2012 Fiscal Year Research-status Report
加齢関連疾患に係わるインスリンシグナル伝達に対するメタロチオネインの関与
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24790133
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
門田 佳人 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (60461365)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 老化・寿命 / メタロチオネイン / インスリン / 加齢性疾患 |
Research Abstract |
メタロチオネイン(metallothionein、以下MT)は、金属イオン結合能と活性酸素種除去能を有する低分子タンパク質である。このMTは、線虫の研究において高カロリー摂取によるインスリンシグナルを介した老化に対して抵抗し、寿命を延長することが報告されている。一方、我々は、以前雌性MTノックアウト(MTKO)マウスが、高カロリーの高脂肪食の摂取により肥満化することを報告している。そこで本研究では、MTが、哺乳類においてもインスリンシグナルを介した肥満などの加齢性疾患にかかわるかどうかを研究することとした。 1)MTKOマウスの寿命の調査 メタロチオネインの加齢性疾患に対する影響を検討する目的で、MTKOマウスの寿命を測定することとした。通常のマウスの寿命は、2年ほどであるが、1年を過ぎた今のところ、野生型とMTKOマウス間で目立った違いは観察されていない。体重変化も野生型とMTKOマウス間で有意な差は認められていない。今後も寿命に至るまで観察を行う。 2)MTKOマウスの各種パラメーターの解析 通常食で35週間飼育したマウスにおいて、野生型に比べてMTKOマウスの脂肪組織重量および脂肪細胞サイズは有意に増大した。このマウス間で、摂食量および肝重量に差はなかった。またその組織中の脂肪細胞肥大化促進遺伝子Mestおよび超低密度リポタンパク質受容体VLDLR遺伝子の発現が有意に高値を示した。この脂肪組織サイズの増大と関連して、脂肪特異的サイトカイン(アディポカイン)である血漿レプチン値およびPAI-1遺伝子発現が野生型と比較して高値を示した。また、野生型およびMTKO間で血漿インスリン値は差はなかったが、腹腔内糖負荷試験では、WTよりもMTKOマウスの方がグルコース処理能力が高く、これはMTKOマウスのインスリン感受性が高いことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)MTKOマウスの寿命の調査に関する状況 129/SV系を背景とする野生型マウスとMTKOマウスの寿命の測定を行い、現在も進行している。マウスの寿命は、およそ2~3年であるため、研究期間を超える場合も考えられる。 2)MTKOマウスの各種パラメーターの解析に関する状況 MTKOマウスは、野生型マウスに比べて脂肪組織重量の増加と脂肪細胞の拡大が観察された。摂食量は、野生型と差はないことから、MTKOマウスの脂肪組織の方が、エネルギーの同化効率が高いことを示した。また、この脂肪組織において、肥大化を促進する遺伝子(MestおよびVLDLR)が増大していることを示した。さらに、血栓形成にかかわるアディポカインであるPAI-1の発現が高いことを明らかにした。MTKOマウスは、野生型と比較して、血漿インスリン値は有意な差がないにもかかわらず、インスリン感受性の指標である糖負荷試験で高い糖処理能を示すことを明らかにした。MTがインスリンシグナルを抑制的に制御するが、MT欠損により、高インスリン感受性を示していると考えられる。さらにこのMT欠損によるインスリンシグナル介した老化および加齢性疾患の促進への寄与を証明したい。
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Strategy for Future Research Activity |
MTKOマウスの寿命の調査は、前年に引き続き行う。 本年度は、in vivoで見られたMTKOマウスの易肥満性および糖代謝能変化が、MTのインスリンシグナルへの関与に基づくかどうかを証明するためにインスリンの標的細胞のひとつである脂肪細胞を用いたin vitroで研究することとした。本研究室では、MTKOおよび野生型両マウスの脂肪組織から単離した前駆脂肪細胞株を樹立している。この前駆脂肪細胞株および分化誘導剤で分化させた培養脂肪細胞を用いて以下の実験を行う。 1)脂肪細胞のインスリンシグナル伝達に対するMTの発現挙動に関して解っていない。そこで、分化誘導剤で分化させた脂肪細胞に100 ng/mLインスリンを無血清培地下で単独、あるいはインスリンシグナルの阻害剤を共処理した細胞のMT mRNAおよびタンパク質発現量をそれぞれRT-PCRおよびELISA法で解析する。 2)MTの発現の有無が、インスリンシグナルにどのように影響を与えるのかをインスリン曝露に対する野生型およびMTKOマウス由来脂肪細胞の感受性およびインスリンシグナル関連タンパク質および遺伝子を解析する。分化誘導剤で分化させた脂肪細胞に100 ng/mLインスリンを無血清培地下で15分間処理し、インスリン関連タンパク質の発現、リン酸化を検出する。また同様にインスリン抵抗性モデル(20 ng/mL TNF-α曝露)を用いて、インスリン抵抗性を示す細胞に対して同様にインスリンシグナルタンパク質に関して解析する。 3)野生型とMTKOの両系統マウスから単離した細胞株で比較する場合、個体差による影響を無視できない。そこで、野生型の前駆脂肪細胞にsiRNAを処理してMT遺伝子をノックダウンさせた細胞を用いて1および2の実験の再現性を取る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MTKOマウスの寿命の調査は、前年に引き続き行う。前年の繰越分は、この寿命調査用のマウス飼料及び床敷きとして計上する(27万円)。研究推進の方策から、以下の物品を計上する。:細胞培養関連試薬(分化誘導試薬、基礎培地、ウシ血清など)(20万円)、ELISA法関連試薬(30万円)、ウェスタンブロット法関連試薬(各種抗体、タンパク質抽出試薬、SDS-PAGE関連試薬、免疫沈降法関連試薬含む)(30万円)、遺伝子発現解析用試薬(逆転写酵素、PCR関連試薬、泳動用ゲル)(25万円)、siRNA、遺伝子導入試薬などの発現実験関連試薬(RNAi関連試薬試薬)(20万円)、脂肪細胞分化誘導剤(インスリン、デキサメタゾン、キサンチン誘導体およびチアゾリジン誘導体など)(20万円)、インスリンシグナル抑制剤(siRNA、PI3K阻害剤(LY294002, wortmannin)、PKB/Akt阻害剤(perifosine)ほか)(20万円)
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Research Products
(8 results)