2013 Fiscal Year Research-status Report
核内受容体PPARγを分子標的とする食品因子と医薬品の相互作用に関する研究
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24790182
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
吉田 裕樹 九州保健福祉大学, 薬学部, 講師 (90469411)
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Keywords | 核内受容体 / PPARγ / 食品 / 医薬品 / 相互作用 / ナリンゲニン / ピオグリタゾン / フラボノイド |
Research Abstract |
前年度の研究において、柑橘類フラボノイドの一種であるナリンゲニンが、レポーターアッセイを用いたin vitro 実験(培養細胞レベルの実験)では、糖尿病治療薬ピオグリタゾン(核内受容体PPARγ作動薬)との併用によりPPARγ活性化を増強することを見出した。しかしながら、病態モデルマウスを用いたin vivo 実験(動物個体レベルの実験)では、ナリンゲニンとピオグリタゾンの併用は、ピオグリタゾンの薬効を減弱させるという結果を示した。 本研究は、薬力学的(生化学的)な視点から食品―医薬品相互作用の解析を行うことを目的としている。しかしながら、相互作用の機序を鑑みた時、経口投与された薬物の吸収や代謝などの薬物動態学的パラメーターの変動を加味した上で解析することは重要である。そこで、上記のin vitro 実験とin vivo 実験の矛盾を解明するために、本年度は、ナリンゲニンの併用によりピオグリタゾンの薬物動態学的パラメーターの変動に焦点を当て研究を実施した。まず、HPLCによるマウス血清中のピオグリタゾン濃度の測定系を構築した。その後、マウスにピオグリタゾン単独もしくはナリンゲニンを併用投与(単回投与)し、経時的(15分~24時間)な血中ピオグリタゾン濃度の変化を測定した。その結果、ナリンゲニンの併用は、ピオグリタゾンの血中濃度に影響を与えないことが示された。また、1か月間の持続投与を行ったマウスにおいても、ピオグリタゾンの血中濃度に差は見られなかった。これらの結果から、病態モデルマウスにおいて観察されたナリンゲニンによるピオグリタゾンの薬効減弱化の要因は、薬物の吸収や代謝などの動態学的な相互作用ではなく、細胞レベルにおける薬力学的(生化学的)な相互作用の可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、核内受容体PPARγの活性化機構の制御における食品―医薬品相互作用の解析を主目的としている。しかしながら、前年度の研究結果より、食品成分併用時の医薬品の薬物動態学的パラメーターの変動を加味した上で相互作用を解析することが重要であると考え、本年度は、薬物動態学的な解析を中心に研究を実施した。その結果、ピオグリタゾンの血中濃度測定系を構築することができ、単回および持続投与時の血中濃度測定を実施した。また現在、病態モデルマウスより採取した臓器を用いてケモカイン・サイトカインなどの病態関与因子の発現量変動を解析中である。以上のように、本研究は、薬力学的(生化学的)および薬物動態学的アプローチにより食品―医薬品相互作用の解析を行っており、おおむね順調に研究を実施することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、病態モデルマウスにおいて観察されたナリンゲニン併用によるピオグリタゾンの薬効減弱化の要因は、薬物動態学的な相互作用ではなく、細胞レベルにおける薬力学的(生化学的)な相互作用の可能性が示された。 そこで、今後の研究においては、核内受容体PPARγの活性化機構の制御における食品―医薬品相互作用のメカニズム解明を行う。具体的には、PPARγとピオグリタゾンの結合親和性に対するナリンゲニンの影響、PPARγと転写共役因子の複合体形成に対するナリンゲニンに影響等を検証する。また、病態モデルマウスより採取した臓器におけるケモカイン・サイトカイン発現量変動が、ピオグリタゾンの薬効減弱化に連関するのか検証する。
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Research Products
(4 results)