2012 Fiscal Year Research-status Report
Slc6a13によるヒポタウリン輸送の分子機構と新たな酸化ストレス治療戦略
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24790171
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
樋口 慧 帝京大学, 薬学部, 助教 (10625304)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ヒポタウリン / 酸化ストレス / Slc6a13 / エズリン |
Research Abstract |
ヒポタウリンの細胞保護効果を明らかにするために、Slc6a13が発現する胎盤関門モデル細胞株であるTR-TBT18d-1を用いて、ヒドロキシラジカルに対するヒポタウリン効果を検討した。その結果ヒポタウリンが過酸化水素処理に対する細胞毒性に対して、細胞保護効果を示すことを明らかにした。またヒポタウリンは過酸化水素および過酸化水素が惹起する細胞内ヒドロキシラジカル除去能、スーパーオキシドラジカル除去能を示した。ヒポタウリンは抗酸化剤として多能性を有しており、グルタチオン、タウリン、ビタミンC、システイン等と比較しても希有かつ強力な性質を持つことが示された。これらからヒポタウリンが、胎盤細胞内で複数の活性酸素種除去に働くことで細胞保護効果を示すことが示唆された。一方でRNA干渉法によりSlc6a13をmRNAレベルで約50%程度ノックダウンしたTR-TBT18d-1細胞を得ることに成功した。Slc6a13のさらなる効率的なノックダウン方法の確立やヒポタウリンの添加濃度や処理時間の最適化ののち、Slc6a13によるヒポタウリンの取込みが細胞保護に果たす役割を検討する予定である。 Slc6a13に分子制御機構を解析するために、タンパク質レベルでの関連分子の探索を行った。我々は先行研究で足場タンパク質であるエズリンの欠損マウスにおける胎児-胎盤系におけるヒポタウリン濃度の減少を見出している。免疫沈降により検討したところ、胎盤におけるSlc6a13とエズリンの相互作用が示された。この相互作用はSlc6a13の輸送能へ影響を与えうることから、現在Slc6a13のアミノ酸配列からエズリンなど足場タンパク質と相互作用するドメインや、膜タンパク質のC末端におけるPDZドメインの変異体を作成し、それらのドメインが相互作用に与える影響について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒポタウリンによるTR-TBT18d-1において有効な細胞保護作用、抗酸化作用を示したことから、本実験系が薬剤や病態に起因する胎盤での酸化ストレスに対し、ヒポタウリンの細胞保護効果を測定するスクリーニング系として有効であることが示され、本項目に関し本年度の目標に到達している。 胎盤におけるヒポタウリンおよびSlc6a13発現量の相関は、それぞれの測定方法を技術的に克服した段階であり、相関解析は終了していないものの概ね順調に計画は進行している。 Slc6a13の発現制御機構は、解析に必要なSlc6a13の安定発現細胞の構築と評価方法の確立は達成し、発現量、細胞内局在解析が可能となった。各種シグナル伝達経路の阻害剤効果などを検討する段階にまで至っている。ただし、宿主細胞に内因性に発現している制御因子の評価には至っておらず、多面的に阻害剤効果を検討し、結果の蓄積を必要とする。 Slc6a13ノックアウトの作製については、同時平行で行っているin vitroでの酸化ストレス研究の結果を受けて、ノックアウトマウス作製よりも、in vivoでの酸化ストレスレベルの測定やヒポタウリンや代替物による影響を検討することを優先であると考えられた。そのため、それらin vivo実験に必要な実験条件の検討を行い、順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作成した胎盤細胞株TR-TBT18d-1を用いた評価系を用いて、薬剤や病態に起因する胎盤での酸化ストレスからの防御に対するヒポタウリンを中心とした抗酸化物質の有効性についてさらなる検討を行う。 Slc6a13の分子制御機構の解析として、エズリンとの相互作用ついて、Slc6a13のC末領域とエズリンのFERM領域とのプルダウンアッセイによる相互作用評価を行っていく。またそれぞれのアミノ酸変異体を用いた相互作用部位の同定を目指す。さらにタンパク質相互作用が及ぼす機能への影響について、詳細な解析にする。そのために、よりよいホスト細胞の探索もしくはHEK293細胞に内因性に発現しているエズリンを阻害するとともに活性化体であるアミノ酸変異体を用いることで外因性エズリンによるSlc6a13の機能促進評価を達成する。 現在in vivoでの酸化ストレスに対するヒポタウリンの効果を検討しているが、胎児-胎盤系のヒポタウリン濃度が低下するエズリンノックアウトマウスを用いることで、胎児胎盤の酸化ストレスレベルに対するヒポタウリンの影響を評価が可能であると考えている。酸化ストレスレベルはマロンジアルデヒド等の過酸化脂質測定キットなどを用いて評価を行う予定である。またヒポタウリンの母体への投与では、胎児中のヒポタウリン量を上昇させられないことが予備検討により明らかになっていることから、胎児の酸化ストレスに対するヒポタウリン代替物を投与することにより改善するかなどの検討を行っていく。また他臓器での解析に関してはin vivoノックダウン法の使用も検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度作成した細胞系を用いて、さらなる薬剤や病態に起因する胎盤での酸化ストレスからの防御に対するヒポタウリンを中心とした抗酸化物質の有効性に関する検討に必要な細胞培養試薬や関連試薬等の購入に用いる。 In vitroでの酸化ストレス研究の結果を受けて、ノックアウトマウス作製よりも、in vivoでの酸化ストレスレベルの測定やヒポタウリンや代替物による影響を検討することを優先しているため、繰越金が生じているが、今年度はin vivoでのヒポタウリンの酸化ストレス防御効果の解析を進めていく。そのために必要な試薬や動物購入・作製(導入)に使用する。Slc6a13の分子制御機構解明のために、必要な遺伝子導入、発現解析、タンパク質精製に関する試薬等を購入する。上述のin vitro実験およびin vivo実験で解析に必要な測定関連試薬、RI試薬等の購入に使用する。
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