2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパラン硫酸鎖を介した分泌性成長因子の活性制御機構の解析
Project/Area Number |
24790205
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
下川 佳世 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, その他 (40581319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | マウス / 原条形成 / FGFシグナル / ヘパラン硫酸鎖 / Ext2 / 上皮間葉転換 / 分泌性成長因子 / 胚葉形成 |
Research Abstract |
ヘパラン硫酸鎖は、胚体外外胚葉においてFGFリガンドの局所的な分布に働くことでFGFシグナルの活性化に働いていることを明らかにしてきた。しかし、原条形成時期においてヘパラン硫酸鎖がどのような機能を担っているか不明である。申請者は、ヘパラン硫酸鎖欠損を示すExt2ホモ変異胚の表現型を解析することで、以下の知見を得た。1)原条形成期以降、ヘパラン硫酸鎖欠損胚でどのような細胞運命に異常が生じているか検討したところ、後方の神経上皮や体軸中胚葉のマーカーの発現が誘導されていないことが分かった。一方、胚性幹細胞、中内胚葉、前方神経上皮などの分子マーカーはヘパラン硫酸鎖欠損胚でも発現していた。2)ヘパラン硫酸鎖欠損胚では、形態的に中胚葉細胞の脱上皮化が正常に進行しなかったため、上皮間葉転換に関わるE-やN-cadherinなどの発現を解析したところ、N-カドヘリンは中胚葉特異的に誘導されてくるが、E-カドヘリンの発現は、上皮間葉転換(中胚葉形成)後も発現し続けてしまい低下しなかった。3) ヘパラン硫酸鎖がどのような分泌性成長因子の活性化に関わるか検討した。野生型胚では、FGFシグナルの活性化マーカーであるリン酸化ERKの発現が移動中の中胚葉細胞で認められたが、ヘパラン硫酸鎖欠損胚ではその発現が失われていた。一方、BMPシグナルやTGF-bシグナル経路の活性化マーカーであるリン酸化Smad1/5/8やリン酸化Smad2/3の発現は低下していなかった。以上の解析結果に加え、FGFシグナルが後方領域の形成・中胚葉の移動に必須である点やヘパラン硫酸鎖欠損胚の原条形成時期の表現型がFgf8やFgfr1遺伝子の変異胚の表現型とよく合致する点などを考慮すると、ヘパラン硫酸鎖は、原条形成時期においても主にFGFシグナル経路の活性化に必須な機能を果たしていることを強く支持する。
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