2012 Fiscal Year Research-status Report
下垂体前葉細胞の機能調節に関わる濾胞星状細胞が産生する新規分泌因子の機能解析
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24790199
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
藤原 研 自治医科大学, 医学部, 講師 (00382945)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 下垂体 / 細胞間相互作用 / ホルモン / パラクライン |
Research Abstract |
下垂体前葉の5種類の内分泌細胞は特異的な親和性で接着し、加えて非ホルモン産生性の濾胞星状細胞がそれらを取り囲む。濾胞星状細胞は前葉内における局所環境の調節のために特に重要であると考えられている。申請者は近年開発された濾胞星状細胞で特異的にGFPを産生するトランスジェニックラットを使用し、濾胞星状細胞の産生する物質の全容を明らかにすることに成功した。この成果を基に、本研究は濾胞星状細胞で特異的に産生される分泌因子を確定し、その機能を明らかにすることで、下垂体前葉内での新たな細胞機能調節機構を解明することが目的である。計画している具体的な研究項目は、①濾胞星状細胞特異的な分泌性タンパク質の組織学的解析、②生理条件の変化での動態解析、③内分泌細胞への作用の解析、の3つである。 本年度は遺伝子発現の解析から特定した濾胞星状細胞特異的に高発現する分泌因子をmRNA、タンパク質レベルで可視化し、形態学的に検証した。そこで、分泌性タンパク質遺伝子のmRNAを可視化するin situ hybridization(ISH)法を確立した。まず、目的遺伝子断片をPCRによりクローニングし、ハプテン(Dig, FITC, biotin)を含むcRNAプローブをin vitro transcriptionにより合成した。凍結切片を用いて作成したプローブをハイブリダイズし、酵素-基質発色系や蛍光ラベル系を用いてシグナルを検出した。ISHにより濾胞星状細胞でその発現が確かめられた遺伝子について、引き続いてタンパク質レベルでの同定を免疫組織化学、Western Blotting法により行った。市販の抗体が手に入らない分子については、抗体作製からはじめた。抗体作製は当初計画したように、時間の短縮と確実性を考慮して過去に良好な結果が得られた実績のある国内業者に依頼し、抗体を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、当初の研究計画を概ね達成できた。本年度は、機能解析に進むための因子の優先度の慎重に見極めるため、mRNA、タンパク質レベルで可視化し、形態学的に検証することを予定していた。ISHによるmRNAを検出する系が確立でき、候補遺伝子のうち複数の因子において濾胞星状細胞で特異的に発現していることを確かめられた。さらに、そのうちの一つはWestern Blotting法により細胞内および培養上清中に分泌されたタンパク質を同定することに成功した。また、その他の因子は抗体作成の途中経過にある。しかし、免疫組織化学や免疫電顕法による細胞同定には至らなかった。このことについては、研究計画の段階でタンパク質の解析には抗体の作製に時間を要することから次年度に繰り越すことも想定していたので研究計画の大きな遅れとはなっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って、①濾胞星状細胞特異的に発現する分泌性タンパク質の同定(平成24年度からの継続)、②分泌性タンパク質の発現変動の解析、③ホルモン産生細胞への作用の解析、についておこなう。 分泌性タンパク質の発現変動の解析については、発生過程、雌雄差、生理条件の変化(栄養状態の変化、性周期、ストレス等)や、下垂体前葉ホルモンの標的器官を除去することで特定種の内分泌細胞の機能亢進状態での候補因子の発現変動を解析する。 ホルモン産生細胞への作用の解析については、候補因子のうち組織学的解析、発現変動解析から優先度の高い順で機能解析を行う。通常ラットおよびセルソーティングにより得られたホルモン産生細胞の初代培養系を用いて、分泌因子のホルモン遺伝子発現、産生、分泌、細胞増殖、細胞運動などへの作用を明らかにする。このうち機能の重要性、臨床医学への応用性からホルモン遺伝子発現やホルモン分泌の変化を起こせるか否を最優先で検証したい。そこで、ホルモン遺伝子発現の変動をリアルタイムPCR法により、ホルモン産生、分泌はWestern blotting法やEIA法, ELISA法を用いて定量解析する。また、分泌因子の添加による遺伝子発現をDNAマイクロアレイ解析により明らかにすることも計画する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費176万円のうち消耗品に101万円、旅費に10万円、その他に65万円を計画している。 消耗品の内訳としては、実験動物及び飼料、免疫組織化学関連試薬、ISH関連試薬、PCR関連試薬、細胞培養関連試薬、ホルモン測定試薬、器具の購入を計画している。 旅費は、成果を発表する目的で学術集会に参加するための交通費及び宿泊費に充てる。 その他は、学会誌投稿費に10万円、学会参加費に5万円、受託解析費として50万円を国内専門業者に依頼する抗体作製費、遺伝子発現解析費に充てる。
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