2012 Fiscal Year Research-status Report
カチオンポンプによる核貪食性細胞死の誘導メカニズムと病態生理機能の解明
Project/Area Number |
24790209
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤井 拓人 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (50567980)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 生理学 / 細胞 / 細胞死 / P型ATPase / オートファジー / ヌクレオファジー |
Research Abstract |
ATP13A4は、P型カチオンATPaseファミリーに分類されているが、その生理機能については研究が進んでいない。申請者らは、ヒトATP13A4を様々な哺乳類由来細胞株に過剰発現させると、オートファジーの関与する核貪食性細胞死、すなわちヌクレオファジーが誘導されることを示唆する知見を得た。本研究は、ヌクレオファジーにおけるATP13A4の機能およびヌクレオファジーを駆動する分子メカニズムを明らかにすることで、新しい細胞死の仕組みを分子レベルで解明することを目指している。本年度は主に以下の成果を得た。 1、マウスATP13A4をクローニングし、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞およびサル腎臓由来Cos-7細胞に過剰発現させたところ、ヒトATP13A4とは異なり、ヌクレオファジーは誘導されなかった。そこで、ヒトとマウスのATP13A4のアミノ酸配列を比較し、異なる部位の変異体を作製した。各種変異体の機能解析を行ない、ヒトATP13A4のN末領域においてヌクレオファジーに重要な部位が存在することを見出した。 2、ヒトATP13A4のイオン輸送機能がヌクレオファジーの誘導に関与しているのかを検討する為、高エネルギーリン酸化中間体の形成に重要なアスパラギン酸残基をグルタミン酸に変異させたD486E変異体を作製した。 3、ヒトATP13A4を過剰発現させることで変動する遺伝子群をマイクロアレイにより網羅的に解析した。その結果、2倍以上発現上昇する遺伝子として約70種類、減少する遺伝子として約120種類を見出した。上昇する遺伝子としては、HSP70等の分子シャペロンが顕著であり、オートファジー関連分子ATG4などの上昇も見られた。他方、減少する遺伝子としては、クロモソームやポリメラーゼ等の核酸機能に重要な遺伝子群が顕著であり、水チャネルや亜鉛輸送体(SLC30)も減少していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトATP13A4は、P型カチオンATPaseファミリーに分類されているが、その機能については全く報告されていない。申請者らは、ヒトATP13A4が核貪食生細胞死(ヌクレオファジー)を誘導することを見出したことから、ヒトATP13A4によるヌクレオファジー誘導メカニズムを明らかにすべく研究を行なっている。 本年度はまず、ヒトATP13A4ではヌクレオファジーが誘導されるが、マウスATP13A4では全く誘導されないという興味深い知見を見出した。そこで、ヒトとマウスのATP13A4のアミノ酸配列の差異に着目した変異体スクリーニング実験を行い、ヌクレオファジーの誘導に重要なヒトATP13A4の部位を特定することが出来た。また、マイクロアレイを用いて、ヒトATP13A4の発現誘導により変異する遺伝子の網羅的解析を行い、ヌクレオファジーに関連していると思われる候補分子を同定した。さらに、イオン輸送機能を阻害する変異体等ヒトATP13A4の機能解析を検討するための変異体を多数作製した。 本年度に行なった研究により、今後ヌクレオファジーにおけるヒトATP13A4の詳細な生理機能の解析、およびヒトATP13A4によるヌクレオファジー誘導の分子メカニズムを明らかにするための研究を円滑に進めることが可能であり、本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は以下のように研究を推進し、ヒトATP13A4の生理機能およびヌクレオファジー誘導の分子メカニズムの解明を目指す。 1、本年度に作製した変異体の機能解析を行ない、ヌクレオファジーにおけるヒトATP13A4のイオン輸送機能の重要性、マウスとは異なりヒトATP13A4が特殊な修飾を受けている可能性を検討し、ヌクレオファジーにおけるATP13A4の生理機能を明らかにする。 2、マイクロアレイ解析により同定したヌクレオファジー関連候補因子の過剰発現細胞およびノックダウン細胞を用いた各種候補の機能解析、またヒトATP13A4との機能連関を調べることで、ヒトATP13A4によるヌクレオファジー誘導の分子メカニズムの解明を目指す。 3、内因性のヒトATP13A4の抗体を用いて、アルツハイマー等の神経変性疾患の病変部位や癌組織におけるATP13A4の発現および局在異常を解析し、ATP13A4の病態との関連性について明らかにする。 4、神経変性モデル細胞および癌細胞を用いて、ヒトATP13A4の病態生理機能について詳細に検討する。 5、ATP13A4は、脳以外では胃酸分泌細胞に高発現していることから、胃酸分泌細胞をモデル細胞として、細胞恒常性維持機構におけるATP13A4の生理機能について明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、139円の残額が生じたが、これは研究計画の変更や進行状況の変化等によるものではなく、139円以下の物品の購入を希望しなかったためである。当該助成金は、平成25年度の助成金と共に消耗品の購入に充てる。
|
Research Products
(15 results)