2012 Fiscal Year Research-status Report
TNF誘導性細胞死における直鎖状ポリユビキチン鎖の役割の解明
Project/Area Number |
24790215
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中原 匡咲 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60542967)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 直鎖状ポリユビキチン鎖 / NF-κB / TNF / 細胞死 |
Research Abstract |
直鎖状ポリユビキチン鎖は免疫系において重要な役割を果たしている転写因子NF-κBの活性化に関与する。直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ複合体はHOIP、HOIL-1L、SHARPINという3つ分子から構成されているが、それぞれの遺伝子のノックアウトマウス(KO)は全く異なる表現型を示す。すなわち、活性中心があるHOIP KOは胎生致死でありSHARPIN KOは重篤な免疫不全を呈するが、HOIL-1L KOに顕著な表現型はない。本研究では、このような表現型の違いが何に起因するのか明らかにすることを目的とし実験を行った。 今年度の研究から、HOIP KOは胎生11日目に死亡すること、またTNFとHOIPのダブルKOは胎生14日目で死亡することがわかった。胎生13日目のTNF/HOIPダブルKOをアポトーシスのマーカーである活性化型caspase3で免疫染色を行ったところ、全身に陽性染色が認められたことからHOIP KOでは何らかの原因によりアポトーシスが誘導されていることが明らかとなった。 同時並行して、アクセサリー分子であるSharpin KOとHOIL-1L KOの表現型が異なる原因を探索した。その結果、それぞれのKO細胞においてNF-κBの活性化は減弱するものの両者で大きな差はないが、TNF刺激依存的な細胞死に対してはSharpin KOはHOIL-1L KOよりも著しく感受性が高いことがわかった。Sharpin KOで細胞死が亢進する理由として、RIP1への結合の有無が関与することを示唆する結果を得ている。すなわち、HOIL-1LはRIP1に結合しないが、SHARPINはRIP1に結合し直鎖状ポリユビキチン鎖を付加することで、RIP1がTNF受容体から乖離しアポトーシス誘導複合体にリクルートされるのを防いでいる可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Sharpin KOとHOIL-1L KOの表現型が異なるメカニズムについては、ほぼ解析が終了しており既に論文投稿準備中であるため、予定より早く遂行されていると考えている。 HOIP KOの解析であるが、こちらはTNF KOとの交配により完全にはレスキューされなかったことからTNF以外の分子の関与を検討するため、他の細胞死誘導因子のノックアウトマウスとのダブルまたはトリプルノックアウトを作成している。こちらはマウスの交配に時間がかかったため今年度は表現型の解析を中心に行った。細胞を用いた分子メカニズムの解析は次年度に詳細に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Sharpin KOとHOIL-1L KOの表現型が異なるメカニズムについての論文をacceptにすることを第一目標とし、研究を遂行する。 HOIP KOの表現型の解析については、現在進行中の他の細胞死誘導因子のノックアウトマウスとのダブルまたはトリプルノックアウトマウスの交配を続行し、それらの産仔の致死性が回復するかを検討する。もし、致死性が回復または遅延するマウスが得られた場合は、それら由来のマウス胎仔線維芽細胞を用いて詳細な分子メカニズムの解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Sharpin KOとHOIL-1L KOの表現型が異なるメカニズムについては、論文投稿後にリバイスで指示された実験分に加え投稿に必要な予算(英文校正費など)およびこの研究成果を発表する為の学会費や旅費を計上する。 HOIP KOの表現型の解析については、マウス飼育のための維持費、実験遂行の為の消耗品(細胞培養用のディッシュやピペット、遠沈管など)や試薬代(細胞培養用の血清や培地、TNF等の細胞刺激因子、抗体、realtime PCR用の試薬代など)を計上する。
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Research Products
(3 results)