2013 Fiscal Year Research-status Report
In vivo 脳刺激による褐色脂肪細胞の分化誘導
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24790233
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片岡 直也 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 研究員 (20572423)
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Keywords | 褐色脂肪組織 / 光遺伝学的手法 / 交感神経 / brite cell |
Research Abstract |
褐色脂肪組織は、その熱産生機能を通じた積極的なエネルギー消費によって肥満の防止に寄与する。最近、交感神経性の熱産生刺激を長期的に与えることで、白色脂肪組織中における誘導型褐色脂肪細胞(brite cell)の分化誘導を促進できることが示唆され、新たな肥満治療技術の開発につながるものとして注目されている。そこで本研究では、褐色脂肪熱産生の制御に関わる延髄の交感神経プレモーター領域を、光遺伝学的手法を用いて長期的に刺激し、交感神経性熱産生を亢進させることで、brite cellの分化誘導を促進させることを可能にする技術の確立を試みた。 光遺伝学的手法を用いて延髄の淡蒼縫線核吻側部(rRPa)を中心とした交感神経プレモーター領域を刺激するため、特定波長の光を受けて神経細胞を活性化するカチオンチャネルChIEFを発現させるアデノ随伴ウイルスベクターの構築を行った。これまで光遺伝学の実験にはチャネルロドプシン-2(ChR2)が主に用いられてきたが、本研究計画ではbrite cellの分化誘導のために脳内を長期的に光刺激する必要があることから、脳組織への傷害が少なく、比較的弱い光出力でも神経細胞を活性化できるChIEFを発現させるウイルスベクターを作製した。研究代表者は、このウイルスをラットのrRPaを中心としたプレモーター領域に注入し、感染したニューロン群がChIEFを発現することを組織学的に確認した。そこで、ChIEFを発現させた領域に麻酔下で光ファイバーを挿入し、in vivo光照射を行ったところ、褐色脂肪組織交感神経の群放電活動の活性化を惹起し、交感神経活性化に伴う褐色脂肪組織温度の上昇・脈拍上昇・血圧上昇なども観察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究計画では、①ワイヤレス光照射装置テレオプトを用いた長期脳内LED照射によるbrite cell分化誘導を検討すること。②分化誘導されたbrite cell の分子生物学的・形態学的解析をおこなうことを予定していた。 ①ワイヤレス光照射装置テレオプトを用いた長期脳内LED照射によるbrite cell分化誘導のin vivo 解析 申請者はこれまでに、脳組織への傷害が少ない光照射を行うため、比較的弱い光でも神経細胞を活性化できるChIEFを発現させるために必要なウイルスを作製済みであり、本ウイルスをラットのrRPaへ注入し、多数のニューロンにChIEFを発現させることに成功している。こうしたChIEF発現ニューロンに対し、麻酔下で光照射実験を行った結果、長期的な脳内光照射が可能な程度の弱い光(5-8 mW)で褐色脂肪の交感神経活動を活性化することに成功した(論文投稿中)。しかしながら、自由行動下のラットで長期光照射を行うために業者と開発を進めていたワイヤレス光照射装置では活性化に必要な強度の光を得ることが出来なかった。そのため計画を変更し、有線での光刺激実験を行うこととしたことから計画に遅れが生じた。現在、rRPaへChIEFを発現させたラット脳内へ有線にて光ファイバーを挿入し、効率的に褐色脂肪の交感神経を活性化することが出来る光照射条件を検討中である。 ②分化誘導されたbrite cellの分子生物学的・形態学的解析 ワイヤレス光照射装置ではChIEFが発現した神経細胞群を活性化させるのに十分な強さの光が得られていないことから、長期光照射に伴うbrite cellの詳細な解析には遅れが生じている。現在、有線での長期間の光照射に伴う交感神経出力の亢進によって白色脂肪細胞中でのbrite cellの分化誘導が惹起されるか否かの確認を進めており、今後、褐色脂肪関連遺伝子の遺伝子発現解析や抗UCP1抗体を用いた免疫組織化学実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は覚醒条件下での長期光照射によるbrite cellの分化誘導実験を継続して行う。当初はワイヤレスLED照射装置を用いた長期光刺激実験を予定していが、十分な光出力を長時間持続することが困難であったため、今後の交感神経活性化実験は有線での光照射に変更して行う。 ①長期脳内光照射によるbrite cell分化誘導のin vivo解析 本研究計画では、比較的弱い光でも十分に機能するChIEFを用いることでテレオプトを用いた長期LED照射が可能であると考えていた。しかしながら、テレオプトはワイヤレスユニットであることから電池容量に限りがあり、強い光(5-8 mW)を長時間照射することが困難であった。このことから、本研究計画では予定を変更し、有線での光刺激実験に変更した。ウイルスを用いてラットのrRPaのニューロンにChIEFを発現させた上で、脳内へ埋め込んだガイドカニューラを通じて光ファイバーをrRPaへ挿入し、光照射を行う。さらに、光照射に伴う交感神経の活性化が褐色脂肪組織の熱産生を惹起するか確認するため、腹腔内と褐色脂肪組織内へ温度測定用のテレメトリー発信器を埋め込み、深部体温と褐色脂肪組織温度を計時的に同時記録する。 ②分化誘導されたbrite cellの分子生物学的・形態学的解析 光照射によって皮下白色脂肪組織中でのbrite cellの分化誘導が惹起されたか否かを確認するために、brite cellおよび褐色脂肪細胞が発現する分子マーカーであるUCP1や、褐色脂肪細胞分化に重要な役割を果たすPGC-1alpha, PPARgammaなどの発現量を、定量的PCR法により確認する。さらに、抗UCP1抗体を用いた白色脂肪組織の免疫組織染色を行うことで、brite cellが肥大化、もしくは増産されているかを組織化学的に定量する。そして、これらの解析から得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の予定では、光遺伝学的手法を用いて、褐色脂肪熱産生の制御にかかわる延髄の交感神経プレモーターニューロンを刺激し、交感神経出力を亢進させることでbrite cell の分化誘導効率よく促進させる技術を確立し、北米神経科学会にて発表することになっていたが、上述の通り、ワイヤレス光照射装置では十分な光出力を得ることが出来なかった。そのため、計画を変更し、有線での光刺激実験を行うこととしたことから進捗に遅れが生じ、未使用額が生じた。 次年度は、これまでに行った、麻酔下での有線の光刺激による褐色脂肪熱産生活性化についての技術確立とその実験から得られた新たな知見を国際学会で発表するため、平成26年4月に米国で行われる米国生理学会の年会(Experimental Biology 2014)へ参加し、未使用額のほとんどはこの旅費へ振り替える。また、残額は、現在進行中の実験に必要なウイルスベクター作製に要する消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(6 results)