2012 Fiscal Year Research-status Report
マウス生体由来多能性幹細胞(Muse細胞)の発生学的解析
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24790188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
若尾 昌平 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (80511948)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 |
Research Abstract |
これまでの研究により、ヒト生体由来の多能性幹細胞であるMuse細胞は、浮遊培養を行うことで一細胞からES細胞由来の胚葉体に良く似た多能性幹細胞マーカーを発現する細胞塊を形成することが確認されている。そこでヒト間葉系細胞を様々な表面抗原に対する抗体を用いてFACS解析を行い、SSEA-3と二重陽性となる細胞を単離し、細胞塊を形成するか検討した。その結果、Cripto-1遺伝子がSSEA-3と二重陽性を示すことが明らかとなった。また、これらのCripto-1陽性細胞のうち95%がSSEA-3陽性Muse細胞であることも確認された。これらのCripto-1/SSEA-3二重陽性細胞をFACSにより単離後、single suspension cultureを行ったところ、SSEA-3単独で単離した細胞よりも細胞塊の形成率が上昇し、より大きな細胞塊を形成することが確認された。これらのことから、Cripto-1はよりグレードの高いMuse細胞を単離するためのマーカーとなり得る可能性が示唆された。FACS解析の結果から、Cripto-1遺伝子がよりグレードの高いMuse細胞を単離するためのマーカーの候補となり得ることが示唆された。Cripto-1遺伝子のpromoterの制御によりEGFPを発現するトランスジェニックマウスを作製するため、ターゲティングベクターの作製を行った。得られたターゲティングベクターを採卵した前核期受精卵へインジェクトし、レシピエントマウスへ移植した。移植から19日後にレシピエントマウスの分娩を確認し、分晩していないマウスに関しては帝王切開にて胎仔を取り出し里親に哺育させた。 これらの得られたトランスジェニックマウスを使用することで、来年度以降はMuse細胞の発生学的な起源や生体内におけるMuse細胞の局在を顕在化することができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ヒト生体由来の多能性幹細胞であるMuse細胞の新たなマーカーとなる遺伝子の同定およびその遺伝子についてトランスジェニックマウスの作製を行った。まず、ヒト間葉系細胞を用いて、様々な表面抗原においてFACS解析を行うとともにMuse細胞のマーカーであるSSEA-3と二重陽性となる抗原を探索した。その結果、多能性幹細胞の未分化性の維持や自己複製能に関わる分子であるCripto-1が同定された。SSEA-3とCripto-1二重陽性細胞は、SSEA-3単独で単離したMuse細胞に比べてより大きな細胞塊を形成し、その形成効率が顕著に上昇することから、SSEA-3に代わるマーカーとして有用であると推測された。そこで、Cripto-1遺伝子のトランスジェニックマウスを作製するために、ターゲティングベクターの構築を行った。Cripto-1遺伝子の含まれたBAC cloneに、EGFP遺伝子を相同組換えによって挿入した。相同組み換えはなかなかうまくいかなかったが、一つ一つ問題を解決し、最終的にはクリアーすることができた。出来上がった組換え体は、サザンハイブリダイゼーションやマウスES細胞への遺伝子導入により、トランスジェニックマウス作製に使用できることが確認された。最終的にはこの組換え体を受精卵にインジェクションし、トランスジェニックマウスの作製を行った。現在はF1マウスの作製を行っている。 当初の計画では、今年度はトランスジェニックマウスの作製までを目標としていたため、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、まず成体マウス間葉系組織から間葉系細胞を樹立し、その細胞集団の中に存在するGFP陽性細胞をFACSにより単離した後、これらの細胞がヒトMuse細胞と同様に、一細胞から細胞塊を形成するのか、また、三胚葉性の細胞へ分化するかを検討する。またこれら間葉系組織由来のGFP陽性細胞について、遺伝子発現プロファイルを行うことで、これらの細胞がマウスのES細胞やエピブラストステムセルなど、既存の多能性幹細胞と比較を行う。それと同時に、マウスMuse細胞の解析を行っていく。このGFP陽性細胞は単一の細胞集団であると考えられるが、そうでない可能性も考えられるため、single cell real time PCRによって一細胞からの遺伝子発現解析を行い、詳細な検討を行う予定である。 次に、Muse細胞の発生学的な起源の解析として、得られたトランスジェニックマウス同士を交配し、受精卵を採取することでGFP陽性細胞の局在を確認する。その後、各発生段階におけるGFP陽性細胞の局在を解析していくことでどのような発生学的機序を辿るのか、詳細な解析を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Journal Article] Autologous mesenchymal stem cell-derived dopaminergic neurons function in parkinsonian macaques.2013
Author(s)
Hayashi T, Wakao S, Kitada M, Ose T, Watabe H, Kuroda Y, Mitsunaga K, Matsuse D, Shigemoto T, Ito A, Ikeda H, Fukuyama H, Onoe H, Tabata Y, Dezawa M
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Journal Title
The Journal of Clinical Investigation
Volume: 123
Pages: 272-284
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Transplantation of bone marrow stromal cells-derived neural precursor cells ameliorates deficits in a rat model of complete spinal cord transection.2012
Author(s)
Aizawa-Kohama M, Endo T, Kitada M, Wakao S, Sumiyoshi A, Matsuse D, Kuroda Y, Morita T, Riera JJ, Kawashima R, Tominaga T, Dezawa M
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Journal Title
Cell Transplantation
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed
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