2013 Fiscal Year Research-status Report
不整脈発症に重要なベータアドレナリン受容体シグナル経路の解析と新規治療薬の開発
Project/Area Number |
24790219
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
吹田 憲治 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助手 (90569542)
|
Keywords | 不整脈 / カテコラミン / ベータアドレナリン受容体 / アデニル酸シクラーゼ / サイクリックAMP / Epac |
Research Abstract |
これまでの先行研究から、心臓のβアドレナリン受容体(β-AR)シグナルを仲介する心臓型アデニル酸シクラーゼ(Adenylyl cyclase 5: AC5)およびEpac1(Exchange protein directly activated by cAMP 1)が不整脈の発生において重要な役割を果たしている可能性が考えられた。一方、我々は抗ヘルペス薬として知られるビダラビン(商品名アラセナA)を心臓型ACの選択的阻害剤として見出した。β遮断薬は世界最多の疾患である心不全の主要な治療薬である。心不全治療におけるβ遮断薬の有効性は確立されているが、導入時の心機能低下や持続的な肺機能抑制といった副作用のため、肺疾患を持つ患者や高齢者への処方が困難である。この点はβ遮断薬の最大の問題であり、心臓型AC選択的抑制剤はその問題を克服しうる。また、心臓型AC選択的抑制剤は心房細動や心室性不整脈など、β遮断薬の適応対象である他の心疾患にも処方が可能と考えられる。 本年度は、平成24年度から引き続き、ビダラビンの抗不整脈作用をマウスモデルにより解析した。その結果、ビダラビンは心機能の低下を引きおこすことなくカテコラミン誘発性のAFおよび心室性不整脈を抑制することが明らかになった。これらの研究成果を日本生理学会、日本循環器学会の学術集会ならびに文部科学省新学術領域の研究会などにおいて発表した。一方、Epac1遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスよりもAFの持続時間が短縮していることを示し、AFにおけるEpac1の重要性を明らかにした。当該実験データを含む論文を共著者として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビダラビンの抗不整脈作用の解析を中心に進めたが、これまでのところ、おおむね申請書に記載した予測に合致する結果が得られている。 カテコラミン誘導性心室性不整脈のモデルであるCasq2KOマウスを用いてビダラビンの抗不整脈作用を検討した。イソフルラン吸引麻酔下、ISOの腹腔内投与によりCasq2KOマウスに心室性期外収縮(PVC)を誘発し、そのPVC数を計測した。その結果、ビダラビン(15-60 mg/kg)を単回腹腔内投与したCasq2KOマウスではコントロール処理マウスよりもPVCが有意に減少していた。 一方、ビダラビンによる不整脈抑制の分子機構を明らかにすることを目的に、マウスの心筋細胞のカルシウム動態を解析した。イソプロテレノール(ISO)で刺激した心筋細胞では、興奮収縮連関にかかわるCa2+ Amplitudeと同様、催不整脈性の重要な原因と考えられているCa2+ leakおよびSpontaneous Ca2+ releaseの上昇を認めた。ビダラビンはこれらのカルシウム動態のISOによる上昇を有意に抑制したが、ベースラインにはほとんど影響を与えなかった。本実験では、マウスの心房心筋細胞および心室心筋細胞の両方で同様の結果が得られた。 近年、リアノジン受容体(RyR)の2808番目と2814番目のセリン(S2808およびS2814)の過剰なリン酸化が本受容体の機能に異常をもたらし、不整脈を誘発する可能性が示唆されている。今回、マウスの心房組織から抽出したタンパク質を用いてRyRのリン酸化をウェスタンブロッティングにより調べた。RyRのSer2808およびSer2814のリン酸化はノルエピネフリン刺激により有意に亢進していた。一方、ビダラビン投与したマウスでは、ノルエピネフリンによるSer2808ならびにSer2814のリン酸化レベルの亢進が有意に抑制されていた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成26年度においては、論文投稿による本研究成果の発表を行う。現在は、心臓型アデニル酸シクラーゼの選択的阻害剤ビダラビンによる不整脈治療効果に関する論文作成のまとめの段階である。一方、Epac1KO-Casq2KOマウスはCasq2KOマウスへの6回の戻し交配が終了した。本マウスを用い、カテコラミンにより誘発される心室性不整脈におけるEpac1の役割を調べていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に出席した出張おいて、当初の想定よりも旅費が安価となったため200円の残額が発生した。 平成26年度における学会出張費の一部として使用する。
|
-
[Journal Article] Disruption of Epac1 decreases phosphorylation of phospholamban and protects the heart against stresses2014
Author(s)
Okumura S, Fujita T, Cai W, Jin M, Namekata I, Mototani Y, Jin H, Ohnuki Y, Tsuneoka Y, Kurotani R, Suita K, Kawakami Y, Hamaguchi S, Abe T, Kiyonari H, Tsunematsu T, Bai Y, Suzuki S, Hidaka Y, Umemura M, Ichikawa Y, Yokoyama U, Sato M, Ishikawa F, Izumi-Nakaseko H, Adachi-Akahane S, Tanaka H, Ishikawa Y
-
Journal Title
Journal of Clinical Investigation
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
-
-
-