2012 Fiscal Year Research-status Report
食品と食品包装材に含まれるナノ粒子の安全性評価と薬物相互作用の基礎的研究
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24790127
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
磯田 勝広 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (60423117)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 毒性学 / 食品衛生学 |
Research Abstract |
近年、ナノマテリアルの安全性評価の必要性が認識され始めている。食品と食品包装材の中にはナノマテリアルの使用が確認されているが、未だこれらのナノマテリアルの安全性及び、薬物の相互作用の解析は皆無に等しい。本研究は、食品と食品包装材に含まれるナノ粒子の物性―毒性相関に関する基礎的知見を集積し、安全性評価を行うことで国民に安心を確保し、予想されない相互作用を未然に防止し、国民生活の安全に貢献する。 平成24年度は粒子径30,50,70nmナノシリカと粒子径40,100nm銀ナノ粒子の経口投与と尾静脈投与による急性毒性および、シスプラチン、アセトアミノフェン、などの医薬品との薬物相互作用を検討した。経口投与による検討では、ナノシリカの最大用量100mg/kgをBalb/cマウス(♂、8W)に投与した。肝臓に対する安全性の検討するためにALT値とAST値、腎臓に対する安全性を検討するためにBUN値を測定した。結果、測定したバイオマーカーはいずれも異常値が観察されず、経口投与によるナノシリカ粒子の安全性が高いことが示唆された。次に銀ナノ粒子の最大用量0.8mg/kgをBalb/cマウス(♂、8W)に投与し検討した。結果、上記のナノシリカと同様に異常値が観察されず、経口投与による銀ナノ粒子の安全性が高いことが示唆された。さらにナノシリカ粒子と銀ナノ粒子を経口投与し、同時に上記の医薬品を腹腔投与して薬物相互作用を検討した結果、いずれも各バイオマーカーに異常値は観察されなかった。次に医薬品と銀ナノ粒子の薬物相互作用をマウスに尾静脈投与行い検討した。結果、アセトアミノフェンと銀ナノ粒子を投与するとALT値、AST値が大きく上昇し肝障害が観察された。銀ナノ粒子とシスプラチンとストレプトマイシンなどの薬物においては、異常値は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、ナノシリカと白金ナノコロイド粒子、銀ナノ粒子、ナノクレイに関して安全性を評価行い、さらにた、細胞株を用い、WST法により生細胞数を指標として、安全性を評価する予定であった。また、経口投与により毒性が観察されないナノ粒子に関しては、尾静脈投与を行い、安全性を評価する実験計画であった。 平成24年度の本申請課題研究においては、ナノシリカと銀ナノ粒子の経口投与と尾静脈投与による急性毒性および、シスプラチン、アセトアミノフェン、などの医薬品との薬物相互作用を検討した。さらにヒト癌肝細胞株Huh7細胞を用いてナノマテリアルに対する安全性評価を行った。実験を行った結果、Balb/cマウスへの経口投与によるナノシリカと銀ナノ粒子の肝障害と腎障害は観察されなかった。さらにナノシリカと銀ナノ粒子をBalb/cマウス経口投与し、薬物を同時に投与した際の相互作用による肝障害と腎障害は観察されなかった。これらのことより、経口投与によるナノシリカと銀ナノ粒子の安全性が高いことが示唆された。また、ヒト癌肝細胞株Huh7細胞に対するナノシリカの細胞傷害性をWST法により検討した結果、細胞傷害性は観察されなかった。平成24年度はナノシリカと銀ナノ粒子の安全性評価により、経口投与による高い安全性がある可能性が示唆されたが、銀ナノ粒子のさらに小さい粒子径を検討する必要があると考えられる。また、白金ナノ粒子とナノクレイに関して今後、経口投与による安全性評価の検討を進めていく予定である。本申請課題の食品と食品添加物に含まれるナノシリカと銀ナノ粒子の安全性評価を達成することができた。次年度はさらに銀ナノ粒子、白金ナノ粒子とナノクレイに関して安全性評価を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平成24年度に引き続きin vitroとin vivoにおける食品添加物と包装材中のナノ粒子の安全性評価を行う。白金ナノコロイド粒子、銀ナノ粒子、ナノクレイ、ナノシリカに関して安全性を評価する。上記のナノ粒子に関しては、食品に使用されていることを考慮し、経口投与による動物実験を行う。また、細胞株(HepG2)を用い、WST法により生細胞数を指標として、安全性を評価する。生細胞数の低下が観察されたナノ粒子は、高解像度3D蛍光顕微鏡(Delta Vision Personal;セキノテクロン)による細胞内のナノ粒子を観察し、細胞内動態を検討する。種々サイズのナノ粒子をマウスへ経口投与後に肝障害(ALT/AST)、腎障害(尿素窒素:BUN)、心障害(クレアチニンキナーゼ:CK)などの各種バイオマーカーを血清中より測定し、さらに毒性病理学的組織解析を行い評価する。また、経口投与により毒性が観察されないナノ粒子に関しては、尾静脈投与を行い、安全性を評価する。 さらに解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)、抗生物質(ストレプトマイシン、テトラサイクリン)、抗炎症剤(5-アミノサリチル酸)、抗癌剤シスプラチンなど各種薬物とナノ粒子を単回投与、頻回投与し、生体に対する影響を検討する。毒性や副作用が観察されたナノ粒子の分散性、凝集性、界面活性などの物性を解析し、毒性との相関解析を検討する。ナノ粒子の凝集状態、表面荷電、界面活性はゼータサイザー装置を用い、ゼータ電位測定を行う。さらにナノ粒子の体内動態は、in vivoイメージング装置を用いて測定を行う予定である。さらに薬物と併用した際に毒性効果が観察されたナノ粒子について、薬物代謝酵素CYP450ファミリーをリアルタイムPCRを用いて解析する。また、血中のサイトカイン量を測定し、ナノ粒子の生体免疫系への関与を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成24年度に引き続き、各種ナノ粒子に対する安全性と薬物相互作用を解析する。そのため、各種ナノマテリアル、試薬(薬物)、細胞培養関連試薬・器具、ALT/AST、BUN、CK解析用のキット・器具、実験動物などを計上した。特にナノ粒子の購入費用と実験動物費用が必要になるため、経費の50%程度は必要になると考えられる。 さらに薬物相互作用実験とその機序を解析するためにタンパク質解析キットおよび遺伝子解析試薬の購入に経費の20%程度を充てる予定である。また、本年度は国際学会(EURO Tox 2103 スイス)にて研究成果の発表、および国内学会での成果発表を予定しているため、経費の30%程度を充てる予定である。
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