2012 Fiscal Year Research-status Report
神経ペプチドの調節性分泌経路の素過程におけるRab3/27の機能実体
Project/Area Number |
24790224
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小幡 裕希 東京理科大学, 生命医科学研究所, 助教 (20609408)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | エキソ・エンドサイトーシス / シグナル伝達 / Rab GTPases / FRET / ゴルジ体 / エンドソーム / 有芯小胞 / イメージング |
Research Abstract |
本研究の目的は、神経ペプチドの放出を司る “調節性エキソサイトーシス経路” の始点から終点までの素過程における分子機構の理解である。そのために、この経路で中心的な役割を果たす低分子量GTP結合蛋白質Rab3, Rab27の機能実体の解明を目指し、その活性変化とエフェクターとの相互作用の時空間解析を試みる。平成24年度は、「Rab3とRab27のFRETバイオセンサーの開発」, 「神経ペプチドの有芯小胞へのローディングの分子機構」を計画し、その通りに遂行した。 Rab3, Rab27のバイオセンサーは、Forster resonance energy transfer原理 (FRET原理) に基づいてデザインし、ライブイメージング可能な高性能センサーの構築を目指した。まず、Rab3, Rab27のセンサーの候補を複数構築し、十分にイメージング可能な性能を持つセンサーを絞り込み、仕上げていった。構築したセンサーは、「① Rab分子の活性変化をモニターするのに十分なダイナミックレンジを持ち」, 「② 本来のRab3, Rab27の細胞内局在を反映し」, 「③ 細胞内のRabの活性調節因子に反応する」といったRabのバイオセンサーの条件を満たす。これらセンサーを用いて、Rab3, Rab27の活性の時空間的解析が可能になると考えられる。 次に、Rab3, Rab27のゴルジ体における神経ペプチドの有芯小胞へのローディングの分子機構の解明を試みた。Rab3, Rab27のセンサーは、活性化型のRab3, Rab27が核近傍ゴルジ領域で神経ペプチドであるニューロペプチドYと共局在しする可能性を示した。今後、このRab活性と、ニューロペプチドYの小胞へのローディングのタイミングを明らかにしていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、最初に、Rab3, Rab27の活性をモニターするためのFRETバイオセンサーの構築を計画した。FRET原理に基づいたセンサーデザインをおこない、黄色蛍光蛋白質-ディテクタ-Rab分子-青色蛍光蛋白質から構成される一分子FRETセンサーを複数種類構築した。十分に生細胞観察可能なFRETセンサーの基準として、「① シグナルノイズ比が高いもの」, 「② 活性化に伴うFRET効率上昇が十分に高いもの」, 「③ 細胞内局在が本来のRab3, Rab27と一致するもの」, 「④ 活性化因子, 不活性化因子により正確に活性調節されるもの」を設け、スクリーニングした。その結果、Rab3, Rab27のセンサーともに、①~④ の条件を満たすセンサー候補を複数種類見出し、実際に細胞内でセンサーとして機能するように仕上げた。今後は、作出したセンサーを微調整しながら、Rab3, Rab27の活性の時空間的解析をおこなっていく。 次に、構築したセンサーを用いて、神経ペプチドの有芯小胞への分子機構の解析を試みた。まず、神経ペプチドの動態を観察するために、ニューロペプチドと赤色蛍光蛋白質の融合蛋白質 (NPY-RFP) を構築した。Rab3, Rab27のセンサーは、ラット副腎髄質由来PC12細胞の核近傍ゴルジ領域で、活性化したRab3, Rab27を示し、これは、NPY-RFPと共局在していた。すなわち、Rab3, Rab27は、ゴルジ領域でNPY-RFPの有芯小胞へのローディングにおいて、役割を果たす可能性が示唆された。今後は、Rab3, Rab27の活性とNPYの詳細なダイナミクスを生細胞観察によって捉え、詳細な分子機構の解明に繋げていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、構築したRab3, Rab27のセンサーを用いて、引き続き、「神経ペプチドの有芯小胞への分子機構の解析」, 「有芯小胞のトラフィックの分子機構」, 「開口放出におけるRab3, Rab27の役割」の3課題に取り組んでいくことを計画している。 「有芯小胞のトラフィックの分子機構の解析」では、構築したRab3, Rab27センサーとNPY-RFPを含む有芯小胞がPC12細胞の突起先端に輸送される過程をイメージングする。まず、有芯小胞の移動の方向が変化する時のRab3, Rab27の活性変化を調べ、有芯小胞の動態におけるRab3, Rab27の役割を明らかにしたい。また、近年、小胞の細胞膜方向への輸送を担うRab3結合分子DENNが報告されたことから、DENNとRab3の活性変化のイメージングをおこなうことを計画している。すなわち、DENN-RFPとRab3センサーの共発現系を構築し、両者の局在の一致と、Rab3の活性変化の関係を明らかにし、正確な小胞の輸送機構の分子機構の解明を目指す。 「開口放出におけるRab3, Rab27の役割の解析」では、Rab3, Rab27のセンサーを発現させたPC12細胞を全反射型蛍光顕微鏡 (TIRFM) を用いてイメージングする。細胞膜近傍100 nmを観察できるTIRFM, FRRTイメージング, 発現させたNPY-RFPを組み合わせ、「FRET + Red」のイメージングに挑み、開口放出過程のRab3, Rab27の正確な活性変化を明らかにする。また、Rab3, Rab27のエフェクターとRFP融合蛋白質を組み合わせてイメージングし、開口放出過程の正確な分子機構を明らかにしたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究における FRET イメージングに必要な機器は、多波長の蛍光を測定するためのフィルターチェンジャーと高感度 CCD カメラを全視野型および全反射型照明蛍光顕微鏡に装着したシステムである。申請者の所属研究室では、既にこのシステムが正確に稼動しており、データが十分に蓄積されてきている。また、遺伝子組換え・生化学実験や細胞培養を行う上で必要な施設・設備はすでに揃っている。 平成25年度の予算では、実験を円滑に進めるための器具・試薬・薬品を揃えたいと考えている。そのため、経費の主要用途は、消耗品である。本研究課題では、生細胞と蛍光顕微鏡を組み合わせたタイムラプス観察が中心となり、血清, 培養液, 抗生物質, 成長因子等の試薬, 培養皿, ピペット, フラスコ, プレート等のプラスチック器具が実験遂行上欠かすことができない。その他、プラスミド DNA 構築のための制限酵素類, PCR関連試薬などの分子細胞生物学実験用試薬、フローサイトーメーター, ウエスタンブロッティング, 免疫沈降法などに使用するための抗体, 蛍光試薬, 酵素類などの生化学実験用の試薬が必要となる。また、情報交換や国内外学会で研究成果を公表するために必要な出張経費、研究成果を学術論文として誌上発表するための諸経費として外国語論文校閲費および研究成果投稿料が必要である。これらを本研究費補助金から支出することは、関連法規などに照らして、十分妥当であるものと考えられる。
|