2012 Fiscal Year Research-status Report
一酸化炭素結合型ヘモグロビン小胞体の特発性肺線維症新規治療薬としての有用性評価
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24790159
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田口 和明 熊本大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (90621912)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 一酸化炭素 / ヘモグロビン |
Research Abstract |
本研究では、予後不良な難治性疾患である特発性肺線維症 (IPF) の発症及び進展に炎症や酸化ストレスが関与していることに着目し、ヘモグロビンをリン脂質二重膜で内封したヘモグロビン小胞体 (HbV) に抗炎症・抗酸化作用を持つ一酸化炭素 (CO) を付加したCO-HbVが新規IPF治療薬として有用性の評価を目的とする。本年度は、CO-HbVの毒性及び安全性評価に焦点を絞り以下の検討を行った。 1.健常マウスにCO-HbVを100, 250, 500, 1000, 1400 mg Hb/kgで投与し、1・3・7・14・28日後に生化学パラメータ (全24項目) の測定を行った。その結果、HbV構成成分 (内部ヘモグロビン、脂質膜成分) の代謝産物と考えられるビリルビンや脂質関係パラメータの上昇が確認された。2.上記1と同条件で、HE染色により臓器形態を観察した結果、すべての臓器において臓器傷害性は確認されなかった。3.ヒト骨髄由来CD34+細胞にCO-HbV (最終濃度;1%, 3%) を添加し、コロニーアッセイ法によりCO-HbVの造血作用への影響を検討した。その結果、CO-HbV添加28日後までコントロール群とCO-HbV添加群でコロニー数および形態に変化は確認されなかった。4.ブレオマイシン (BLM) を経気道投与してBLM誘発IPFマウスモデルを作製し、BLM投与30分前及び1日後に、CO-HbV (1000 mg Hb/kg) を投与した。CO-HbV最終投与後1・3・7・14日目に生化学パラメータの測定を行った結果、HbV構成成分の代謝産物と考えられるパラメータの一過性の上昇が確認されたが、臓器傷害を反映するパラメータの変化は確認されなかった。 以上の結果より、CO-HbVに明らかな毒性はなく、治療薬として十分な安全性を保持していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CO-HbVの体内動態実験を除いて申請段階の研究計画の通りに実験を行えている。CO-HbVの体内動態実験も平成25年度4月-5月には実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
特発性肺線維症に対するCO-HbVの有効性を特発性肺線維症モデルであるブレオマイシン (BLM) 誘発肺線維症モデルマウスで評価する。特発性肺線維症に対するCO-HbVの有効性は、以下の3つの項目で評価する。 1.炎症性細胞の肺への浸潤を肺胞洗浄液 (BALF) 中の総細胞数・肺胞マクロファージ数・好中球数・リンパ球数により評価する。 2.肺組織の傷害はヘマトキシリン・エオジン染色で組織の形態を確認する。 3.肺の線維化は線維化部位を特異的に染色するMasson’s trichrome染色及びヒドロキシプロリン含量、TGF-βを定量する。 また、CO-HbVの特発性肺線維症の進行抑制機序の解明として、COの抗酸化作用・抗炎症作用に焦点を絞り、メカニズムの解明を行う。抗酸化作用の評価は核酸と活性酸素の反応物であり8-ヒドロキシーデオキシグアノシン、活性窒素種の反応物であるニトロチロシンの産生を免疫染色により評価する。一方、抗炎症作用の評価は血中及びBALF中のサイトカイン (IL-6, IL-10, TNF-αなど)により評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に実施できなかったCO-HbVの体内動態実験を行う際に動物代、ガスクロマトグラフィーのCOの検量線用スタンダード購入に使用予定。CO-HbVの体内動態実験は平成25年度4月-5月には実施する予定である。
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