2014 Fiscal Year Research-status Report
抗HIV薬服用患者における脂質代謝異常の発現メカニズムの解明
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24790153
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
津金 麻実子 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (00469991)
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Project Period (FY) |
2013-02-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗HIV薬 / 脂質代謝異常 / 臨床薬学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、抗HIV薬の長期服用により発生する脂質代謝異常やリポアトロフィーの発現メカニズムを解明することである。研究手法としては、診療記録をもとに対象患者の副作用の出現状況等を調査するとともに、共通の病態を示すメタボリックシンドロームでの関与が報告されているグルココルチコイド活性化酵素11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1(11β-HSD1)の活性を患者の尿検体を用いて解析する。 平成26年度は、平成25年度に引き続き、尿検体における前処理および濃縮、11β-HSD1の活性をLC-MS/MSで測定する条件を詳細に検討した。コルチゾンは、細胞内の11β-HSD1により活性型のコルチゾールに変換される。最終代謝物としてコルチゾールはtetrahydrocortisol(THF)とallo-tetrahydrocortisol(allo-THF)、コルチゾンはtetrahydrocortisone(THE)の形で尿中に排出される。11β-HSD1の活性は尿中比と呼ばれるTHF、allo-THF、THEの濃度の比で評価できる。そこでまず、健常者の尿にコルチゾンやコルチゾールの最終代謝物の標準品を加えて加水分解反応、固相抽出、LC-MS/MSに供し、検出されたピークの妥当性ならびに回収率を検討した。また、内部標準物質の候補であるD3-PGDの有用性について検討した。その結果、尿中混雑物とD3-PGDのピークがそれぞれ異なる保持時間を示して検出されたことから、D3-PGDを内標準物質として使用することが妥当であると示された。次に、尿中のコルチゾンやコルチゾールの最終代謝物であるTHF、allo-THF、THEの回収率を確認したところ、LC-MS/MSにおいて各代謝物のピークは検出可能であったが、検出感度については更なる検討が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LC-MS/MS を用いた尿検体中の11β-HSD1活性測定における代謝物の標準品を検出する実験で、試薬の追加発注トラブルや納品の遅延により、健常者の尿検体を使用したLC-MS/MSの各種測定条件の確立に時間を要した。そのため、すでに採取が終了している対象患者の尿検体における11β-HSD1の活性を測定するところまで達成できず、研究は計画と比べてやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度にはまず、尿検体の前処理および濃縮、LC-MS/MSの各種測定条件の確立を目指す。コルチゾンやコルチゾールの最終代謝物標準品(THF、A-THF、THE)の回収率を算出して、検出感度の向上を検討する。また、尿中にはコルチゾンやコルチゾール代謝産物のグルクロン酸抱合体や硫酸抱合体が存在するため、これらの分解に関して更なる検討を行う。具体的には、尿検体にそれらのグルクロン酸抱合体や硫酸抱合体の標準品を添加し、加水分解反応効率、固相抽出回収率を求め最終的な回収率を求める。 検体の前処理およびLC-MS/MSの測定条件が確立したら、患者の尿検体における11β-HSD1の活性を測定する。尿検体中のTHF、allo-THF、THEの濃度をLC-MS/MSで測定して、尿中比を算出する。 続いて、これまでに得られた臨床調査の結果および尿中比の算出結果を用いて解析を実施する。代謝異常やリポアトロフィーなどの副作用の発現有無と、尿中比やリポアトロフィー症状に関連する臨床検査値などのパラメーターで変動に相関がみられるものを検出して、副作用発現における11β-HSD1の関与を明らかとする。それによって、尿中比の抗HIV薬服用患者における脂質代謝異常等の病態を診断するマーカーとしての妥当性を検討する。また、リポアトロフィーや代謝異常の出現有無の患者間で各種患者背景情報、検査値で多変量解析を実施し、副作用発現のリスクファクターを明らかとする。
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Causes of Carryover |
尿検体中のコルチゾンやコルチゾールの最終代謝物のLC-MS/MSによる解析において、その代謝物の標準品を検出する実験にあたり、試薬の追加発注トラブルにより以前と異なる実験結果が生じる問題が発生し、その検証に時間を要した。また、新たな標準品の納品に長時間かかり、研究が大幅に遅延したため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
LC-MS/MSを用いた11β-HSD1の活性の評価に関わるコルチゾンやコルチゾールの代謝産物の測定において、代謝産物およびこれらのグルクロン酸抱合体や硫酸抱合体、内部標準物質の標準試薬が高価であるため、平成27年度も測定の条件検討や検体の測定を継続するために追加購入する。また、測定の条件検討を進めるうえで、インキュベーターやエバポレーターなど新たに必要になった装置類の購入を予定している。さらに分析機器のメンテナンスや修理にも経費を充てることを計画している。
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