2012 Fiscal Year Research-status Report
神経突起の分岐を制御する新規因子のマウスを用いた遺伝学的解析
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24790192
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
犬束 歩 名古屋大学, 環境医学研究所, 研究員 (30584776)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経突起 / キナーゼ / 細胞骨格 |
Research Abstract |
本研究では神経突起の分岐形態を制御する新規因子として我々が同定したキナーゼであるBrancKの生理的機能を、主にノックアウトマウスを用いて解析している。BrancKは神経系全体に濃縮して発現がみられ、培養神経細胞においてBrancKの強制発現もしくはshRNAによる発現抑制を行うと神経突起の分岐形態が増加・減少する。それと対応してBrancKノックアウトマウスでは腹部の末梢神経や海馬錐体細胞の神経突起に分岐数減少等の異常が生じることをこれまで明らかにしてきた。平成24年度は、発生過程における神経突起形態の異常が細胞移動に影響をもたらす可能性を考え、各種神経細胞のマーカーを用いてBrancKノックアウトマウスの大脳皮質層構造について検討を行ったが、大きな変化は観察されなかった。一方、ポジティブな結果としては、BrancKが神経突起形態を制御する分子メカニズムを同定するために免疫沈降法などのスクリーニングを行い、物理的結合因子を同定した。さらに、その結合因子に関する遺伝子欠損マウスとBrancKノックアウトマウスとを掛け合せると、その子どもが胎性致死となることを見いだした。この結果は遺伝学的な相互作用が存在するということを示していると思われるが、現在gene dosageの変化に伴う出生率の違いやその脳組織における解剖学的差異について解析を進行中である。また、BrancKおよび結合因子とが係わるシグナル伝達において、その上下関係に関する生化学的な解析を行った。これについては結論が出たので、その詳細について個体を用いた証明を現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では主にノックアウトマウスの解析を通じて、神経突起形態の分岐を制御する新規因子として我々が同定したキナーゼであるBrancKの生理的機能を明らかにすることを目的としている。平成24年度はその結合因子を同定するなどin vitroの系において分子メカニズムの解明が進んだが、行動解析などin vivoにおける機能解析には若干の遅れがみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記両分子の上下関係について個体を用いた解析を行うため、まずはリン酸化エピトープに対する抗体を作製する。 一方の遺伝子欠損マウスにおいて相手方のリン酸化エピトープが減少するかどうかによってその結論を導き出す予定であるが、表現型が弱いため、分子レベルでの異常までははっきりと判明しないと いう可能性や、逆にリン酸化自体の変化はかなり大きなものなのに脳組織の形成にはそれほど影響を及ぼしていないといった可能性も考えられる。また、脳組織の解析に於いても、各種マーカー抗体を用い分子レベルでの変化を追うことによって、異常を呈するメカニズムの解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脳組織解析のためにかなりの種類の抗体を用意する必要があり、45万円程度の購入を予定している。また、リン酸化抗体の作製を委託しており、それに30万円程度、マウスの掛け合わせもかなりの数になってきているので、飼育費用に30万円程度の支出を予定している。遺伝子改変マウスのジェノタイピング分を含めて遺伝子工学試薬の購入に25万円程度、初代神経培養の培地やディッシュの購入に20万円程度使用予定である。
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