入した場合においても十分満足のいく再現性のある結果が得られた。課題(2) については、2'-O-MDTM-ONが十分な酵素耐性能を有すること、細胞内と極めて酷似した還元条件下で迅速に天然RNAへ変換されることを見出し、優れたプロドラッグ核酸であることを見出した。上記2点については、ほぼ当初の目標を達成でき、2'-O-MDTM-ONの有用性を証明できた。一方、課題(3) については継続中であり、ピリミジン塩基 (U, C) を有する誘導体については満足のいく合成法を確立できた。一方でプリン塩基 (A, G) 誘導体についてはピリミジン誘導体と同様な合成条件を適用できず種々検討を重ねた結果、ピリミジン誘導体ほど満足のいく結果ではないものの合成可能となった。現在収率向上を目指した合成法を検討中である。以上、本年度は当初の実施計画を満足する成果が得られ、次年度の研究計画を順調に実施できるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本年度に得られた成果に基づき以下の2点を重点的に検討することで研究全体を推進する。 (1) 2'-O-MDTM-siRNAの合成:RNA配列中でオリゴ合成後修飾法により2'-O-MDTM-RNAへの変換反応を検討する。(2) 細胞を用いたRNA干渉法への応用:2'-O-MDTM基を導入した修飾siRNAを種々合成し評価を試みる。評価系として繁用されているルシフェラーゼ遺伝子配列を標的とし、本分子の遺伝子発現抑制効果及び持続性について検討する。 課題(1), (2) の結果に基づき、以下の2点を検討することで細胞内での作用メカニズム解明、本分子の高機能化を図る。 (3) 細胞内での2'-O-MDTM-ONの2'-OH-ONへの変換の可視化:細胞内で2'-O-MDTM-ONが還元され2'-OH-ONへの変換を直接的に確認することは困難であることから、MDTM基の切断を蛍光検出可能なシステムを構築する。(4) 2'-O-ジスルフィド末端の置換基 (R) の検討:二重鎖親和性の向上や高機能性を付与した高機能化プロドラッグ分子を開発する。メチル基から種々変更した2'-O-R-ジチオメチル誘導体を合成し、還元条件下での分解活性や二重鎖形成能を評価する。また様々な置換基 (R)を容易に導入可能な汎用性の高い合成ルートを確立する。課題(3),(4) で得られた結果を、課題(1),(2) へフィードバックすることで、本研究を更に推進することが可能になると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は実施計画通りに順調に進み、当初予定していた研究費よりも少ない予算で研究を実施できた。そこで今年度の余剰金は次年度の研究実施計画に組込み、更なる研究推進に役立てる。特に次年度は細胞を用いた評価系へ展開する計画であり、細胞培養培地、ルシフェラーゼアッセイキットなど多くの高額な試薬を必要とする。またsiRNA修飾核酸の合成のための試薬、蛍光標識試薬も種々多用する予定であることから、今年度の基礎研究以上に研究費が必要となるものと考えられる。よって次年度への繰越金は次年度請求額と合わせても、全く余剰となるとは考えにくく、繰越することで次年度の研究を十分に推進可能になると考えられる。
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Research Products
(3 results)