2012 Fiscal Year Research-status Report
血糖値認識能を有する次世代型インスリン投与システムの構築
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24790168
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
小野 哲也 奥羽大学, 薬学部, 助教 (70433555)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー |
Research Abstract |
本年度は、薬物の貯蔵および放出を制御可能な高分子膜の調製について検討を行った。この高分子膜は、電気化学的手法により重合可能なピロールと糖濃度依存的に構造変化するフェニルボロン酸を連結した単量体の電解重合により作製した。電解重合は、薬物のモデル化合物であるアスピリンの存在下でサイクリックボルタンメトリーを用いて行い、薬物を含有し、且つ糖濃度依存的に構造変化を起こす高分子膜を作製した。つまり薬物を糖尿病治療薬であるインスリンとすれば、糖尿病の指標であるグルコースの濃度(血糖値)依存的にインスリンを放出可能となるシステムである。 この薬物貯蔵膜をグルコース溶液に浸漬し、フェニルボロン酸の構造変化による薬物放出挙動を紫外可視分光光度法により観察したところ、グルコース水溶液中への薬物放出を確認することができた。また、ピロールとともに共重合可能なチオフェン類を用いて、混合比率を変えて共重合することにより、フェニルボロン酸や薬物貯蔵部位の組成を変化させて検討を行った。しかし、現段階でグルコース濃度依存的に緻密な薬物放出を行えるほどの高いレベルでの制御には至っておらず、薬物貯蔵高分子膜の作製方法およびその詳細な条件について引き続き検討中である。 この薬物放出機能が詳細に制御可能になれば、現在、国内だけでも数百万人に上る糖尿病治療中の患者および医師の負担を劇的に改善することが可能となる。また、この薬物放出制御法は、他の疾病とその治療薬の組み合わせにも応用可能であることから、この研究の達成による多大な利益が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度は、昇進によって本学における担当講義および各種委員会の業務が極端に増加した。交付申請書作成時にはこれを想定しておらず、研究に割くことができる時間が大幅に予定より減少したことが大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、申請書作成時の推進方策と大きな変更はない。時間的事情により本年度生じた研究の遅れをカバーできるように、研究時間の確保に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」にも記載したように、当初予定していた研究時間が確保できなかったために、現段階で研究の遂行が遅れているため次年度使用額が生じた。次年度は今年度の経験を活かせるため負担が軽減できるので、遅れている研究が当初の予定に追いつけるよう、研究時間を増やせるものと考えている。
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