2012 Fiscal Year Research-status Report
線溶作用を有する微粒子製剤による肺線維症治療システムの開発
Project/Area Number |
24790167
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
戸上 紘平 奥羽大学, 薬学部, 助教 (20582357)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 肺線維症 / 肺線維芽細胞 / 肺胞上皮細胞 / ピルフェニドン / FTS |
Research Abstract |
交付申請書に記載した本年度の研究計画では、「肺線維症治療薬の候補化合物の肺組織分布特性及び薬理効果の評価」としており、これまで報告の無かった肺線維症治療における薬物の薬物動態と薬理効果の関連性について明らかにすることを目的に据えた。本年度は、肺線維症唯一の治療薬であるピルフェニドンと、治療候補化合物である血清胸腺因子(FTS)の薬物動態と薬理効果の解明及び比較検討を行った。 ピルフェニドンをラットに経口投与し、肺線維症の病巣である肺組織への移行特性について検討した。ピルフェニドンは投与後速やかに血液中に吸収されるが、肝臓による代謝も極めて速いことが示された。また、血液中から肺組織への移行性は低く、肺へ移行した薬物は速やかに消失した。これらの結果から、ピルフェニドンは経口投与では病巣部位への移行性に乏しいこと、また、全身性副作用の発生率が極めて高いことから、吸入製剤などによる標的指向性と滞留性に優れた製剤を開発する必要性が示された。FTSは生体由来のノナペプチドであり、これまでに定量法が確立されていなかった。本年度は、FTSのLC-MS/MSによる定量法を見出し、動態特性については検討中である。 FTSの薬理効果について、in vitroにてピルフェニドンと比較検討した。結果、FTSには、ピルフェニドン同様に肺線維芽細胞によるコラーゲン生成の抑制作用、肺胞上皮細胞の上皮間葉移行を阻害する効果が認められた。一方、線維化に関与するサイトカインの産生抑制効果は認められなかった。以上の結果より、FTSを肺線維症の治療に応用するためには、肺線維芽細胞や肺胞上皮細胞への移行性を確認すると共に、標的指向性を有したドラッグデリバリーシステムの構築を目指す必要がある。 以上の研究成果は、平成25年3月に行われた日本薬学会第133年会で発表済みであり、現在学術論文を作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では、肺線維症治療における薬物動態と薬理効果の両方について検討する予定であった。研究実績の概要に示す通り、そのどちらも順調に推移しており、得られた結果の内容は、すでに学術論文として発表可能なレベルに到達したと考えている。一方、ほかにも肺線維症治療候補化合物が存在しており、同種の検討を続けてもよいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時の予定通り、本年度は肺線維症の病態モデルを作成し、その際の薬物動態特性や肺組織における分布機構について検討を進める。既に病態モデルの作成法は確立できており、薬物の分布機構の検討に必要なin vitro細胞モデルも使用できる状態となっている。これらのモデルを用いて、昨年度薬理効果を見出したFTSについて検討を行う。さらに、動態特性や分布機構を解明するに留まらず、その知見に基づいたドラッグデリバリーシステムの構築に着手したいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に行った検討について、他の候補化合物の薬理効果の判定などについても続けていく予定である。本年度に繰り越した研究費は概ねその用途に用いる予定である。
|
Research Products
(2 results)